余命半年
いい四字熟語ではないのは確かだ。
3日前、仕事が終わってスマホを見ると家族ラインが来ていた。
「医者にあと半年って言われた」
親父からだ。
あまりに急すぎて思考が一瞬止まった。
がんが見つかって1年半。確かにここから長生きするのは難しそうではあったが、半年という期間は私の想像よりはるかに短かった。
私は父が死ぬまでにやりたいことが二つあった。
①父の大好きなバイクでツーリング
②彼女と結婚
あと半年だ。
バイクの免許を取る時間は?
結構指輪は?
彼女の気持ちは?
何も用意してない。頭でふわっと考えていたことが、どんどん現実味を帯びてくる。
とりあえず、仕事を辞めたら実家に帰る。
あの日からいなくなってしまうのが不安でそわそわして心が落ち着かない。
初めての気持ちだ。
それだけ父の存在は大きかったのだと気づいた。
転職、結婚、親孝行。同時進行の春。
不安だ。本当にこわい。
でも、全部誰に支持されたわけでもない自分の意思だ。
絶対全部やり遂げてやる。
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