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今日から昨日

今日会う人、すれ違う人は、昨日に消えていく。
未来に消えていく人が、いるんです。

記憶に残らない人がそうだとしたら。
これから先のことだから、
さよならを言う必要がない人。

2004年当時
交通事故で、運ばれた、鈴木さん。
臓腑の破裂による、おびただしい吐血。
医師や看護師による懸命な処置。

そして、
日をまたぎ、静寂に包まれる。

翌朝、
空いているベッドには、点滴が置き去りに…

私は、退院した佐藤さんの記録に目を通す。


少し黄ばんだそれは、
2004年5月の患者のデータ。

倉庫にしまい忘れたのだろうか。
鈴木亜紀と書かれる記録に記憶はない。

今は2024年なのに。

私は、ある時から、記憶を失ったまま。
人は私を鈴木と呼ぶ。
20年間ずっと鈴木を名乗る。

どこで生まれたか、どこで暮らしていたのか、
知ることが出来なない。

昨日の記憶もなくなる。





#ホラー小説部門

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