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マニュアルダンス

 仕事でマニュアル車を運転する。今の会社に入るために限定解除したので、マニュアル歴1年になる。

 教習所で運転を始めたときは、手と足をどう使えばいいのか訳が分からなかった。半クラ?全然場所がわからない。エンストの連続。限定解除は4時間の講習しかないので結構シビアである。公道走行はない。

 何とか運転できるようになった4時間目。女性教官がこう教えてくれた。
 「マニュアルの運転はダンスみたいなものよ。考えるんじゃなくて、手足が勝手に動いてくれるの。」
 確かに、一挙手一投足をいちいち確認しながら運転していた。考えすぎだったんだ。

 卒検は一発合格。
 「カチャッ、カチャッ、カチャッ。」
 リズミカルに音を奏でながら踊ってみた結果だ。やればできるじゃん、俺。就職を控え、不安だった自分に自信がついた。

 初めての公道。先輩が同乗してくれたが、かなり緊張した。もちろんエンストの連続。後続車には申し訳ない気持ちでいっぱい。落ち着け、落ち着け。リズムに乗ってけよ、俺。

 今となってはマニュアル運転は息をするようなものだ。オートマティックにダンスを踊る。自動車に飽き足りず、バイクでのダンスにも手を出した。

 「ガコン、ガコン」
 体に響くギアチェンジが心地いい。今日も小気味よくダンスを踊る。


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