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低山逍遥スケッチ【中編】

※ 【前編】からの続きです。


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 「なぜ山に登るのか」という問いに対して「そこに山があるから」と答えたマロリーの言葉は、実はエベレスト初登頂への野心以外には何の内容もないように思う。

『断崖に立つマロリー』
ペン、ダーマトグラフ(F0)
※ 記録写真をもとに描写


 人が山に向かう理由は百人百様だ。
  景観や自然の素晴らしさ、健康増進、克己心、冒険心、信仰心といった前向きなものから、人間嫌い、現実逃避、失踪願望といった後ろ向きなものまで。

 しかし、それらすべてを受け入れ、包みこんでくれるのが山の懐の深さ、広さ、豊かさというものだ。 

『晴れの山』
ペン、水彩(F0)


🎄🎄
 山は、一歩足を踏み入れればそこは非日常・神秘・おその気配が漂い、それ故にある種の神聖さを覚える世界である。

神奈備かんなびの里』
ペンと色鉛筆(F3)

 3000m級の高山であろうと100〜200m程度の里山であろうと、ひとたび山に足を踏み入れた瞬間にその気配は漂い始める。
 そして、山で過ごしている間、僕たちは誰に強要されることなく《非日常》の神聖空間の住人となる。


🎄🎄🎄
 山で出会う人たちはみんな優しく穏やかだ。そして明るく爽やかで親切な人が多い。
 だから「山に登る人に悪人はいない」などとよく言われる。

 だが、そんなはずはない。
 山にも、たっぷりと世間の垢にまみれた人間たちがやって来るのだ。

『風に立つライオン』(リバイバル)
ペン、パステル、水彩(F8号水彩紙)

 しかし、人はひとたび厳粛な自然の美しさの中に佇む時、本当に大切なものは何だったかを思い出し、余計なものは捨て去るものだ。
 そして、同じ空間の中で同じ状況を共有する者たちと一期一会の交わりを温め合う。

「人は山で自ずと浄化される」と表現されるべきだろう。

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 今日は朝から抜けるような青空が眩しい絶好の山日和に恵まれた。
 明るい「ハレ◆◆」の山に出会うために、僕は宮島の弥山に向かった。

【後編に続く】…と言いたいけど、【後編】なんて読みたい人がいるかなぁ…
 
 どうすっかなぁ・・・