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低山逍遥スケッチ【前編】

 まぁ、色々と盛りこんでますが、メインはイラスト&エッセイですから、そこんとこヨロシク👍


 先日、宮島の弥山を登りながら、つらつらと考えた。
(ん? 漱石の草枕の書き出しか?)

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 登山を趣味とする者は、よほどのことでない限り他人の前で「私の趣味は登山です」などと広言することはない。
 共通の趣味を持つ者が少ないマイナーな分野であり、本質的にマイナーたらざるを得ない要素が強いことを知っているからだ。

『逍遥』(リバイバルスケッチ)

 いくら登山を「山歩き♪」などという気楽そうなイメージで装ってみても、やはり一定程度の体力、技術、装備、読図力、気象知識、そしてある種の精神力(強靭さ、粘り強さ)がなければ「死」に直結する危険を伴う行為であることに変わりはない。

『奥穂高登攀』(リバイバルスケッチ)

 山での一歩一歩が常に「死」と隣り合わせであることを意識せずして山に入る者は、それだけですでに「登山不適格者」である。   


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 しかも、多少とも名だたる山に遠征しようと思えば装備費、交通費、宿泊費等々、それ相応の時間お金もかかる。
 山登りといえどもタダ◆◆ではないのだ。

 だから、僕はいくら親しい間柄であっても気安く他人を山には誘うことはない(家族ならなおさらだ)。
 その結果として登山が単独行になりがちな所以である(ちなみに僕の山行の9割方は単独行だ)。

『無題』 ダーマトグラフ


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 たまたま10代後半から20代の10年間を関東で過ごし、しばしば甲信越地方の山に触れる機会が多かったことが山に魅入られるきっかけとなった。

『槍ヶ岳遠望』

 しかし、その後に戻った故郷(広島)は、日本アルプスや富士山のような3000m級の本格的な山岳地帯とは無縁の土地柄である。
 登山やハイキングを愛好する人口比率は、東日本に比べれば格段に低い(僕の実感からいえば限りなくゼロに近い)。
 なので地元で同好の士を募る気にもならない。

『山を歩けば』 パステル(F3)

 にもかかわらず、この40年間、一度も山から離れようと思ったことはない。
 元来、何事も長続きせず飽きっぽい性質たちでありながら、これほど長く一つのことを続けたのは読書◆◆ぐらいのものだから自分でも不思議である。

 そこで敢えて今一度「人はなぜ山に登るのか」という問いに自分なりに答えてみたい。

      【 中編に続く 】