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低山逍遥スケッチ【後編】                              宮島弥山を登る

【前編】・【中編】からの続き。
これでおしまい。


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 何度訪れても、フェリーの甲板からキラキラ輝く波の上に浮かぶ朱色の鳥居が見えてくると晴れやかな気持ちになる。

6月5日の宮島

 宮島弥山みせんは標高530mそこそこの低山なので、登山対象として注目されるような山ではない。

 だが、生い繁る原生林に覆われた森は広大で奥深く、沿岸部には縄文期からの遺跡、中腹から頂上にかけては古墳時代からの祭祀の痕跡を示す多数の巨岩群(磐座いわくら)が点在している。

 平清盛が厳島神社を建立するよりも遥かいにしえから《神の鎮座する島》であり、弥山は神奈備かんなびの山であったのだ。

 低山や里山の魅力というのは、このように歴史や人々の暮らしと結びついているところにある。

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 去年の記事ではバリエーションルートを紹介したが、今回は真言宗の古刹・大聖院(西暦806年、空海によって開基)から登る一般コースを辿ることにする。

 とはいえ、登山ガイドをするつもりはないので、拙いイラストと映像で雰囲気を感じてもらえれば十分だ。


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 白糸川の清流に沿って静かな登山道に入る。

『清流沿いの道』
ペン、ダーマトグラフ、水彩(F0)

 ただし、ここからは罰ゲームのような石段の登りが延々と1時間半ほど続く。
 登山道の荒廃を防ぎ、登山者を安全に導くための配慮だが、実はこういう道が最も辛い💦

『静謐のきざはし
ペン、ダーマトグラフ、水彩(F1)


 ようやく石段を登り終えたところが山頂までの里程24丁のうち18丁目(つまり八合目)。
 ここに仁王が立ちはだかり、下界から上がって来る邪鬼は追い払われるのだ(えっ?  俺?)

『仁王門』
ペン、水彩(F2)


 そして、ここからさらに30分、最後の試練となる急登を登り詰める。

 頂上直下の巨岩(磐座いわくら)を潜り抜けてようやく山頂に到達する。

『天の磐座』
ペン、ダーマト、水彩(F3)

 古代には、この磐座で荘厳かつ神秘的な神事が執り行われたはずだ。
 当時の祭祀の様子に想いを馳せつつ、神聖なる山の《気》に全身を浸す。

山頂の磐座群


 今では山頂展望台はロープウェイでやって来た外国人観光客で賑わっている。


 ここからの展望は拙いスケッチでは手に余るのでYouTube動画にアップした。
 どうぞ《全画面表示》でご覧いただきたい。

※  未編集映像ですが、それでも穏やかな瀬戸内の光景と山上の雰囲気は伝わると思います。

 対岸に見えているのは江田島、似島などの瀬戸の島々、そして広島市内の遠景です。
          
            【了】