マジョリティが現在を作りマイノリティが未来を創る|第8回勉強会【上】
「第8回宗教マイノリティ理解増進勉強会」を都内で5月18日に行いました。家庭連合(旧統一教会)の信徒、主の羊クリスチャン教会の中川晴久牧師、新宗教の信徒の方など、20代から70代までの幅広世代の男女19人の参加を頂きました。
今回は、過去7回行ってきた内容のまとめを私が発表した後、参加者間で意見交換を行いました。
以下は私の発表の要旨です。
マジョリティが現在を作り、マイノリティが未来を創る
「宗教マイノリティ理解増進を目指す会」として、去年10月から勉強会を始めました。若いメンバーの声を反映させたいという思いもあり、最初は家庭連合の大学生グループ(カープ)のメンバーたちに集まってもらいました。そして回を重ねるごとに参加者も広がっていきました。
宗教を巡る問題がここ一年半以上にわたって注目されてきた中で、宗教を信じている人は日本社会ではマイノリティなので、宗教の問題を「マイノリティ問題」としての視点を持つことで、問題解決が広がるのではという思いからこの会を始めました。
最近、「マジョリティが現在を作り、マイノリティが未来を創る」(実業家の諸井貫一の言葉)という言葉を見かけて、「これだな」って感じるところがありました。私たち(主に宗教者)はマイノリティだけど、だからこそ、「より良い未来を創っていく力や可能性がある」と。
マイノリティがマジョリティに変わっていくことは歴史的にも結構あることです。例えば、キリスト教も使徒パウロの時代やイエス様の時代は完全なマイノリティだったけれども、400年経ったら逆転してしまったというのがありました。
この会から、宗教にまつわる問題をはじめ、いろんな問題が解決されていく発信をして、より良い未来を創っていくことができればと思っています。
今まで7回行ってきた勉強会の内容をまとめて論文を作る予定ですが、その要旨を以下のようにまとめてみました。
宗教を巡る問題の現状と解決に向けて
はじめに
「信教の自由」は、「人権宣言の中核をなす最も重要な人権」であり、基本的人権の要である
日本では、一つの宗教に自覚的に信仰をもち、宗教に固有の規範や信条をもって生活を送っている人々が国民全体に対してかなり少数派(マイノリティ)である
それゆえ、日本において「信教の自由」を具体的に実現しようとするならば、宗教者の人権を「マイノリティの人権」問題としても捉える必要がある。
このような観点から「日本の宗教を巡る問題」について、「宗教マイノリティ」という視点をもって考察していく
宗教マイノリティについて
日本において「自覚的な信仰をもつ者」は少数派であることから「宗教マイノリティ」といえる
外国人の「宗教マイノリティ」に対しては、「宗教的配慮を要する外国人の受入環境整備等に関する調査」(総務省)が行われなど、事業者や学校などに対して、「宗教的配慮」への取り組みが促されている。
一方で、日本人の宗教的マイノリティへの取り組みはあまり進んでいないのが現状
日本の宗教マイノリティの割合
「信仰に関するアンケート調査」によると、特定の宗教施設に月に1回以上は訪問する割合は7%
この7%の人たちが、特定の宗教に自覚的な信仰を持つ「宗教マイノリティ」に該当する
宗教マイノリティへの取り組みが進まない背景
大学における宗教的マイノリティの環境
特定の宗教を持つ外国人留学生や外国人労働者と関りが多い大学や事業所においては、「宗教マイノリティ」への取り組みがみられる
日本社会では「他の人に迷惑をかけない」という文化が社会通念として広く共有されているので、そういう社会通念を通して歩み寄って理解を深めることで、お互いの宗教や文化を尊重し、お互いの人権を守ることにつながる
宗教マイノリティと職場
特定の宗教・信仰を信じている、信じていると思われている、もしくは信じていない、などの理由で「雇用しないことを決める」「解雇する」「研修を実施することを拒否する」「昇格を行わない」「労働条件を厳しくする」ようなことをするのは違法(直接的差別)
正当化できる場合を除き、全社員に適用されるようなものであっても、特定の宗教・信仰を持つ人が不利になるような選定基準・方針・雇用規則や他の慣習を実施していてはならない(間接的差別)
宗教マイノリティである新宗教
イスラム、ヒンドゥー教、シーク教など世界的にはある程度マジョリティである宗教に対する理解への取り組みは行われている。
一方で、一部の新宗教など、日本のみならず世界的にもマイノリティな宗教に対する理解は進んでいない
宗教とカルト
カルトと宗教の違いは
区別は困難
特定の宗教をカルト視することは葛藤を複雑・深刻化する
違いを理解して尊重することが問題の解決に
宗教二世問題
精神的苦痛②経済的困難③社会的制約がある
宗教的問題を解決したとしても、宗教二世問題は解決されないケースが多い
宗教問題というより家庭問題とか親子問題として扱うべきものが多い
元信者が宗教二世問題を扱う場合、過去の否定となり、不安を増大させる危険性もある
完全に宗教団体を脱会したいとか脱会した、という場合は、親や教会との関係が断たれている場合もあるので、元信者による支援やサポートが大切になる場合もある
他者尊重と自己尊重、対話が大切
同じ行為でも宗教に基づいていなければ虐待ではなく、宗教に基づくと虐待になるのか
必要な支援に「信者以外の周囲の宗教に対する理解」という声も多い
「宗教二世」を扱う報道が、むしろ新しい葛藤を作り出していることもある
過去をどう捉えさせるのかが重要
宗教的な理由で傷を抱えている人には、シェルターとか良き相談相手になってくれる人は必要
二十歳過ぎたら自己責任との考え方もある
過去に葛藤があっても親の愛情を感じられることで解決に向かうことが多い。その上で信仰を選ぶかどうかとかは本人の選択というのがいいのでは
宗教の公益性
洗建氏(宗教学者、駒澤大学名誉教、文化庁宗務課の元専門員)「宗教が有する独自の価値観を提示することが公益性であり、社会から要請される公益に資することは宗教の目的ではない」
会で出た主な意見
宗教の公益性は、宗教がそれぞれ独自のあり方を展開すること
社会のため、世界のためになることをしたいということで、求められることを提供するのも大切だけど、求められていることだけやっていたら、別に私たちじゃなくてもいいといえる
そういう意味で「宗教が有する独自の価値観を提示することが公益性であり、社会から要請される公益に資することは宗教の目的ではない」という説明は納得感がある
私たち(宗教者)ならではの価値を社会に提供することが大切では
「宗教が目指す連帯の力が内向きに偏ると、外部に対しては閉鎖的、敵対的になることもある」という説明もあった。宗教は内向きになりやすい面があるので、信仰が世の中のためとか、社会、世界のためになるものが宗教らしい宗教だと思う
宗教マイノリティ理解促進に必要なこと(会で出た意見)
触れ合う機会が増えることが重要
反対派に反論するような形で主張を続けても、世論の印象が悪くなってしまう
「悪いことをしてない」というだけだと不十分。本当にプラスになるものを提示していけるのかが重要
宗教団体が起こした事件の傷を、宗教団体として、宗教者として、宗教性を持って癒す
イスラムの見られ方は、日本の新宗教の見られ方に結構通じるのでは
イスラムが、そのイメージとかトラウマみたいなのが解決されていく過程や事例が参考になるのでは
宗教は排他的、優位的な傾向がある。そうではない根幹の部分で、手を繋いで外に向かってアピールするという連携が必要では
宗教の悪いイメージは二つある
一つは宗教は人を洗脳するイメージ。宗教によって良い意味で変わるイメージが広まると良い
二つ目は、宗教者と宗教者が共にいると対立を生む。排他的。だから、宗教者と宗教者が一堂に会したとしても対立しないという姿を社会で見せていく
寛容性とか多様性とか認めつつ、人の気持ちも汲み取りながら手を取り合って活動していく
傷を負ってる人に何かしらの形で償うのは一つの区切りとして必要。それをした上で、「これからは本当に社会のために良いものを貢献していきます」と
マジョリティとの不調和が生まれるような所では、自分たちが先駆けて、昇華できる形で解決案を提示していく
※ 次回は参加者間の意見交換をまとめた内容をアップします。