よく知らないバンドのマニアックイベントに参加する
A(仮)というバンドを知り、「このボーカル、前にB(仮)ってバンドにいた人だ。今Aやってるんだ」と、それだけでした。
数年後、居住地の情報誌でAのギタリストが「地元出身の有名人」的なインタビューを受けているのを知り、「Aってこんな田舎で活動してるの?」と興味を持ちました。
Aが活動拠点を東京からC地方(仮)に移し、手作りCDの販売や、C地域の録音スタジオで曲作りをしていることは、ファンの間では周知だったようです。
私は身近に芸能人がいるというミーハー心でAの曲を聴きだしました。
仮称が多くて読みにくいし、書きにくいです。
このA、ボーカルが元いたBに結構な知名度とファンがいるので、現在Aのファンである人々は必然的にBのファンだったと思うのです。
ですがBは解散していて、AのプロフィールページにはBについては一言も書かれていません。
ボーカルや、ひいてはAにとって、Bの存在は禁句なのかな?と思いました。
実際どうかはわかりません。
Aですが、C地方で収録するわりにC内でのライブはほとんど開催していません。
単純にCにまともなライブハウスがないことも要因ですが、地元との癒着があるんだかないんだかよく分からない売り方なのです。
Cはド田舎です。
その牧歌的で豊かな自然を音楽に活かしているということは伝わるのですが。
一番近くで札幌開催、基本的には東名阪ツアーをしています。
C地方に住む人々にとっては、泊りがけでなければライブに行けないため、ちょっと心の距離ができます。
曲いいな、Bも好きだったしライブ行ってみたいな、と思っても、片道最短3時間・費用15000円~(チケ代抜き)というのはハードルが高すぎるのです。
そのため「ライブ行ってみたいなー」と思うだけで日々が過ぎていましたが、ある時C地方で収録スタジオに少人数だけ招待してライブをやりますという企画が持ち上がりました。
費用3万円です。
応募を迷いましたが、集合場所が家から車で10分だったことと、札幌に行くのの2回分と思えばまあ、という気持ちと、所詮当たらないだろうという気持ちで応募し、当選した次第です。
倍率が低かったのか、Cがド田舎だからファンも怖気づいたのか、Aがあまり人気ないのか、よくわかりません。
C地方の主要駅前に集合し、バスに乗り込んでAゆかりの地を回りながらスタジオへ向かう半日ツアーでした。
隣の席の人たちと親睦を深めていると、「東京から来た」「京都から」「福岡から」と様々な地域からファンが集まっていました。
家から10分で来たのは私だけでした。
ギタリストがバス内でガイドをしてくれるのですが、私がボーカル以外のメンバーの名前を覚えたのが前日です。顔に至ってはよく覚えておらず、このガイドの人はメンバーなのかな…?と曖昧な状態。
周りの人の会話から状況を判断していました。
「今年の運全部使っちゃったよー」と嬉々とした車内で、私はやや浮いていました。
目的地へ向かう道中でAの曲が流されるのですが、「わあ、この曲好き!」とざわめく周囲の中でこの曲知らない…となる私。
限定数販売だった(らしい)シングル曲は、知らないのです。知ったかぶってすみません…
Aゆかりの地を巡りワァっとなる車内で、先週ここ来たなぁと思う私。
C地方は観光地が限られているので、Aのインスタなども既視感だらけで、それが良いとも言えるし、ゆかりの地=普段使い とも言えます。
「もうちょっとゆっくり見たかったね」という声の中、来週また来ればいいかと思う私。
メンバーや全国から来たファンと一緒ということに感動はあるのですが、生活圏内というリアリティが勝っていたように思います。
私「私、Cに住んでるんですよ」
参加者「え!」
私「Aのライブ初めてです」
参「え!?」
近所から参加した新参者のわりに、くじ引きで決まったライブの席順はめちゃくちゃ前でした。
少人数とはいえスタジオ内に5列くらい席ができている中で、最前列より前の0.5列目くらい。
ファンを名乗るのもおこがましい私が、遠くから来た古参ファンをおいてこんな席にいて良いのだろうか…?
と思う反面、その程度じゃファンじゃなくない?と言われたら「ファンの定義って何ですか?」と逆ギレしていたと思います。
とにかく私は超ラッキーだったと言うことです。
最前列(のさらに前)で見るライブはとても良かったです。
カラオケで歌ってる友達との距離感より近くで見る演奏は、臨場感が…というよりほぼ臨場していました。
ステージに半身入っちゃってる(物理的に)。
知らない曲もあり「知ってる風にノっておこう」という気遣いはありましたが、その辺は新参ファンに厳しいシステムのバンドが悪いので気にしません。
ただ周囲との熱量は明らかに違ったと思います。
私がただただ自分の強運に喜んで楽しんでいる中、周りには涙する人もいました。
ボーカルへのプレゼントで大荷物になっている人と比べて、私はハンカチくらいしか持ってきていません。
「今日ボーカルの誕生日だよ。だからみんな大荷物なんだよ」とライブの直前に教えてもらい、自分の無知さに笑ってしまいました。
帰り際、個々にメンバーと話せる見送りの時間があり、特にメンバー個人のことを知らないので個人的な質問が浮かばず「Cに住んでます」と自己紹介したら、「え?」というリアクションでした。
思うに、C地方在住者でAを知っている人って100人くらいだと思います。(人口は30万人くらい)
その中でCD買ったりライブに行ったりしてるのは10人くらいでは…
Cでライブを行わないのは、観客を集められないからなのかもしれません。
癒着してるのかしてないのか微妙に思うのはそういうところです。
「こういう環境で音楽作りしてるぜ!」という主張は強いけど、「この地域を活性させるぜ!」という感じではない。
地域に根差すバンドというのはままありますが、Cがもうちょっと豊かにならないかなーと期待している身としてはもどかしいです。
Aの音楽スタジオへ向かう途中からバスのカーテンが閉められ、携帯の電源を切り、スタジオの位置がわからないように工夫されていました。
でも、カーテンの隙間から見える看板などで大体の位置はわかります。
スタジオの外観を見て「これはGoogleマップで特定できるなぁ」と思いました。
押しかけたりしませんが、ここなんだなぁと知ったことで満足してしまいました。
その後発売されたAのライブ映像DVDは買っていないし、東名阪ツアーはどこにも行かないし、私は本当にファンなんだろうか…?と疑わしい日々です。
運を使い果たした!という表現でイベント報告を書いているファンと比べて、私は運を使い果たしたとまでは思わないんだよなぁと、少し寂しいです。