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あくも味のうち


うちの庭には、数種類の果実の木がある。春先から始まる収穫の季節。
 サクランボ、琵琶、ブルーベリー、イチジク、ゆず、レモン、紅八朔にスウィートスプリングという名のみかんたち。
 それらを収穫するが、全部食べ切れるわけではない。
 そこで、私は、ペースト、ジャム、果実酒、コンポートいろんなものに加工する。

 今は、イチジクの季節。
 大量のイチジクを、今日は、ジャムにしよう。

 私は、イチジクを強火で一気に加熱する。
 桜の木べらで、ぐるぐる、ぐるぐる・・・・・おいしくなあれ、おいしくなあれとかき混ぜながら。

 真夜中の調理は、まるで魔女の魔法のスープ工場のよう。
 部屋中がイチジクの甘い香りに包まれて、家が幸せの装いをまとう。

私は、あくをとらない。

以前、精進料理教室に行ったとき、、私は、和尚様に質問をした。
「和尚様、あくはとるのですか?」
「なんで、あくをとるんねんや。あくも味のうちや!」

 その一言が、すとんと私のおなかに落ちた。
 そう、あくも味のうち。全てが入っているから、味に深みが出る。だから、心にしみる美味しさなのだ。

 さあ、今日のジャムはどう使おうか?

 ジノリのベッキオホワイトの青白い皿に、バニラアイスを乗せ、イチジクのジャムをたっぷりかける。
 上からブランデーを少したらせば、素敵なドルチェの出来上がり。

 ワインを飲もうか。シャンパンにしようか。

 美味しいねと一緒に笑ってくれる彼がいれば、最高!

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