オフコース 「We are」その10 私の願い
オフコースのアルバム「We are」B面4曲めは小田さんの「私の願い」である。
シンプルなラブ・バラードである。落ち着いて聴ける。
A面の「あなたより大切なこと」とは真逆の印象。「あなたより大切なこと」はハードなロック調で、その勢いに持っていかれた感じだったが、こちらはじっくりと歌詞の内容も味わいながら鑑賞することができる。
「あなたより大切なこと」は、どうしたんだろうと困惑したが、「私の願い」は落ち着きを取り戻した雰囲気が漂う。それだけに小田さんの声が真っ直ぐに心に響いてくる。
ただ、どちらとも人称の不統一がある。
「あなたより大切なこと」は、初っ端に「君」が使われその後は全て「あなた」。最初の「君」は別に「あなた」でも良いと思うのだが、そのあたりからも混乱している感じがしてならなかった。
「私の願い」は、「僕」が使われ、最後だけ「私」となっている。でも、こちらは不思議と気にならない。ずっと「君」に対して語りかけ、最後に結論的に述べている形をとっているからだろうか。
その、ささやかな「私の願い」とは、
♪いつもそばにいて♪
ということである。
このフレーズで思い出されるのはA面のラストを飾った鈴木さんの「いくつもの星の下で」である。
「いくつもの星の下で」は、最後に
♪そばにいて♪
で終わる。このフレーズに至る過程は「いくつもの星の下で」の場合は、
♪
いつもひとり
くやし涙流してきた男の ことを
あなたに 聞かせたい
僕のすべて教えたい
♪
から、そばにいて、である。
しかし、「私の願い」の場合は
♪あなたが好きだから♪
という理由で、そばにいて、なのである。
この違いが当時の鈴木さんと小田さんの視線の違い、あるいは、心の方向性の違い、というのが現れている気がしてならない。
「私の願い」は、純粋なラブソングとして聴くと、その真っ直ぐな心に胸を打たれるバラードである。
でも、鈴木さんとの関係性を考えると悲しい。鈴木さんとずっと一緒にやっていきたいという小田さんの気持ちが伝わってくる。でも、鈴木さんは別の方向を向いている。
やはり、このときから
We are over
だったのだろうか…
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