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オフコース 「We are」その2「時に愛は」

アルバムはシングルと違って、その制作時のアーティストが主張したいテーマなどがあるでしょうし、曲順なども考え抜かれた配置になっているでしょう。「We are」というアルバムのテーマはそのタイトル通り、「俺たちが存在している。今現在、ここにいる俺たちのサウンドがこれなんだ」ということだと私は思います。

アルバム「We are」のA面1曲めを飾るのは小田作品「時に愛は」です。

レコードの針を落として固唾をのむ私の耳に響いてきたのがエレキギターの荘厳な旋律でした。まさに「We are」という1つのドラマの幕開けに相応しい。そんな強烈な主張を「時に愛は」のイントロは叩きつけてくるかのようです。

歌の内容は、愛の厳しさと強さを歌っています。時に愛は試練を二人に与え崩れそうになるけど、愛によって蘇る二人。

そんな愛する二人の状況を小田さんの力強いボーカルが描写していきます。小田さんの声は確かに高いですが細くないんですよね。芯の太さというか力強さがある声です。そのボーカルに演出を加えているのが鈴木さんと松尾さんのギター。これらを支える清水さんのベースと大間さんのドラム。更にコーラスが彩りをそえていきます。無駄な贅肉を削り落とした試合前のボクサーのような鋭さや小気味の良い緊張感を感じます。初めて聴いたとき完全にノックアウトされました。完成されたオフコースサウンドをいきなり突きつけられた、そんな印象です。

更に深読みすれば、この「時に愛は」は小田さんから鈴木さんへのメッセージなのかもしれません。「今はヤスにとって苦しい時期かもしれない。でも、今までも乗り越えてきたように今度も乗り越えていけるよ」と。

小田さんは最後に静かに歌います。


あなたは僕のことを
信じることに決めて
ただ黙って
なつかしく
僕を見つめている

これは小田さんの願いだったのかもしれません。この後、鈴木さんのギターが慟哭するかのように響いていきます。松尾さんのギターと絡んでいくアウトロは圧巻としか言いようがないですね。

しかし、鈴木さんはオフコースを去ろうとしてゆくのです。この時の鈴木さんの演奏は、もしかしたらオフコースを去ることへの言いようのない感情が込められているのかもしれません。





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