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どうする家康 第15話 そこに愛はあるんか?

某CMのようの思わず「そこに愛はあるんか」と言ってしまいたくなる最近の「どうする家康」である。

裏切られる信長

とにかく登場人物が魅力的ではない。特に織田家の描写が酷い。担当のデレクターなり脚本家なりが織田家に恨みでもあるのではないかと思ってしまうくらである。確かに主人公は徳川家康であるから、その対比として織田信長や織田家を酷く描く視点というのも分かるがそれでもである。

織田信長という人物像は冷酷なイメージがある。しかし、冷酷さだけの人物だったら天下を手中にしかけるまではいかないだろう。ドラマの中でお市は姉川の戦いで負けて帰ってきた浅井長政に「兄は、一度裏切った者を、決して許しませぬ。こうなった上は、覚悟を決めました。兄を、織田信長を、何としても討ち取りなされ!」と言い放ちます。

いやいやいや

信長って結構許しちゃってるんですよね。そもそも、お市のもう一人の兄であり信長の弟の信行は信長に反旗を翻して敗れた後に一度赦されています。信行の下についた柴田勝家なんて織田家の筆頭家老になってますし。こういう事情ってお市はもちろん知っているはずだと思うのですが…。

信長はその後も数々の裏切りにあってますが、逆に言うと、それだけ隙があったというか、一度信用した者を信じてしまうという人の良さがあったように思えてなりません。秀吉にしても成り上がり者ですから、このドラマのように慇懃無礼な人物ではなかったでしょう。このドラマの秀吉なら周りから反感をかいまくって早々に潰されていたでしょうに。

好漢浅井長政

浅井長政にしても信長を裏切った理由が「義」とは…。

いやいやいや

浅井氏自体が下剋上で成り上がった戦国大名でしょうが。浅井長政で三代目ですよね。たった三代。長政も信長と同盟を組むまでは色々と苦労したようです。信長と同盟を組んで浅井氏も飛躍の時を迎えていたはずです。それが「義」を理由に信長を裏切るなんてありえません。

浅井長政が信長を裏切ったのは、やはり「野心」だったと思います。若い長政からすれば信長はヒーローだったでしょう。

足利幕府の名門今川義元を討ち取り一躍時代の寵児となった信長。尾張を統一し美濃を併合し足利幕府を再興した信長。このような信長は長政にとっては憧れの存在であっても不思議ではありません。そんな信長が北陸の朝倉氏を攻めるため北上。出陣のため近江に戻った長政の頭を「今ならやれる」とよぎったのでは。東に目を転じれば領主不在の美濃や尾張。信長を倒せばこれらの領国を手に入れるのは容易い。自分が信長の立場に取って代われる。

「憧れていては乗り越えられない」

どこかで聞いた台詞ですが、若き戦国大名浅井長政に相応しい。

ありえない家康と家臣団

ドラマでは、いわゆる「金ヶ崎の退き口」はナレーションで終わりました。そういう軽い演出をしたからでしょう。長政が「義」を言って家康を誘ったり、その誘いに乗ろうと迷う家康や家臣団が描かれ誠に不思議な集団となってしまう始末。

「金ヶ崎の退き口」は信長をはじめ家康や光秀や秀吉にとっては九死に一生を得る悲惨な退却戦だったはず。そこまで追い詰められた家康が浅井長政の裏切りの誘いにあれだけ迷うでしょうか?家臣たちも悲惨な退却戦など無かったかのような振る舞いには驚くしかなかったです。

信長や家康は一旦京へ逃れますが本国へ帰るまでがこれまた一苦労でした。浅井長政に帰途を塞がれてますからね。信長はこの帰途で狙撃までされています。こういう事情があったからこそ姉川の戦いで家康は自ら先陣を願い出たのでしょう。ドラマでは信長から無理やり先陣を押し付けられていましたが、なんだかなーとしか思えませんでした。

まして信長が家康の陣に鉄砲を撃ち込むなんて最悪の演出でした。これって関ヶ原の戦いで家康が迷っている小早川秀秋の陣へ鉄砲を撃ち込むエピソードの悪用でしょう。このドラマにおいて、もし関ヶ原の時に家康にこの姉川の戦いの時を思い出させて、小早川秀秋に撃ち込む演出をするつもりなら止めていただきたいです。それこそ家康に対する冒涜ですから。小早川秀秋の陣に撃ち込むエピソードは、それこそ天下人家康の凄みを表しているものです。あくまでも家康のオリジナルです。

そこに愛はあるんか

浅井長政が「義」により裏切る→金ヶ崎の退き口の省略→長政の家康への裏切りの誘い→迷う家康と家臣→信長が家康の陣に鉄砲を撃ち込む。

酷い演出です。日本史を馬鹿にするなと言いたい。そこに愛はあるんか? 

安土桃山時代って日本史の中でも華やかな時代の一つだったと思います。その華やかな時代の演出者だったのが信長や秀吉でしょう。だからこそ織田家に人材が集まったと思います。信長様についていけば何か良いことがありそう。当時の若者たちにそういう希望を抱かせるような存在だったのではないでしょうか。家康が独立できたのも信長のおかげでしょうに。

このドラマの信長や秀吉は酷すぎます。演出家や脚本家はもしかしたら歴史があまり好きではないのかなって思えてきます。自分たちの設定した家康を描く為に周りの登場人物を将棋の駒のように動かしているように感じます。現代劇なら良いのでしょうが。

確かにドラマですから史実に基づかない演出も有りです。14回の阿月のエピソードなどはオリジナリティにあふれ良かったです。阿月をナンバで走らせたりしてましたしね。

でも、この15話は最悪でした。歴史を題材とするドラマであるなら要所はしっかりと描いてほしいものです。登場人物も実在した人物なら、血の通った人物像を描いてほしい。変な設定で変な人物像を演出し、その人物に変な言動をさせないでほしいです。時代劇であるならその時代や人物に最低限の敬意は持ってほしいものです。

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