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オフコース&小田和正 「めぐる季節」

前回、オフコースのアルバム「SONG IS LOVE」に収録されている「冬が来るまえに」を鑑賞しました。

「冬が来るまえに」は、彼女とは別の女性が気になってしまった男の視点から描かれた作品であるという解釈をしたわけです。具体的には、男は気になり始めた別の女性のことを隠すために彼女に小さな嘘をつくようになり、その罪悪感に堪えきれず彼女の元を去る決意をし、冬も間近な晩秋の早朝に出ていくという情景です。

そこで気になったのが、残された彼女です。彼女は目覚めると、彼が姿を消していることに気付きます。その後、彼女はどうしたのか?

実は、彼が出ていく前後の彼女の様子が描かれているのではないかと思われる作品があります。同アルバムに収録されている小田作品「めぐる季節」です。


あなたがそこにいるだけで
わたしの心はふるえてる
あの甘くやるせないジェラシー
まだ若かったころ

「冬が来るまえに」で述べたとおり、彼は別の女性が気になっています。その雰囲気を察知した彼女の当時の気持ちですね。その当時を彼女が回想しています。


「もう少しだけ 今のまま
続けてゆこう」なんて
冬の寒さに 愛の言葉も
隠れて見えなくなる

彼の迷いの言葉ですね。
「流されるままに生きていく」という歌詞が『冬が来るまえに』にありました。その気持ちから発せられた彼の言葉が「もう少しだけ…」の言葉だったのでしょう。でも、結局彼は彼女に告げることなく部屋を出ていきました。彼は冬が来る前の晩秋に部屋を出ていったのですが、彼女にすれば独り残された寒々とした部屋の寒さが印象的だったと思われます。だから「冬の寒さに 愛の言葉も…」となったのでしょう。


あなたを見つめているだけで
私はやさしい夜をむかえ
めぐる季節に
あなたをうたう
まだ若かったころ
遠く過ぎて消えた

2人に「燃ゆるおもい」があり、「変わらぬ愛」がお互いに見えていた頃、彼女は彼が側にいるだけで安らかな眠りにつけたことでしょう。そんな季節を幾つか過ごしてきたけど、それも遠い思い出となってしまった。彼女はそう回想しているわけです。


信じることが 倖せだった
なつかしい あの日々よ
こぼれるような あなたの笑顔
忘れてしまいそう

彼が出て行ってから季節は幾つもめぐり、時は流れていきました。そんな時の流れの中で彼女はふと若かりし頃を思い出したのです。今、彼女は倖せなのでしょうか。

この「めぐる季節」、いきなり大間ジローさんのドラムから始まります。そして、2人のコーラス、更に印象的な松尾さんのハーモニカ。2人からバンドへの過渡期においての傑作だと思います。

「冬が来るまえに」で彼女の元を去った彼の情景が描かれ、その後幾つかの季節が過ぎていくのを独りで過ごした彼女の回想が「めぐる季節」だと私は思ってしまいます。

「めぐる季節」の間奏とアウトロの木枯らしが吹き抜ける効果音も印象的です。その木枯らしの音に重なるように響くハーモニカの硬質だけど優しい音色が冬の寒さをより表現していると同時に当時を懐かしく想える彼女の心情を言い尽くしている感じがします。彼女にとって、季節はめぐるけど、思い出に強く残っているのは彼が去っていった冬なのでしょう。


遠く 過ぎて 消えた



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