オフコース アルバム「We are」 その後2
その日。今では記憶も定かではなくなっている日。私はその日もいつものように目を覚まし、台所へ行き、インスタントコーヒーを淹れた。ブラックコーヒーの苦味が私のぼんやりした頭を目覚めさせていく。
コーヒーを飲みながら新聞のテレビ欄を何気なく見ていると「オフコース」という文字が目に飛び込んできた。
「 ! 」
落ち着いてよく見ると「若い広場〜オフコースの世界」とあった。82年1月3日NHK教育テレビで放映された番組。
正月に放映されたっけ、と今では記憶が曖昧。ただ、新聞のテレビ欄を見て驚いたような記憶がある。で、もちろん放映時には食い入るように見た。
この「若い広場〜オフコースの世界」という番組はオフコースが新しいアルバム「over 」をレコーディングする過程を追ったドキュメンタリーである。
滅多にテレビに出ないオフコースの、それも舞台裏であるレコーディングの様子をよくもまあ撮影できたものだと驚く。「Give up」の著者の山際淳司氏のインタビュー風景もあった。
この時、鈴木さんの脱退の意思はメンバーに共有されていたはずで、会議では解散さえも議題にあがっていた時期である。逆に、そういう微妙な時期だからこそ記録に残そうとしたのかもしれない。
しかし、彼らのレコーディング風景はプロフェッショナルであった。和やかな雰囲気の中、それぞれがそれぞれのやるべきことを淡々とこなしていっている。煮詰まりながらも皆で作品を創り上げていく彼らの姿に感動するばかりである。解散問題を抱えているグループとはとても思えない。
鈴木さんの雑談に笑いが起こるし、鈴木さんと小田さんのコーラスのレコーディングもギクシャクとした雰囲気はない。やはり鈴木さんの脱退は人間関係よりも音楽の方向性の違いが主な理由だったのだろう。
ただ、クルマでの移動の時など鈴木さんの姿が見えなかったりと、時折、鈴木さんと他のメンバー間の微妙な距離感を感じる場面もあったような記憶もある。
ともかく、鈴木さんの脱退表明を受け、小田さんがオフコースの解散を考えるようになった結果、メンバーとスタッフはオフコースを如何に解散させるかという重い課題を背負うことになったのである。
そんな状況の中で制作されたアルバム「over 」。オフコースの解散プロジェクトの壮大なBGMと言えるのかもしれない。
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