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オフコース アルバム「over」その3 「君におくる歌」

アルバム「over」A面3曲めは鈴木さんの「君におくる歌」です。

結局、この曲が鈴木さんの小田さんに対する訣別の歌となりました。

前作「We are」の鈴木作品はどれも小田さんやオフコースに対して直接的な気持ちを歌った曲ではありませんでした。

「おまえもひとり」は自問自答でした。「いくつもの星の下で」は自分の気持ちをパートナーへ打ち明ける内容でした。「一億の夜を越えて」でようやく自分の中で決意が固まったという感じでした。いずれも小田さんの問いかけに対してまともに応えていませんでした。

鈴木さんの中でこのような感情の変遷を経て、「We are」ツアーの最中の会議で脱退宣言をしたわけです。

無事にツアーは終了しましたが、対レコード会社や対オフコースカンパニーとの契約という、いわゆる大人の事情によって変則的ですが契約の更新がされ、鈴木さんはオフコースでの活動をあと1年半しなければならなくなりました。しかし、鈴木さんの中ではオフコースは終わっていたのでしょう。その心境を表現したのが「君におくる歌」だったと思われます。

「君におくる歌」の「君」は明らかに小田さんです。鈴木さんの作品の中で、ここまで明確に小田さんに対する心境を表現した歌は他に無いのではないでしょうか。

小田さんが歌った「愛の中へ」の直後にこの曲が置かれたというのは、鈴木さんが小田さんへ出した答えということだったのでしょう。

IN THE WIND」というブログで、松尾さんが出演しているラジオ番組において、松尾さんと清水さんと大間さんがこの時の状況を会話している内容が文字に起こされています。貴重な内容を記録していただき感謝致します。

この曲の作詞は鈴木さんと大間さんの共作となっています。前述のブログに記された会話によると、鈴木さんの脱退を聞かされた三人のうち唯一大間さんだけが直接鈴木さんに対して翻意するように説得したらしいです。ドラム担当として一番後ろで四人を見ていた大間さんだけが見える風景があったのかもしれませんね。


止められない
誰にも止められない

この部分どちらが書いたのでしょうか。悲しすぎますね。

また、このラジオの会話で三人が当時の鈴木さんの様子を話していますが、鈴木さんが普通に振る舞っていたと驚きをもって語っています。

鈴木さんの中では「終わって」いるオフコースですが、それが「手を抜く」ことには、鈴木さんの中ではつながらないのでしょうね。鈴木さんの職人気質の性格なのか、責任感の強さなのか、プロとしての誇りなのか、オフコース草創からのメンバーの矜持なのか、それらをひっくるめて「鈴木康博」なのでしょうね。

その結果、今や伝説となった武道館10日間ライブが完遂されたのでしょう。

「君におくる歌」を歌うことによって、鈴木さんの中で小田さんやオフコースを吹っ切るカタルシスを感じたのかもしれません。

鈴木さんにとって、この歌を歌うことは必要不可欠だったのでしょう。

そして、小田さんは、どういう心境でコーラスをしたのでしょう。


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