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オフコース アルバム「over」その10 総括

オフコースのアルバム「over」についての私なりの感想シリーズはアルバム最後の曲「心 はなれて」で終わったわけですが、最後の最後としてまとめ的なものを少々。

改めてアルバム「over」を聴いてみると、その構成の緻密さに驚かされました。発売当初から聴いていたのですが当時は全く気づかなかったです。

「over」の構成をみてみましょう。

序幕
「心 はなれて」(Instrumental)  
    小田和正
「愛の中へ」 
    小田和正
本編
「君におくる歌」 
    鈴木康博・大間仁世
「ひととして」 
    小田和正
「メインストリートをつっ走れ」 
    鈴木康博 · 大間仁世 · 安部光俊 
「僕のいいたいこと」
    小田和正 · 大間仁世 · 松尾一彦 
    鈴木康博

終幕
   序章
 「哀しいくらい」 小田和正
   本編
 「言葉にできない」 小田和正
    終章
 「心 はなれて」 小田和正

という感じで構成されていると思います。もちろん、これは私個人の見解であり、アルバムを制作したオフコースのメンバーの方々の見解は違うかもしれません。

しかし、こういう感じで分析できるということは、少なくとも小田さんが時間をかけて構成を考えたのかなと推測できます。というのも、このアルバム制作時点で鈴木さんはオフコースを脱退することが決まっており、脱退する鈴木さんとしてはアルバムの構成に関わっているとは考えにくいからです。

あと怪しい人物(怪しいって語弊がありますが)としては清水仁さんです。清水さんはアルバム収録曲の作詞作曲に名前があがっていません。彼のスタンスとして「解散するかせんかはどっちでもええねん。音楽をしていくことには変わりはないから」という感じだったと思います。そういう意味で俯瞰的な立場だったのではないかと思えます。実際にNHKの「若い広場」では小田さんのレコーディングに付き添いアドバイスをしていましたね。

そういうわけで、アルバム「over」は清水仁さんがアドバイザーで小田さんがプロデューサーという感じだったのではないかなと思えてなりません。

そう考えると、小田さんとしてはかなり複雑な立場だったことでしょう。オフコースの解散まで念頭においていたのですから、解散する当事者でありながら、その解散をプロデュースする立場でもあったということですからね。

逆に考えると、敢えて忙しい立場に身を置いたからこそ辛く哀しい時期を乗り越えられたと言えるかもしれませんね。

とにかくアルバム「over」の構成を整理してみると、凄いの言葉しかありません。最初と最後はこのアルバムのテーマである「心 はなれて」が置かれ、本編ではメンバーそれぞれの思いが綴られ、最後は小田さんの心の変遷で締められています。

うーん、こんなにも繊細で緻密で尚且つ熱い思いをもって自らの花道を飾り自らを見送っていったバンドってあるでしょうか。

確かに、五人のオフコースはこの後にオリジナルアルバム「I LOVE YOU」とサウンドトラック「NEXT SOUND TRACK」を世に送り出しています。しかし、このニ枚の作品は私としては五人のオフコースの名を冠するに値するかというと否定的になります。個々の楽曲のレベルは流石に高いですがオフコースとしてのまとまりには欠けると思います。レコード会社との契約を遂行しただけのように思えてしまいます。

というわけで、オフコースを知らない人にお勧めするとしたら「ワインの匂い」と「We are」「over」を聴いていただきたいです。本当に珠玉の名曲たちです。

オフコースと同時代を過ごせたことに感謝しております。

ありがとうございました。

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