見出し画像

進路室の秘密

昨日運動部の話を書いたら、ちょっとコメントのやりとりなどがあり、それで思い出したことがある。

わたしはかつて15年間で3つの高校に勤めた。

最初の学校は可もなく不可もなく、みんな進学したがるが、なかなか現役で受からない「進学希望校」であった。
いっぽう2校目は、とりあえず高望みしなければどこかには受かる、一応本物の「進学校」だったように思う。
(3校目については、今回は横に置いておく)

でどちらの学校でも保護者から聞かれたのは、部活やってて受験勉強できますか?という問いだった。

そんなもの個人次第に決まっているのだが、一応これには公式回答というものが存在した。

「部活動で引退まで頑張った生徒は精神的に強くて、その後の受験勉強でも追い込みがききますから、大丈夫です」
という、なかなか胡散臭いものである。

特に1校目の学校では、部活は全員加入するという建前上、下手をすると、「部活に加入している生徒の方が進学は強いです」くらいのことは言っていたかもしれない。

しかしこの言説、わりと日本中の学校で言われているのではないかと思うのだが、エビデンスはない。
だいたいみんな、経験上そう思うとか、先輩の教員がそう言っていたからとか、そんな理由で偉そうに語っているに過ぎない。

だって、部活が受験にマイナスになるのなら、それをほぼ無償で運営している全国の教員の立場がなくなってしまうではないか。
(本当に、どれだけ献身的に頑張っても、国から手当など出ない)

そんなわけで、この問いと答えは、積極的に検証されることがなされてこなかったように思う。(あくまで与太話である、良い子は文科省に苦情を入れたりしないように)

ところがこの部活動と進学の関係、全く調べたことがないのかといえば、そうでもない。

ある時、超絶パソコンができる先生が赴任してきて、進路関係の資料作成システムを一新したことがある。
とても優秀な方で、業者テスト、校内テスト、評定(通知表の点数ですね)の推移と、出願校の合否、といった個別のデータを統合して、「うちの学校ではこの時期この程度の成績であれば、この辺りに受かります」みたいな大手予備校並みの資料を作ってくださった。

大変良くできていたので、一同皆感心したのだが、ある先生の「これ部活との関係もわかるの?」という一言に、「簡単です」と、あっという間に相関データを出してしまったのだ。

結果は「相関なし」
つまり部活をやっている者も、帰宅部も、合格率は同じだった。

そりゃそうなのだ。
さっきも書いたが、そんなものは個人次第なのだ。
部活をやっていても、まっすぐ帰っていても、受かるときは受かる、落ちるときは落ちるのであった。

ただ件の資料を出された会議の場では、一同無口になり、なぜかそのことは封印されてしまった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?