ファミレス風景
ずいぶん久しぶりにファミレスに入った。
驚いたことに店に入ってから出るまで、いっさい店員と対峙しないで済んでしまった。
注文はもとより、配膳はロボットだし、ポイントをつけるのも会計するのも機械だ。
時折新聞チラシに入ってくる割引クーポンさえ、タブレットに番号入力で事足りてしまう。
昔から割引券の類を嬉々として使うというのがどうにも格好悪いと思ってしまう、スノッブな自意識を持っている自分だが、チラシを片手にタブレット入力というのは、さらに3割くらい恥ずかしい。(ならチラシなど持参するなという話だが、今日は連れ合いに持って行けと言われたのである、言い訳がましいが・・)
さて、そんな思春期の自意識過剰から抜け出せない自分は、一方でドリンクバーをつけたからには、何が何でも3杯は飲まねばならぬという、どうしようもない中学生根性をも併せ持っている。
やはり元を取るみたいなことは基本だよなと、内なる14歳がわたしに囁くのである。
いずれにせよお子様なのだ。
全く困ったものである。
さてそんなわけで、本日はジンジャエールの後に緑茶、さらにコーヒーを注いで、座席に居座っていたわけだ。
ところが、その間、後ろのボックスの家族がずっと言い争いというか、奥さんが一方的に何か訴えているのに気がついた。
聞くではなく聞いていると、奥さんは30分以上ずっとテーブルを変えようと言っているのである。
家族といっても、奥さんとその夫、そして夫の母親らしい3人だ。
母親は、どうやらややボケていて、受け答えがはっきりしていない。奥さんは、そのおばあさんが、食事をするのに、もう少し広いテーブルがいいのではないか、場所を変えようと提案し続けているようなのだ。
夫はといえば、「ここでいい」しか言わない。
奥さんはちょっと尋常ではないほどしつこく(それこそ、関係のないこちらが内容を把握できるくらい)言い募るのだが、それが終始穏やかな口調で低姿勢なのが、また少し異常な様子に思える。
「食事をするのには、広い方が良くないですか?」と(多分)ボケているおばあさんに問い続けている。
合間合間には「後で何かあったら困ります」とか「怒っていませんか」とか、色々不穏なワードも散りばめている。
多分わたしとほぼ同じタイミングで着席し、わたしが食事を終えて2杯目の飲み物を取りに行くくらいまでそれで揉めた後、今度は、「これを食べてもいいのよ」「全部食べられる?」「食べないの、どうするの」みたいな
穏やかながら、やや圧を感じなくもない呼びかけが続く。
もちろんこの家族の事情は全くわからない。
普段から介護案件が発生しているのか、たまたま今日だけ3人一緒なのか、そして奥さんと義母の(義母かどうかもわからぬが)力関係も、わたしの知るところではない。
もしかしたらこれは、この家族の通常運行なのかもしれない。
が、ただ、かつて介護生活を10年くらい経験した身からすれば、横にいてひたすらしんどかった。
介護、特に身内の世話、というのは、時としていろいろなことを歪ませる。
みんな幸せだといいなぁ。
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