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怪物と失われた記憶について

今日は連れ合いの通院日で、彼女を車で病院に送って行った後は、一旦家に戻って、診察後の迎車要求の連絡待ちである。
3時間かかることもあれば、30分で終わることもあり、病院だけは時間が読めない。

というわけで暇なので、かねてから頭の片隅にあって、時々思い出してはモヤモヤしていたことを解決しようと思う。

わたしの人生には、習慣的にラジオを聴いていた時期が2回ある。
仕事しながらの耳慰みにラジオを流している今現在は、この2回目に当たるのだが、では1回目はというと、オールナイトニッポンを布団の中で聞いていた中高生の時だ。

今回のモヤモヤは、この頃に遡る。

当時の夜のラジオは全体が3時間くらいの、週5の帯番組になっていて、その中に15分とか30分の番組がたくさん組み込まれている形だった。
その編成の中に、ラジオドラマの番組があって「夜のドラマハウス」という名前で放送されていた。
多分その中の一本だったと思うが、もしかしたらもっと以前に放送されていた、熊倉一雄出演の「ゼロの世界」だったかもしれない。

とにかく、日替わりで流れるドラマの一本に「フランケンシュタインの怪物」の話があった。

有名な話だが、フランケンシュタインというのは、怪物を作った人物の名前で、あのいかついモンスターには名前がない。
知的にも体力的にも人間を凌駕する能力に作られながら、その容姿の醜さゆえに見捨てられた怪物が、創造主たるフランケンシュタイン(これも誤解されているが、彼は博士ではなくただの学生である)に復讐する物語だ。

ある日、中学生だか高校生だかの自分は、この放送を聞いたのである。

当時、ラジオ番組を録音するとか、そういった趣味はまるでなかったので(というか家にテープレコーダーがなかった)、これは間違いなく生放送を一度聞いたきりだ。

その一回きりで、わたしはその番組の最後の一節をまるまる暗記してしまったようなのだ。

つまり以下の如くである。

「人間はみんな、醜いものを除け者にする。どんな生き物よりも惨めな俺が虐げられねばならぬわけだ。俺は愛と友情を切望して退けられた。これは不当ではないのか? 全人類が俺に対して罪を重ねてきたというのに、俺ばかりが犯罪者と考えられる。」
作者メアリー・シェリーは、その作品の最後で怪物にこのように語らせている。

これを45年を超えていまだに覚えているのだ。

しかしこれは正しいのだろうか?
何しろ一回で覚えるには長すぎる。しかも、覚えようとして覚えたのではなく、突然耳に入ったドラマの一節だ。さらにいえばわたしの人生で、同じような一発記憶の経験は皆無なのだ。

何年かに一度、不意に口をつくこの一節に、いつの頃からかわたしはモヤモヤし続けていた。

あれは本当に放送されたものなのか? そしてそうだとして、それはどのくらい正確なものなのか?

そこでわたしはその原典に当たろうと決心したのである。
まさに暇つぶしに打って付けの、ちょっとだけ身のある行為ではないか。
少しだけドキドキしている。

(長くなったので続きはまた明日)


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