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玉突き商店街(その1)

うちから50mも歩くと、ちょっと広い道路に出て、両側の歩道沿いには、住宅と商店が半々くらいに並んでいる。
幹線道路とは言わないが、ちゃんと「〇〇通り」と名前のつく道である。
 
かつて、ちょうどその通りに出たところと、そこから300mばかり東に行ったところに、それぞれガソリンスタンドがあった。
あったというのは、ここらのスタンドも過当競争で、近くの(そう、1km以内に3つもスタンドがあったのだ)セルフ給油に押されて、ここ数年で2店とも閉店したからである。
 
さて、最初に閉まった方のスタンドは、しばらくほったらかしにされていたのだが、最近工事が始まって、何やらプレハブの建物を作り始めた。
ただ、現場に設置された建築計画のお知らせ的な看板を見ても、引き続きスタンドの経営者が建てているらしいことはわかったが、今ひとつ何ができるのかは不明のままである。
 
家の近くに何の店ができるのか、これは大いなる関心事だろう。
飲食店にせよ雑貨屋にせよ、普段使いの良い店ができれば、それで生活に選択肢が増えるわけで、それは大袈裟に言って、人生の彩である。
ささやかな幸せと言っても良い。
 
一方、たとえば個人的には、ラーメン屋だの何かのセレクトショップなんかができても、行くことがないのだから、ないのと同じである。
 
そんなわけで、時々工事の進捗状況を伺っていたところ、先日思いがけず、家人が行きつけの美容院から情報を仕入れてきたのである。
 
ちなみに情報提供者たるこの店の店長は、近隣の事情通を自任していて、有ること無いこと様々な情報を我が家に提供してくれる、誠に楽しい人なのだが、その彼がいうには、ここにはコインランドリーができるらしいのだ。
 
コインランドリー。
なるほど、最近流行っているからなぁと思ったのだが、もちろん全然嬉しくない。
嬉しくないのは、我が家がコインランドリーを利用する生活スタイルではないことが一番なのだが、実は考えてみれば、この旧ガソリンスタンドの道を挟んだ真正面には、すでにコインランドリーが営業しているのである。
 
そのことを指摘しても、店長は「そうなんですよねー、でも間違いないらしいですよ」と自信満々だったのだとか。
 
過当競争から、スタンド経営から離脱した業者が、なぜ自ら、ふたたび過当競争の世界に突っ込んで行くのか、理解できないしむしろ心配になったのは当然だろう。
 
ところが、そんなこちらの感想を知ってか知らずか、店長は次なる爆弾を投下したというのだ。
 
(次回に続く)


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