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代打講師その2

代打で絵画教室の講師をしたことは昨日書いた。

この教室は、お昼からと、3時からの2本立てで、受講者は丸々入れ替わる。
なかなか盛況である。

内容的には八割方同じことをやるのだが、3時の講座は親子ではなくて、ソロ参加である。
一回めの講座で、結構なアクシデントがあったので、個人的には興奮冷めやらぬ中、2回目を迎えることとなった。

さて、参加者のみなさんだが、たまにしか代打で出ないわたしでも見知った顔があるくらいで、それなりにリピーターの方が多い。

「あら先生お久しぶり」なんて声をかけていただくと、こちらも、「どうもまた来てしまいましたぁ」などと、すっかりリラックスモードである。

とはいえ、全く初めましての方もいることだし、昨日も軽い自己紹介から始めることにした。

「えー、元々は学校で美術を教えておりまして、この辺りだとA高校で・・」と切り出したその時であった。
「あーっタグチ先生?」と、素っ頓狂な声を上げた参加者がいる。
「ん?」
「Iです。音楽部なのに美術をとってしまって、直してもらうふりして全部先生にやってもらったIです。」

こちらは名前を聞いた途端に思い出したのだから、そこまで一気に捲し立てる必要はないのだが、とにかくその勢いでわたしは確信した。

彼女は紛れもなくIさん、30年近く前の生徒だ。

そして30年経っても性格が1ミリも変わっていない。
明るくおおらかに押しが強い。

若干動揺というか、1回目の講座の時とはまた別の予期せぬ角度からのハプニングで、思わず「お、おぅ」と口にだしてしまったわけだが、まぁこちらの方は嬉しい出来事であった。

地元でやっていると、こういうことはごくたまにあって、だいたいは向こうから声をかけてもらうのだが、やはり16、7の子が40過ぎたりしていると、なかなかひと目ではわからない。

一方、生徒の方としても、担任だったとか、部活の顧問だったとかでもない限りは、それっぽいなと思っても、やはりなかなか確信を持って挨拶してきたりできないようだ。

以前も、そして昨日も言われたのだが、決めては声だそうで、わたしはどうも外見より、声の方に特徴があるらしい。

それはそうと、Iさんは、30年前と同様に、手をあげて「ここどうすればいい?」と聞いてくる。
わたしも、「えーと、ちょっとかしてみな」と筆を手に取る。

人間、そうそう変わるものではないのだと思った。


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