空振り台風の後始末
気の進まない仕事というものがある。
まぁどんなに気が進まなくとも、だいたいいつかはやり始めるのだが、困ったことにそういう仕事は一つとは限らないのだ。
数ある気の進まない仕事が放置されている中で、どうやって優先順位をつけるのか、実は自分でも確固とした基準はない。
何となく思いついたものに手をつけたり、あるいは先延ばしにしたりして日々過ごしている。
こんなことを書くと怠惰な人間だと思われるかもしれないが、実は私は意外と勤勉な性格である。
手さえつけたなら、割とちゃっちゃとやり遂げる自信はあるし、大概のことはできる限り迅速に処理してきた。
例えば、締切のようなものがあるのなら、話は早い。
遠い昔の学生時代、私は夏休みの宿題は7月中に全て終わらせていたタイプだ。
ラストが決まってさえいれば、あとは逆算してどうにでもなるのである。
しかし「いつかはやらねばならない」とか、「どっちかといえばやったほうがいい」とか「やると気持ち良いに違いない」みたいなことは、どうにも始めるきっかけが掴めない。
困ったものである。
さて、住んでいる家のメンテナンスなんていうのは、その気の進まない仕事の最たるものだ。
網戸が破れた、水道の蛇口の調子が悪い、郵便受けの戸がよく閉まらない・・・。
なんとなくなだめすかして使い続ければ、今日でなくてもいいやというものは、どうにも面倒臭さが先に立つ。
先日台風でちょっと雨が降ったら、朝の5時頃に急に雨漏りがしだした。
この家も折々に手を入れているとはいえ、もう築30年、だいぶあちこちガタがきているので別に驚かなかったが、それにしても緊急事態である。
慌ててバケツだのたらいだのを出してきて事なきを得たのだが、下手をしたら敷物にシミを作っていたところで、最初の一滴が落ちる音で目覚めた自分を褒めてあげたいと思う。
実は雨漏りじたいは前にも経験していて、その時は外壁が劣化して、サイディングのつなぎ目から水が染みていたために、ウン十万円をかけて、塗装工事をせざるを得なかった。
今回、台風が近づいていると聞いた時に、またこのタイミングで何かあったら嫌だなと思っていて、なんとなく心の奥で覚悟は出来ていたから、それなりに対処できたのかもしれない。
しかし恐ろしいことに台風は次々発生して、来週にはまた本州に直撃するというではないか。
それまでにはなんとしても問題を解決せねばならなくなった。
まずは原因の特定である。
補修してさほど月日はたっていないので今回は外壁ではない。
とすると屋根なのだが、これはちょっと自分の手に余る。なにしろ素人が下手に屋根に登って転落などしたなら目も当てられないだろう。
さてどうしたものかと考えていたら、連れ合いが、ベランダのグラスファイバーの床にひび割れがあるという。
どれどれと確認すると確かに割れている。
おぉでかした。これなら自分でなんとかできそうだ。
というわけで今日はこの亀裂を補修してみたのだが、これで直ったかどうかはまた大雨が降らないとわからない。
もし直っていなかったら、業者を呼ばねばならぬだろうし、そうすると、ベランダにある手作り小屋に詰め込んだ有象無象を片付けなければならないし、いやいや、その前にベランダ側の窓にかけてあるカーテン、あれちょっと穴が空いていたよな・・・。
一つ片付けると、今度はこれ、あとあれとそれと・・無限に案件が浮上してくる。
台風は気の進まない仕事に、一気に解決を迫っているようだ。