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5年『四角形と三角形の面積』のデザイン②:三角形の面積で「公式が見えた!」が生まれるまで

 5年生で学習する『四角形と三角形の面積』の単元の紹介です。

 前回は「追究する学び」の素地づくりをテーマに実践を紹介しました。

 今回の記事では、平行四辺形の求積公式を見いだし、三角形の学習へと進めていきます。三角形の面積の求め方から公式を考えているときに、「あ!」と言いながら前のノートをめくる子がいました。その後、「先生、公式が見えましたよ!」と笑顔で話し始めます。「追究する学び」が少しずつ始まってきました。

 前回の記事もよければ御覧ください↓

 『四角形と三角形の面積』の学習をまとめるきっかけの記事です。こちらもよければ御覧ください。

①4時間目:「三角形の面積はどう求めるのかな?」
〜思考が広がり始める子こどもたち〜

 平行四辺形の面積の求め方で3時間学習しているので、『四角形と三角形の面積』の学習は4時間目です。3時間で子どもたちは、自分で考えることを楽しみつつ、表現を始めています。

 平行四辺形の面積の復習をしつつ、「今日の問題なんだけど…」とすぐに三角形を提示しました。子どもたちはその図形を見て「できる!」「簡単だよ!」とすぐに反応します。

 もちろん困っている子もいたので、「どう考えようと思っているの?」と聞くと、「〜の形にすればいいんだよ!」と等積変形か倍積変形することのイメージを話してくれました。

 この単元では「何を」「どのように学ぶか」を3時間かけてある程度掴んでいるため、子どもが揺れ動く「問い」のような形ではありません。

 しかし、子どもたちは「やってみたい」「解き方を考えたい」という思いを表出してきます。それは、「平行四辺形でも求められるのだから、三角形でも面積は求められる」という考えに至っていることの裏返しです。

 そのため、すぐに子どもたちに考え始めてもらいます。

4時間目の板書

 余談ですが、子どもたちが考えるために、面積を求める図形の縮小コピーを毎回準備します。しかし、「全員に」配付はしません。必要ない子もいるからです。

 それは、図で思考する必要がないという意味合いではなく、ノートに自分で作図して考える子もいるからです。逆に、切り取ってもとの図形と比較することで思考を整理しようと考える子もいるので複数枚欲しい子もいます。

 そのため、「図形は準備したよ〜!使う人どうぞ〜!」と声をかけるだけです。

 子どもたちは「先生、今日は何枚ある〜?」と聞いてくるので、「今日はクラスの倍ぐらいあるよ!」と返すと、「なら、今日は大丈夫!」と他の人に譲ったり、しばらくして「図形の紙余っているから、新しい考え用(ノートの整理用)にもっていっていい?」追加で取ったりと、自分たちがその時々で判断していきます。

 準備したものは使わなくてはいけないと思ってしまうものです。

 しかし、全ての子に必要とは限りません。必要な人が必要な分だけ活用してくれればいいのです。

「あれが欲しい!」
「こんなの先生準備できない?」

 と、自分たちの学びに必要なものを自分たちの手で要求できるようになって欲しいのです。



 さて、交流の場面です。

 三角形の面積となると子どもたちは自分なりの方法で考え始めます。

 黒板に出された考えも6つ出されており、少し多くなっています。これだけの考えを出す場合は、クラスの子どもたちの自力解決での解決の様子が決め手になってきます。複数考えたり、困っている子が少なかったりしないと、一つひとつ丁寧に扱うと時間が足りなくなります。

 交流時には、子どもたちは黒板で図形を変形させながら説明を加えていきます。まず、図に書き加えてから話そうとするので、チョークで黒板の図に書き加えている時に、「あ!その考えね!」「長方形にしたかったんだね!」と、どんどん見ている子がつぶやきます。それを聞いた後に、考えたの子の説明がなされるのである程度十分だと言えます。

 そこで、私は「この式のこの数は図形で言ったらどこのこと?」だけ問うようにしました。式と図の結びつきは公式にしていく上でも重要になる部分なので、色分けするなどしてはっきりとさせます。

 多くの子が等積変形で考えており、長方形に変形して考えています。もちろん、倍積変形にしている子も一定数いるので、「長方形か平行四辺形にすれば、三角形でも面積を求めることができる!」と子どもたちはまとめていきました。




②5時間目:「三角形の面積は公式化できるかな?」
〜「公式が見えた!」〜

 さて、2時間目に入ります。

 子どもたちとは「三角形の面積を公式化することはできないのか?」という問い、振り返りを通して共有しています。

 そこで「この三角形ではどうかな?」と問いかけ、新しい問題をもとに公式を考えるようにしました。子どもたちは、改めて「どこを使って求めたのか?」を意識して考え始めます。

5時間目の板書

 出されたのは、倍積変形と等積変形(長方形と正方形)の3つの考えです。どの考えもシンプルで分かりやすいです。

 それぞれの考えを交流し、式の数が図形のどこの長さを使っているかを確認しているとき、タイトルの通り「公式が見えた!」という発言が生まれました。

 その子は前のノートのページ開き、何かを確かめている頷いていました。そして、「先生、公式がみえましたよ!」と教えてくれたのです。

 ある程度、出された考えがまとめ終わり、その子に話を聞いてみました。その子は「前の図形でも同じ部分の長さを使っているかどうか確かめて、同じ部分の長さを使って面積を求めることができました!」といい、倍積変形の図を指しました。

 「平行四辺形の面積にするんだから、「底辺×高さ」の部分がここ。(三角形の底辺と高さを指す)公式にはこの2つと÷2で公式ができる。」

 説明を聞いていた子どもたちは「分かりやすいね!」「その通り!」などと、納得です。そうして、三角形の公式は「平行四辺形の面積÷2」ということだと子どもたちは公式としました。

 そこで、「三角形を増やして平行四辺形にしたのは÷2だけれど、長方形にした方は÷2はないのかな?」と、倍積変形と等積変形をつなげる問いかけをしました。

 子どもたちは少し悩んでいたようなので、「底辺と高さの長さと式を見比べてみようか。」と手掛かりを渡し、「高さが÷2だ!」「底辺が÷2だ!」ということを見いだせるようにしていきました。子どもたちはそこには納得しましたが、公式として分かりやすいのは面積の÷2と考えていたようです。


 この授業を終えた子どもの振り返りです。

 三角形の面積の求め方の公式は倍積変形だけど、平行四辺形の公式は、もとになる考え方が倍積変形だと思いました。次、また別の図形の求め方を探す時、倍積変形か等積変形か考えようみようと思いました。

子どもの振り返り

 等積変形、倍積変形のポイントをつかんでいます。この後の学習(台形の面積)で複数の子が「公式化は倍積変形の考えでできる。」と発言しています。子どもたちの中で、公式を作りだす学習の仕方が見えてきたのだとこの振り返りからは分かります。

 ちなみに、この子は特に塾やワーク等の先行知識がある子ではありません。授業で学んだことをベースによく考える子です。

 今回は、三角形も求められるものにすればいいことが分かりました。これって台形も求められる形にできるし、…だけど角がないものにはどうやっても四角形にできないからどうするんだろうって思いました。だから、逆に角があるものはなんでもできるんじゃないかなって思いました。

子どもの振り返り

 こうした子の振り返りも面白く、授業の初めによく紹介します。「角がないもの」つまり、円の面積はどう求めるのかをこの子は考えているのだと分かります。他の子の振り返りには「倍積変形の考えは五角形や六角形の面積では使えない。」などと指摘している子もおり、自分たちが見いだした考え方の適用範囲を自分なりに考察していることが分かります。こうした振り返りをどんどん全体に共有し、学びの集合知をつくっていくことが面白いと思います。


 授業の紹介は以上となります。
 次は台形の授業の紹介です。


 最後まで読んでいただきありがとうございました。





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