音速の鷲乗りα 37 (最終回2)

 

あの事件からしばらくして、防衛省技術研究本部に監査が入り、全てが明るみに出た。
室長以下装備開発別室メンバー全員が更迭され
懲戒免職後に逮捕、実刑判決を受けた。
そして、新設された307飛行隊も直ぐに解体され全員元の部隊に戻って行った。
配備されたF-15改(イーグル改)も直ちに飛行停止の措置が取られ、事故を起こす事なく全機が例の装置を外すためにリコールとなった。

隊長である栗原2佐も今回の件で責任を取る形で辞表を出したようだが、上層部から待ったがかかりそのまま留まることになった。

あの事件から十数年が経った…

〜小松基地 駐機場〜

僕は、306飛行隊長になっていた。
今日は、我が小松基地に航空学生飛行操縦過程を修了したパイロット達が配属される。
1人ずつ名前が呼ばれていく…そして

渉「3等空尉 直枝 理沙!」

理沙「はいッ!」

渉「同じく、熊岡 なゆきッ!」

なゆき「はい!」

渉「以上ッ6名!」

柊甫「小松基地 第6航空団306飛行隊に配属させる。 令和○○年 小松基地司令 
 空将 安村柊甫 

  ようこそ小松基地へ…君たちの配属を基地司令として嬉しく思います。これから、様々な困難や壁に当たると思います。ですが、厳しい訓練に励んだ分だけ自分に帰ってきます。ですので、挫けず頑張って下さい。」


着任者達「はいッ!」

パチパチパチパチパチパチ

会場に盛大な拍手が沸き起こる。

渉「敬礼ッ!」バッ

副司令である窪田空将補の号令と共に
一同が安村基地司令に向かい敬礼する。
それに答礼する安村基地司令

柊甫「諸君らの活躍を大いに期待する…挫けず頑張ってくれ!」バッ
(樹…見てるか?お前さんの娘…みゆきちゃんは立派に成長して我が基地の306に配属されたぞ…お前に似てのほほんとしてるが…
 良いパイロットに成長しそうだ…空から見ていてやってくれ。) 

渉「直れッ!」


〜着任式後 格納庫〜

理沙「お父さんッ!」

理樹「理沙…本当に来たんだね…」

理沙「うん!だって小さい頃約束したじゃんッ 私は絶対にお父さんみたいに立派なパイロットになるって!」

理樹「そういえば、そうだったね…」
(我が娘ながら恐ろしいや…)

理沙「あ、紹介するねお父さん 熊岡みゆきちゃん! 私の同期なんだ!」

なゆき「はじめまして。熊岡です!アカネとは昔から良く遊んでまして…
 その、お父様にもお世話になってて…あの…父がお世話になりましたッ!」ペコリ

理樹「いやいや、こちらこそ。僕も君のお父さんには凄くお世話になったんだ、とても良い人だったよ誰よりも尊敬する人だった…だから、君もお父さんのように立派なパイロットになれるよう頑張ってね!」ビシッ

なゆき「はい!ありがとうございます!」ビシッ

理樹「よし、2人とも…我が隊に来たにはとことん厳しく行くぞッ!弱音を吐かないでよ?特に理沙 僕の娘だからって容赦はしないから覚悟しておくんだねッ!」

なゆき「はいッ!」

理沙「げっ…お父さん厳しい〜」

なゆき「ふふっ…2人はほんと仲良いですね〜」

理樹「気のせいだよ。家では喧嘩するし…」
(熊岡3佐…貴方の娘さんは立派に大きくなられました。ここからはお任せください…必ず貴方のように立派なパイロットに育て上げます。)

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〜小松基地司令室〜

渉「お疲れ様、柊甫」

柊甫「ああ、ありがとう。まさか、またここに戻ってこれるとは思わなかったよ。あの時は大変だった…」

渉「ほんまやで、ほんまに…俺らに何も相談せんで勝手に動きやがって…」

柊甫「すまんやで…」

渉「もう、2度とあんな事せんでくれよ…これ以上同期を失うんは辛い」

柊甫「分かってるよ…ここにアイツが居ればな…俺たち同期3人でこの小松を盛り上げる事が出来たのに…惜しい奴を亡くした。」

渉「ああ…アイツが居れば…でも、くよくよしてもアイツは帰ってこん。それにいつまでもくよくよしよったら示しがつかんけん」

柊甫「それもそうだな。よし、仕事するかッ」

渉「ああ!」

コンコン

柊甫「入れ」

その時、扉がノックされ2人の男が入ってきた。

豊「306飛行隊副隊長 緑川3佐、303飛行隊副隊長 佐貫3佐入りますッ!」

佐貫「入りますッ!」

豊「戦競技会のメンバー表提出に参りました!」

柊甫「お、出来たか見せてくれ。」

佐貫「はいッ」

柊甫「どれどれ…306はこのメンバーか…緑川、お前ならアグレスとどう戦う?佐貫も…」

豊「はい!その場合はこのようにこうして…」

佐貫「はい、自分はこのようにして…」

それぞれが身振り手振りで説明する春原、渉は隣で2人に睨みを効かし、緑川は余裕そうな表情に対し佐貫の顔が徐々に青くなっていく…

渉「おい…お前ら」

2人「は、はい!」

渉「お前らは…いつも俺達にその凶器を向けとんか…?嫌がらせか?」

豊「え…?」

佐貫「はぇ?」

自分達の下半身に視線を落とす2人

2人「は、えええええええっ!?」

同じタイミングで全く同じ反応を示した…

柊甫「入ってきた時から開いてるぞw」

良樹「服装チェックしてねぇのかよ…」

渉「チャック閉めて出直してこい!」

佐貫「は、はぃぃッ」

豊「は、はい!失礼しました〜ッ!」パタン

渉「元気だなぁ…アイツも」

良樹「普通は、身だしなみを整えて入ってくるだろ…まったくアイツらは…」

柊甫「いや良いって、懐かしいなこのやり取り。十数年ぶりかな な?渉」

渉「そうやな…あの当時はアイツが隣で大爆笑してたもんな。」

良樹「熊岡3佐ですね…そういえば娘さんが306の方に配属になりましたね。」

柊甫「ああ、大事にしてやってくれ。話は以上だ戻りたまえ。」

良樹「了解! 失礼します!」





死んだ人間はもう帰ってこない…しかし
人は変わっていく、これからも。ずっと…
人はいずれ終わりが来る、それには抗えない。
だが、大切なのはその人生をどう生きたかだ。
俺たちはアイツのためにこれからも前を向いて生きていかなければならない。
それが、アイツに対する弔いだと俺は思う。

亡き戦友に捧げる…


 

         fin…






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