音速の鷲乗りα 26



〜格納庫〜


僕が307に着任して2ヶ月が経った頃
航空自衛隊で新機体である F-15改が我が307飛行隊に15機配備された。

理樹「コイツが…例の新鋭機か」


このF-15改(以後、イーグル改)はF-15Jを
ベースに改良が施され、機体の空気取り入れ口後方にカナード翼、垂直尾翼はステルス性能に特化した構造となっている。

武装は、従来の20mm機関砲が一門、AIM9改ミサイル サイドワインダー スパローミサイルが搭載可能。
レーダーも新しくなった、従来のレーダーの2倍の探知能力を持つJ68αレーダー
エンジンは米空軍のF22ラプターと同等の物を使っている。 そして、機体の塗装はステルス性能に特化した塗装となっている。そのため部隊ロゴ、機体番号共にロービジとなっている。


理樹「本当に配備されるとはね…」

新鋭機を眺めながら呟いた…ふと振り返ると

ノゾミ「直枝くん…」

理樹「あ、森さん…どうしたの?」

ノゾミ「直枝くん…ごめんなさい!」

理樹「え?何…どうしたの?」

ノゾミ「あの時…私が副隊長に伝えておけば…あんな結果にならずに済んでいたかもしれないのに…私のせいで…私のせいでッ!」

理樹「ちよっ…森さん 話が見えないけど、とりあえず落ち着いて話して。何があったの?」

ノゾミ「実は…」

森さんは自分の家が神主である事、そしてあの日以前に見えたものや当日の事について涙ながらに教えてくれた。

理樹「なるほどね、教えてくれてありがとう。でも、それは森さんの所為じゃないよ…アレは仕方がなかったんだ…偶然それが見えてしまったって事も…だから自分を責めないで ね?」

ノゾミ「ありがとう…直枝くん…ありがとう」

僕は知っていた、森さんは自責の念からウイングマークを返還しようとしていたことを。
だが、隊長はそれを良しとしなかった。
そしてこう言った、「アイツのことを思うなら飛び続けろ」と いい人じゃないか。
それに、この事故に関しては森さんは一切悪くない。悪いのはうやむやにしている空幕と上層部だ…絶対に何かある。

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〜防衛省 技研本部別室〜

室長「あれから、ネズミの動きはどうかね?」

2佐「特に変わった様子はないようです。引き続き監視させてますが、最近は動き回ってないようです。」

室長「いや、分からんぞ我々の目の届かないところで動き回ってやも知れん。手を抜くなよ」

2佐「了解ッ おい」

2尉「はっ!」

2佐「君に任務を付与する。何かあれば逐一報告してくれ。」

2尉「分かりました!」

そう言って2尉は、部屋を出て行った。

室長「勘のいいネズミには灸を据えてやらんとな…」

2佐「全くですよ…」

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〜新田原基地 305飛行隊〜

坂本「なぁ…堀江聞いたか?」

堀江「何がです?」

坂本「俺たちが去った後の百里に307飛行隊って新設されたろ?」

堀江「ええ、確か女性パイロットを集めたって言う…それがどうかしましたか?」

坂本「噂に聞いたんだが…あそこに新機体のF-15改が15機も配備されたらしいぜ」

島宮「あ、それ俺も聞いたよ。新設されたばっかなのに…おかしい話だよな?」

坂本「ああ、本来なら俺たち実戦部隊に配備される筈だろ?なんであの部隊なんかに…」

堀江「さあ?空自のアピールですかね? でも、アピールするにしては装備が贅沢すぎやしませんかね?」

島宮「ホリーもそう思うだろ?」

堀江「ええ、ちょうどあの部隊に同期が転属になったみたいなんで今度聞いてみますよ。」

坂本「頼むわ。何かおもろい事がわかるかもしれんな…」

花田「おもろいもクソもあるかいや…」ヌッ

坂本「た、隊長ッ お疲れ様です!」

堀江「全く気配に気づかなかった…」

島宮「どう言う事ですか?隊長」

花田「そのまんまの意味や、あそこはヤバいって…ほら5月に起きた例の事故があるやろ?」

島宮「ええ、確か3等空佐が1人亡くなられてますよね。新聞や事故速報を確認しましたが、別に不審な点は 整備員のミスかと思われます。あの書き方は」

花田「な?お前もそう思うやろ? んでだ話を戻すが…そんな事故を起こした部隊に新鋭機を数ヶ月で送るか?普通」

坂本「いや、定石なら送らんですね。私が空幕の人間なら尚更そうです…」

堀江「モルモット…」

花田「つまりそう言う事だよ…」

堀江「しかしッ…」

花田「あくまでワシの憶測に過ぎんがな…もし、お前さんらで行きたい奴がいるならワシは全力で止めにかかるな…」

そう言って隊長は部屋に戻れた。

島宮「モルモット隊か…」

坂本「胡散臭いとは思ってたが…まさかな?」

堀江「……。」(直枝のやつ大丈夫かな)

自分がさっき言った言葉に不安が大きくなる
仮に307飛行隊が何かのモルモットだとしたら…あそこにいる人たちは…

俺は恐ろしくなって考えるのをやめた…

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〜太平洋上 訓練空域〜

三浦〔百里CTL こちらブロッケン04 試験飛行の為 しばらく無線を切るゾ 〕

百里CTL〔了解、壊さんようにな。〕

三浦〔分かってるゾ それじゃ〕プツッ

理樹「ミュウラ、まずは基本の戦闘機動からやっていきますか?」

三浦〔そうだよ。(同意) その後に軽くドグファイト(格闘戦)をしてみよう。〕

理樹「了解ッ」

僕は三浦1尉とエレメント(2機編隊)で訓練している。搭乗している機体は先日配備されたばかりのF-15改だ。 今日の訓練メニューは
2機でマニューバ機動をした後、2対2でドグファイトを行う事となっている。
マニューバ終了後、従来のF-15J戦闘機の村上2尉(タク)と仲村2尉(ゼロ)に合流する事になっている。

三浦〔エルロンロールから実施するゾ!エルロンロールnow!〕

理樹「now!」

従来のF-15に比べて格段と機動性が増している。流石はF-22ラプターと同等のエンジンを積んでいるだけあるな。

三浦〔うん、機動性はばっちりゾ〕

理樹「ですね。意外に操縦しやすいですね」

三浦〔そうだよ、次 ハイ・ヨー・ヨーやるゾ〕

理樹「了解ッ」

三浦〔ハイ・ヨー・ヨー now!〕

理樹「now!」

加速力も申し分ない、従来のF-15は最高速度
マッハ2.5だが、このF-15改はマッハ2.85だ
これは、旧ソ連空軍のMIG-28戦闘機と同等の速度だ。

三浦〔加速も中々良いゾ〕

理樹「ですね、これは実戦使えますね。」

三浦〔次、インメルマンターンするゾ〕

理樹「了解ッ」

三浦〔インメルマンターンnow!〕

理樹「now!」

インメルマンターンとはループの頂点で背面姿勢からロールし水平飛行に移行する。斜めや垂直に上昇するより時間・エネルギー効率が良く、F-15戦闘機のストリーク・イーグル計画(最速上昇記録挑戦)の際に連続で行われたことがある。

理樹「中々良いですねッ」

三浦〔お、そうだな。〕

空気取り入れ口後方にカナード翼が追加されたお陰でこのような機動を取っても従来のF15に比べて失速しにくくなっている。
新鋭機としては申し分なしだ。

その後、一通りのマニューバ機動をした。どれも難なくこなすことができた。

そして…村上2尉(タク)達と合流しドグファイトが始まった。

ゆり〔タク、Blake…nowッ!〕

タク〔roger. Blake…now〕

三浦〔俺はタクを追うゾ リトル お前はゼロを追え!〕

理樹「了解!」

向こうが散開したので僕たちも散開して各
1機ずつ追うこととなった。

村上〔くっ…流石は三浦1尉。嫌な動きでこちらの動きを封じ込めてくるな…〕

三浦〔タクめ…中々すばしっこい奴だゾ〕

理樹「仲村2尉…着隊した当初からあまり接点はなかったが…どんな戦法で来るのか…」

ゆり〔直枝君はアグレッサーに行った事があると聞いたけど…腕前を試してみようかしら…〕

〜数分後〜

村上〔やっぱ最新鋭の機体は違うな…ミュウラ俺達の負けですヨ…〕

三浦〔タク、お前も帰ったらコイツに乗るんだゾ〕

村上〔了解ッ〕

理樹「やっぱ従来とは全然違う…まず、イーグルじゃないみたいだ…」

ゆり〔流石はアグレッサーのゼウス(式神1尉)に撃墜判定を下した人ね…完敗だわ…〕

理樹「これ、本当にベースはF-15なのかな?」

新鋭機を操れる事を嬉しく思う反面、あまりにも良すぎる性能に不信感を抱いた。

三浦〔よし、帰るゾ〕

3人〔了解ッ〕

イーグル改…噂以上の性能だが…何故うちに15機も配備されたのか…こんな時に本省に知り合いがいれば良かったなと、ふとそんな事を思う。そういえば、あの人は大卒だったよなもしかしたら少なからず…希望があるかもしれない

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〜307飛行隊隊舎〜

沙都子「分かりましたわ。調べておきます。」

栗原「すまないね北条…君にこんな事ばっかりさせて。」

沙都子「仕方ありませんわ、女性パイロット達を束ねるのも私の役目と心得ておりますわ。」

栗原「まぁ…頼むよ。今度何か奢るからさ」

沙都子「ありがとうございます。お気持ちだけで結構でしてよ…」ガチャッ

そう言って私は隊長室を出た。
この隊の女性パイロット全員の身上把握か…調べてみる価値はありそうね。
何せ、事故当時の操縦者は森2尉だったはず…あの事故以来、森2尉は飛ぶことを避けている
普通に考えればそうか 上司が1人亡くなっているのだから。熊岡3佐…敵は討ちますよ…必ず


〜沙都子の居室〜

私は、部屋に帰りとある人に電話をかける。

沙都子「まず、森2尉はシロですわね。上官を殺す動機が見つかりませんもの。」

男〔俺もそう思う。お前の目から見て怪しいと思う奴は居るのか?〕

沙都子「今日、隊長に女性パイロットの身上把握をお願いされたのですけど…正直なところ全員シロだと思いますわ。それに、普段の勤務態度を見ていても特段怪しいと言ったところは見かけませんでしたわ。」

男〔そうか…パイロットの線は無しか…となると整備員か しかし、流石に整備員の身上把握まではさせて貰えんだろう。〕

沙都子「ええ、そうなんですの。だから、誰かを買収したいのですが流石にそこまでするとバレてしまいますわ…それに、直枝さん…いえ、直枝2尉が個人的に何か嗅ぎ回ってると言う情報を得ましたわ。」

男〔直枝2尉が?〕

沙都子「ええ、この間自身の機体の機付長をされてる空曹の方とお話しされてるのを見ましたわ。会話の内容はよく聞き取れませんでしたが…」

男〔そうか、了解だ。何か分かればまた連絡をくれ。じゃあ〕

沙都子「ええ、失礼しますわ」pi

電話が終わると同時に同居している親友が帰ってきた。

梨花「ただいま〜 沙都子」

沙都子「おかえりなさいまし、梨花 今日は早かったですわね。」

梨花「ええ、今日は意外と早く片付いたのよ。」

沙都子「そうでしたのね。ところで例の件はどうなんですの?」

梨花「ええ、一応秘密裏に調べさせて貰ったけど、私の勘が正しいとあなたの組織のどこかの部署が噛んでいるわ。」

沙都子「やはり…そうでしたか…私の踏んだ通りでしたわね。」

梨花は、表向きの仕事は茨城県警の生安科所属の刑事であるが実際は警察庁公安部公安外事第二課に所属している…つまり、公安警察(警察内のスパイ)である。


梨花「そうね…まさかルチーアを卒業した私たちがお互い諜報の場に身を置いてるなんて不思議な感覚ね…」

沙都子「そうですわね…いつもありがとうございます。梨花」

梨花「良いのよ、親友として当たり前よ…あの人は私も少なからずお世話になった人だものね…」

沙都子「そうでしたわね、引き続きお願いしますわ。」

梨花「分かったわ。」

本省絡みの案件は中々の曲者だわ。
3佐を亡き者にした奴らの悪事を必ず暴いてやる…







       続く…

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