音速の鷲乗りα 27
〜小松基地 303飛行隊〜
俺が隊長室の前に来た時、隊長は誰かと電話していた。
神田「元気にやってっか?栗ッ!おう、それで?……。分かった、また確認が取れ次第連絡する。じゃあな」
電話が終わったタイミングで俺は扉をノックした。
コンコン
神田「入れ」
良樹「大崎2尉入ります。」
神田「どうした?良樹」
良樹「こちらの書類の提出に参りましたッ」
神田「おい良樹よ…毎回言ってるだろ…様式は大事だけどよ そんなに堅苦しくなるなよって」
良樹「はぁ…すいません。こればっかりは…」
神田「まぁ良いや、見せてみろ。」
良樹「はい」スッ
神田「ふむ…これが、お前が現段階でわかる情報なんだな」
良樹「はい…すいません…これだけしか…」
神田「いや、寧ろ良くここまで調べてくれた礼を言うぜ。」
良樹「恐縮です。」
神田「引き続き、パイロットとして勤務する一方で調査の方も頼むぜ。」
良樹「分かりました。失礼します。」ガチャッ
今、分かっているのは…あの事故については防衛省だけでなく防衛技研本部も一枚噛んでいると言う事だ…しかし、これはまだ公表するべきではないな。下手したら日本がいや…世界の軍事バランスが崩れかねん…
良樹「ふぅ…まったく、妙な案件に首を突っ込んじまったな…そもそも、イーグル改が胡散臭すぎる…」
この件について知っているのは、俺と隊長くらいだ。俺が第二の顔を持っている事は隊長と副隊長以外誰も知らない…嫁にすらこの事を知らせていない…
何故なら国家機密に関わるからだ。
それに、直枝2尉も何かを嗅ぎ回ってると言う情報も得ている。頼むから先走るような事はしないでくれよ…
圭一「おっ、良樹!良いところに」
良樹「どうしました?」
圭一「実は…」ゴニョゴニョゴニョ
良樹「ふむ…なるほど。そう言う事でしたか」
圭一「あぁ、是非ともお前さんの知恵を借りたいと思ってな。」
良樹「分かりました。何か考えておきます。」
圭一「頼むぜッ」
良樹「了解ッ」
パイロットとしての顔を持つ反面、諜報員として動くのも大変だな…3佐さえ居てくれれば良かったのに…
いかんいかん弱音を吐いては仕事にならん。
良樹「さて、仕事しますか。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
〜防衛省 情報本部(DIH)〜
スズ「矢矧部長、大崎2尉が送ってきた資料に妙な事が記されています。」
矢矧「妙な事?どう言う意味だ柳本君」
スズ「ええ、例の不時着事故は防衛技研本部が関わっていると書かれています。」
矢矧「ふむ…防衛技研本部か、また厄介な所が噛んでるな。私も正直、熊岡君の死には不自然なものを感じたんだが…」
スズ「私も同感です。」
矢矧「それに、彼を失ったのは痛かったな…」
スズ「ええ、優秀な諜報員でしたからね…惜しい人を亡くしました。」
矢矧「柳本君、大崎君には引き続き任務を続行するように伝えてくれ。くれぐれもバレないようにな。」
スズ「了解しました。」カタカタ
私は現在、防衛省情報本部…通称DIHに在籍している。表向きは …
海上自衛隊幕僚本部広報室担当官 柳本2等海尉だが、家族にも教えていない裏の顔がある。
それは夫で同業でもあるケンジにもだ…
それが、情報本部通信統括担当官 柳本2尉だ。
つまり、防衛省内のスパイだ。
先程話していた相手は、矢矧情報統括本部長
表向きの顔は、航空自衛隊補給本部次長 矢矧
1等空佐だ。
そして、現在諜報活動をしている。大崎2尉
彼の表の顔は、航空自衛隊 第303飛行隊パイロットとなっているが、本当は…
情報本部準軍事工作担当官 大崎2尉だ。
先日、亡くなられた熊岡3佐は
表向きは307飛行隊副隊長と言った肩書きであったが、本来の肩書きは…
情報本部準軍事工作担当課長 熊岡3佐だ。
この防衛省情報本部は4つの部署に分かれる。
1つ目は、私が所属する通信統括担当課
ここは、各諜報員と連絡を取り、獲得した情報を統括する部署だ。
2つ目は情報工作担当課だ、通信統括課で得た情報を元に買収偽装工作や情報工作を行う課である。サイバー攻撃などもこの課が行う。
3つ目の準軍事工作担当課は、その名の通り標的対象の近辺に潜入、破壊工作や諜報活動を行う実働部隊である。この課に、大崎2尉や北条2尉は所属している。
ここに、熊岡3佐は在籍されていた。
4つ目の部署はISCF(情報特別急襲部隊)
防衛情報本部内の特殊部隊で公には公表されていない。この部隊には過去に特殊作戦群や特別警備隊に在籍していた隊員が所属している。
名前の通り、特殊部隊だ。
自衛隊内でのクーデター鎮圧、カルト等の制圧に出動する。
通信担当「柳本2尉、新たな情報が入りました。我々の他に嗅ぎ回っている人間が居るとの事です。転送します。」ピッ
ポーン
私の、デスクトップ内に1人の空自パイロットの写真と情報が送られる。
スズ「直枝君…なんでアナタが…」
通信担当「どうかされました?」
スズ「いえ、何でもないわ。この男の情報は?」
通信担当「はい、直枝 理樹2等空尉 307飛行隊所属のパイロットです。3佐の元部下です。以前は小松の306に居たようです。数ヶ月前に異動願い出して307に着任 どうします?マークしますか?」
スズ「いえ、構いません。泳がせましょう。」
通信担当「わかりました。」
直枝君が?彼がこの件に絡んでるの?そんなはずは無いわ…もし、1人で探るような事をしているとしたら…取り返しが付かなくなる前にどうにかしないと…。
続く…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?