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《現代詩》桜いろの涙

まだ少し寒い  風が二人の間をすり抜け
花びらがあなたの肩に滑り落ちるのを
ただ眺めていた
瞳を合わさないように

自分に自信がなくて
季節は残酷に過ぎていった
遠ざかる微笑み
今も思い出すよ

悲しいのは
別れの時じゃない
あなたの気持ちがわからなかった
ひとり佇む桜の樹の下
涙で張り付いた桜の頬


出逢った頃もこうして二人並んで歩いた
はしゃいで舞い散る桜を掴み取ろうと
わざと目の前で
庇ったふりして見ないで

傷つきたくなかった
愛される自信などなくて
弱虫だっただけ
嘘なんかじゃないよ

寂しいのは
こんな終わりじゃなく
自分の気持ちに気付かなかったこと
溺れそうな桜の渦の中
明日の自分を信じたいから


溢れそうな桜いろの涙
明日の自分を信じていこう

そしたらまた必ず会いに行こう




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