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複合性局所疼痛症候群(CRPS)と認知行動療法について

【概要】複合性局所疼痛症候群(CRPS)は強烈な痛みを伴い、患者のQOLに大きな影響を及ぼす病態です。その管理に認知行動療法(CBT)が重要であることを、一例を通じて説明します。40歳代の女性利用者さんは、慢性的な痛みから抑うつ症状を発症し、否定的な思考と回避行動のサイクルに陥りました。CBTのセラピストは、彼女との対話を通じて痛みの経験を理解し、不適応な思考パターンを改善しました。また、行動活性化やリラクゼーションテクニック、マインドフルネスなどを取り入れ、彼女の痛みを管理する力を育てました。定期的なフォローアップセッションを設け、彼女の進行状況を評価し、痛みの管理計画を調整していきました。このようなCBTのアプローチは、CRPSのような複雑な疾患を管理する上で重要な役割を果たします。


【詳細】複合性局所疼痛症候群(CRPS)は、極めて複雑な病態であり、特に強烈な痛みが特徴的となっております。その痛みは、通常、該当の症候群を引き起こした傷害の種類から予測されるものよりもはるかに激しいとされております。さらに、皮膚の色や温度の変化、該当部位の腫れなど、他の症状が伴うことも一般的です。そのため、CRPSの管理は、その持続的な性質と利用者さんのQOLへの大きな影響から、困難を伴うことがしばしばあります。


ある40歳の女性利用者さんの症例は、CRPSの管理における認知行動療法(CBT)の重要な役割を例証しております。彼女は、持続的な痛みにより抑うつ症状を発症し、否定的な思考と回避行動のサイクルに陥り、痛みの知覚と感情的苦痛が増大していました。


セラピーの初期セッションでは、強固な治療関係を築くことと、利用者さんの状態に対する見解を理解することが主な目的でした。セラピストは、「あなたの痛みの経験や、それが日常生活にどのような影響を及ぼしているか、もっとお話しいただけますか?」といった共感的な質問で対話を開始しました。


その後、セラピストは認知再構築のプロセスに取り組み、利用者さんの痛みや抑うつ症状に関連した不適応な思考パターンを改善することを目指しました。例えば、利用者さんは「自分はいつも耐え難い痛みに耐えている」という強い信念を持っていました。その信念に対して、セラピストは異議を唱え、痛みが対処可能であった時期を思い出すよう促しました。


セラピストは、「痛みがいつも耐え難いとおっしゃっていましたね。そのように思えなかった時期を思い出していただけますか?痛みを上手にコントロールできた瞬間を振り返ってみましょう。」とアドバイスしました。


また、セラピストは慢性疼痛利用者さんに一般的な認知の歪みである無力感に対処することも重視しました。これは、自己効力感を利用者さんに伝えることによって行われました。


セラピストは、「痛みに対して自分は無力だという思考を見つけてみましょう。一緒に、痛みをより効果的に管理し、生活のコントロールを取り戻すための戦略を学んでいきましょう。」と語りかけました。


セラピーの重要な部分には、うつ病と対抗するための効果的なテクニックである行動活性化が含まれていました。利用者さんは、痛みのために中断していた活動に再び参加することを勧められ、まずは難易度の低いものから始めて、次第に難易度の高い活動へと取り組んでいきました。


セラピストは、「痛みのために、かつて楽しんでいた活動から離れてしまったのですね。そういった活動を少しずつ再開してみてはいかがでしょうか?そうすることで、痛みから意識を逸らすことも可能となりますよ。」と助言しました。


また、彼女の痛みをより効果的に管理するために、深呼吸や誘導イメージといったリラクゼーションテクニックが導入されました。これらのテクニックは、リラクゼーションを促し、筋肉の緊張を緩和し、痛みの感じ方を和らげる効果があります。


セラピストは、「目を閉じて、平和な場所を想像してみてください。何が見え、何が聞こえ、何が感じられるか。このイメージと共に、ゆっくりと深呼吸をし、吐くたびに緊張をほぐしていきましょう。」と指導しました。


マインドフルネスのエクササイズもセラピーの一部として取り入れられました。これは、利用者さんが自分の痛みを判断せずに観察し、その瞬間その瞬間に集中することを学ぶもので、自己反省の傾向を減らす効果があります。


セラピストは、「マインドフルネスのエクササイズを試してみましょう。息を吸い、息を吐きながら、自分の体に意識を向けてみてください。もし痛みが気になったら、その痛みを判断せずに認め、そっと呼吸に意識を戻してみましょう。」とアドバイスしました。


利用者さんと共に、セラピストは、セラピーで学んだ戦略を用いながら、利用者さん個々の痛みの管理計画を立てました。定期的なフォローアップセッションが設けられ、利用者さんの進行状況を評価し、計画に必要な調整を行っていきました。


セラピストは、「私たちと一緒に、あなたの痛みをより効果的に管理し、気分を改善するための戦略を作り出しました。これらを一貫して続けることが重要です。定期的にセッションを行い、あなたの状況を確認し、必要に応じて計画を調整していくことを考えています。」と提案しました。


以上のような取り組みを通じて、利用者さんは次第に自身の痛みと向き合う力を育て、生活の質を改善するための具体的な手段を身につけることができました。このような認知行動療法のアプローチは、CRPSのような複雑な疾患を管理する上で、極めて重要な役割を果たします。

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