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農業テロ

 みなさんは農業テロという単語を知っているだろうか。農業テロは農業に対してのテロ行為(病原菌をばら撒くなど)を指す。
<実際の例>
・1989年にブラジルのバイーア州でカカオプランテーションにカカオの天敵である天狗巣病を引き起こす菌類が発生した。バイーア州はブラジルのカカオ生産の中心地だった。バイーア州は地理的に他の地域と隔絶しており、菌類もバイーア州に入ってきたことはなかった。プランテーションの環境も味方して病気は瞬く間に広がった。ブラジルは当時世界第二位のチョコレート生産国だった。それが4年後にはチョコレートの純輸入国となった。その現状は今も変わらない。この出来事によって25万人の農園労働者が職を失い、100万人が都市へ移住した。多くの人が自殺した。この出来事はたった六人によって引き起こされた。菌類は彼らによってばら撒かれたのだ。彼らはカカオ生産に関する専門的な知識を持つ技術者だった。この六人はバイーア州でカカオ農園を経営する大農園主たちに憎しみを抱いており、彼らの経済的基盤を奪うためにこのテロをおこなった。だが結局のところ、農園主も苦しんだが一番苦しんだのはカカオ農園で働いていた農園労働者たちだった。彼らは一瞬にして仕事を失ってしまった。

バイーア州の位置

・アメリカは日本の食糧生産を止めるために、日本の田園地帯にいもち病を引き起こす菌を爆撃機を使ってばら撒こうとしていた(いもち病は稲に深刻な被害を与える)。この計画は結局実行されなかった。
<農業テロの今後>
 農業テロは非常に効果的だと思う。病原菌などは簡単に広まってしまう。たとえば鳥インフルを日本中の養鶏場にばら撒けば日本の養鶏産業は壊滅するだろう。アフリカなどの食糧事情が不安定な地域で行えば壊滅的な被害を受けるだろう。そして農地を全て警備するのは物理的に不可能だ。もしテロ組織にとって農業テロは専門的な知識と、テロに用いる菌類を開発する設備があれば、実行が可能と思われる。また、テロが行われた際の被害もとても深刻だ。その点、農業テロへの警戒はもっとされるべきだと思う。

この本にブラジルで農業テロの事例が紹介されていた。本の内容としては現代の農作物の遺伝的多様性の欠如がもたらすリスクについて、警鐘を鳴らすものとなっている。


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