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新規事業の成功率60%を実現したスタークス流 事業開発の要諦

今日も、スタークスの経営について考えている中で、
「これはいいかもしれない!」と思えたものを、備忘録として残していきたいと思います。

今日のテーマは「スタークスの事業開発論」です。

事業開発は、本当に難しいと思います。

実際に経済産業省のデータを調べてみると、中小企業が新規事業を立ち上げ、収益化に成功する確率は14%のようです。

一方でスタークスでは今まで10個の新規事業を立ち上げ、そのうち6事業で収益化に成功することができました。成功率は60%です。

「なぜここまで高い確率で収益化ができたのだろう?」

そんなことを考えていたら、5つのポイントが見えてきました。

もちろん事業開発にある程度の成功法則はありますが、
業界やポジションによって取りうる方法は大きく変わると思います。

なので「事業開発の正解」というよりも一つのパターンとして読んでいただけると嬉しいです。

(参考までに。スタークスはコマース向けのDX支援をしていて、50名くらいの社員がいる会社です。SaaSプロダクトも提供しています)

経営者の方はもちろん、事業責任者の方や、同等のポジションを目指していらっしゃる方にとって、価値のある内容になっていれば嬉しいです。


原則1 顧客起点で考えること

顧客起点・マーケットイン型で考えた方が、事業開発の精度は高いです。
既存顧客の課題やニーズから新しい事業を作るので、当たり前といえば当たり前。

成功率60%という数値も、顧客起点・マーケットイン型で考えているからこそ、実現できていると思います。

顧客起点・マーケットイン型で事業開発を行う際に重要なのが、顧客との信頼関係です。

信頼関係が土台になければ、課題やニーズを教えてもらうことすらできません。その意味で「多くの成長企業と強固な信頼関係を構築できているか」は非常に大事なポイントです。

ただ、注意点が一つあります。

それは顧客の声をプロダクトに盛り込みすぎないことです。
多くの顧客の声をプロダクトに反映させると、徐々にありふれたサービスになっていきます。サービスに「尖り」が無くなっていきます。

無理に1つのプロダクトに集約しようとせず、2つに分けた方が懸命だと思います。少なくとも、スタークスではそうでした。

余談ですが…。
顧客起点を極めることで、非常に高い業績・生産性・利益率を叩き出している会社の一つがキーエンスだと思っています。

キーエンスでは「ニーズカード」という仕組みがあり、
営業パーソンが顧客から新たにニーズを聞き出した数がKPIの一つになっています。

まさにスタークスが目指している世界です。

原則2 顧客の成功KPIつながるプロダクトであること

この原則は企業や事業によって、実践の可否がかなり分かれます。
ただスタークスで事業開発を行うとき「顧客の成功KPIにつながるか?」
意識しているポイントなので、紹介することにしました。

意識している理由はシンプルで、顧客の成功KPI(例えば売上アップ)につながるプロダクトであればあるほど、買ってもらうことができるからです。

多くの企業では、自社の成功KPIを定め、そこに向かって経営の舵取りをしています。シンプルに売上・利益の場合もあれば、MRRやチャーンレートの場合もありますね。

どちらにしろ「我々のプロダクトを導入し、~の形で活用すれば、御社の成功KPI達成に大きく近づきます」と提案されたら、セールスの常套句だと分かっていてもつい気になってしまいます、、、

一方で、顧客の成功KPIとのつながりが薄かったり、不明瞭だったりするプロダクトは買ってもらいにくい。

例えば「このプロダクトを導入すればエンゲージメントが向上します」と言われても、正直あまり興味を示せません……。

(もちろん私がエンゲージメントに課題を感じていたら別ですが、、、)

そういう意味だと、顧客の成功KPIとのつながりが薄いプロダクトは買う対象者も絞られるのでしょう。(ただ労務や会計など”インフラ”としての機能が強いプロダクトはこの限りではないです)

なので新規事業を立ち上げる際は「このプロダクトは顧客の成功KPIにつながるか?」は必ず考慮に入れるのがスタークス流です。

原則3 スケールに必要な希少資源・希少資産の調達に強みを持てること

松下幸之助さんの名言に「利は元(仕入れ)にあり」という言葉があります。

利益は仕入れから生まれるという意味ですが、
単に仕入先を叩いてコストカットすればいい、という意味ではありません。

もちろんコストは意識しつつも、仕入先とは適切な関係性を築くべき、という意味です。

ポイントの3つ目は、まさにこの「仕入れ」に関わるものです。

事業をスケールさせるには、どこかで希少資源・希少資産の調達が必ず必要となります。

そのため、もしこれから立ち上げる事業がスケールフェーズに到達できた際、「希少資源・希少資産は、他社が調達しにくく自社が調達しやすいものか?」を必ず考慮に入れるようにしています。

内容が抽象的なので、もう少し具体的な事例を書いていきます。

私の知り合いに経営コンサルティング事業を提供しているA社があります。

A社は経営者の本質的な課題解決にこだわりを持っていて、素晴らしい会社なのですが……

正直に言うと、ビジネスのスケールという観点で見ると「脆いモデル」と感じることも少なくありませんでした。

A社のモデルでは、スケールのセンターピンとなる「人財」の調達がとても難しいのです。
(注:”調達”という言葉を使いますが人を物のように扱う意図がないことはご留意ください)

経営における本質的な課題を特定し、
経営者と解決に向けて伴走できる人財は簡単には集まりません。

そんな優秀な人の数自体が少ないし、どの企業だって欲しがります。
私だって採用したい!競争率が非常に高いのです。

しかしA社の事業をスケールさせようと思ったら、そんな調達困難な人財を集めるしか方法はありません。これが「希少資源・希少資産の調達」という言葉で表現したかったことです。

(今回の例では人財でしたが、他にも資金、技術力、サプライチェーンなど、様々なパターンが想定できると思います)

ちなみに先ほどのA社が、もしコンサルタントの採用に強みを持ったらどうでしょうか?

私が思うに、大きくスケールしていくはずです。
事業スケールの最重要ピースである、人財の調達に強みを持つことができるからです。

競合他社に対する圧倒的な差別化要因を手に入れている、と言ってもいいかもしれません。

このように考えていくと、事業を立ち上げる前の段階から、
その事業をスケールさせる希少資源・希少資産と、その調達の難易度はある程度予想が付く
のです。

今回の例を一般化して考えると、
「人財の数がスケールの肝となるモデル」×「その人財の採用難易度が高い」という組み合わせはスケールの難易度が本当に高い。

ただ「難易度が高い職種の採用」という、
多くの企業が直面する課題を強みに変えることができれば、一気にスケールできます。

そんなことを新規事業を立ち上げる際に考えています。

重要なのはスケールフェーズになった際に、
肝となる希少資源・希少資産の調達に強みを持てるかどうかです。

原則4 売れれば売れるほどノウハウが貯まるモデルであること

4つ目は非常にシンプルです。

売れれば売れるほどノウハウが貯まるモデルであれば、後発企業に対しても有利な状態で競争することができます。

「売れれば売れるほどノウハウが貯まる」というのは、例えばこんなイメージです。

・豊富な事例が貯まるため、課題に対して解決策を提案するコンサルセールスを実現しやすい
・顧客の声を多く取り入れられるため、プロダクト改善のスピードに強みを持てる
・受注分析・失注分析の精度が高まるため、仕組み化しやすい

一方で「売れれば売れるほどノウハウが貯まらない」モデルは、先行者利益のうまみがどうしても少なくなります。

そうなると勝ち筋としては、後発が参入するまでにマーケットをある程度取り切ってしまう、それまでに確固たるブランドを確立する、そもそも参入障壁を高めるなど。

とにかく打てる手が限られます。

そしてそれが実現できなければ、価格、商品力、資本力で競争するしかありません。要はレッドオーシャンで苦しい戦いを強いられてしまいます。

結果的には後発企業に抜かれる可能性が高くなり、収益性に懸念が残ります。

原則5 新しすぎない 既存の代替品であること

5つ目は少し角度が変わります。

私は新しすぎるプロダクトは売れないと思っています。
どんなに斬新で魅力的なプロダクトを作れたとしても、
新しすぎるものは売れないし、スケールもしない。

より正確に言うとスケールまで時間がかかります。

なぜなら私たち人間は、お金を払ったことが無いものに対しては、どうしても慎重になるからです。一方で一度お金を払ったことがあるものに対しては、そこまで慎重にはなりません。

例えば初めて車を買うときは、慎重になる人が多いのではないでしょうか?

そもそも車は必要か?電車ではダメなのか?ランニングコストはどのくらいか?駐車場は?使用頻度は?新車か中古車か?ボディタイプは?などなど、多くのことを考えると思います。

ですが一度車を買った人は、次に買い替える際そこまで慎重には考えないはずです。逆に次はどの車を買うか、新しくなることにワクワクする人だっていると思います。

分かりやすいようにBtoCの事例で話しましたが、これはBtoBでも同じです。
今まで払ったことがあるものに対しては、予算を取りやすい。
ですが今まで払ったことが無いものに対しては、予算を取りにくい。

なので今まで払ったことがある”機能”の代替品であることが重要です。

「組織営業力を底上げする」という機能は同じだけど実行プロセスにイノベーションがある。
「ハイレイヤーを採用する」という機能は同じだけど、戦略にイノベーションがある。
「ホットリードを獲得する」という機能は同じだけど、チャネルにイノベーションがある。

このように新しいけど新しくない。一見連続的なものに見えるけど、よく見ると非連続的なイノベーションが潜んでいる

このバランスを上手くとることが重要です。

以上の5つが、スタークスの新規事業を考える際の原則です!

もちろん、この5つ以外にも社内のリソースや強み、タイミングなど
本当に色々な事を考えた上で新規事業を立ち上げています。

ですが「事業開発の成功率を飛躍的に高める」という観点では、この5つがセンターピンです。

少しでもこのnoteが役に立っていれば、嬉しいです!


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