原体験いろいろ②

父の会社に入社したばかりの頃、小林家の一族以外は女性しかいない会社だった。

ただ一人、タケウチさんを除いては。

彼は片足がほぼ動かない。

松葉杖無しでは歩けない。

しかし、手元で操作出来る車に乗ってあちこち出掛けるアクティブなおっちゃん。

休憩はいつもダイドーのオリジナルコーヒー。

寒くてもアイスというこだわりがある。

彼の仕事は組立てライン後方での検査の仕事。

キズや汚れなどを見る外観検査ではなく、誤組や欠品、ボタン違いなどの検査をしていた。

それは製造業の組立てラインにおいてそんなに頻繁に起こる不良ではない。

1日中検査していて、なーんにも出ない時のほうが多い。

でもやっぱり人間がやる仕事だから時々不良がある。

数日や数週間に1個とか。

毎日何百台も生産してる中で、いきなりポツンと。

それを見つけちゃうのがタケウチさん。

『どーせ不良なんて流れてこないしな』なんて油断してたら見逃すようなものを水際で防ぐ。

防御率は大魔神 佐々木の如し。

たまに変わって別の人が入った時に限って不良が出て、ユーザーまで流出して、見直しに行く なんてこともある。

まさに守護神だった。

ある日の一服中。

俺『タケウチさん、よくあんなの見つけますよね〜』

タケウチさん『俺は社長に拾ってもらわなきゃ今頃色んなこと諦めて引き篭もってただろうからね〜。恩返ししたくて必死だよ。』

会社の方こそタケウチさんに何度も助けられてるのに。

一服終わりの去り際、『俊ちゃんも社長みたいに立派になんなよ〜』とニヤニヤ言いながら松葉杖で俺を小突く。

守護神 タケウチタカオ の話。

ウチの会社いいな って思ったいくつかある原体験のひとつ。

#原体験

#福祉

#障害者雇用

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?