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データサイエンティストが見るマツキヨココカラ&カンパニーのDX戦略

今回は、本業でデータサイエンティストをやっていることもあり気になっていたマツキヨココカラ&カンパニーのDX戦略について書いてみます。

事業の全体像

まず2023年3月期第2四半期決算説明資料をもとに事業の全体像を見ていきます。グループ全体では第2四半期累計で4650億円の売上があり、営業利益率で見ると6%ほどとなっています。

次に商品別の業績を見ていくと、医薬品が全体の36%ほど、化粧品が33%ほどを占めており、合計で全体の約70%の売上を出していることがわかります。また両方とも利益率も高く重要なセグメントであることが窺えます。

重点戦略:リアル×デジタル

2023年3月期第2四半期決算説明資料では後半に今後のグループ戦略が紹介されており、ここでDXをベースとした「リアル×デジタル」のプラットフォーム構想が紹介されています。

具体的な展開については、決算説明会での説明やその他取り組みからおそらく以下の3点が軸になってくるのではないかと考えています。

  1. DMPを活用したマーケティング・広告

  2. 顧客の購買履歴や購買に至る行動履歴を生かしたプライベートブランドの商品開発

  3. リアル店舗での体験価値向上

DMPを活用したマーケティング・広告

こちらは、インターネット広告業界や他の小売事業者でもこれまで長いこと取り組まれてきたDMPを生かした施策です。

決算説明会でもMatsukiyo Adsの紹介がされており、小売事業者だからこそ最終的なコンバージョン(購入)やそれに至るまでの消費者行動(ECなら他商品の閲覧履歴など)を把握でき、メーカーが入手できない顧客接点の情報を活用した広告配信が行えることが強みになります。

DMPの施策については、月刊マーチャンダイジングさんのnoteに松田崇取締役により説明されており、データサイエンティストをやっている立場からも非常に興味深い内容が語られているので是非ご覧になってください。

プライベートブランドの商品開発

こちらも顧客接点を持っているからこそできる施策と考えられます。
従来Netflixなどのテック企業がユーザーの反応を見ながら商品開発を進めてきたのに対して、マツキヨココカラ&カンパニーのような自主開発商品の調達能力を持つ小売がデータ主導で開発をリードしていくことも当たり前になっていくと考えられます。

リアル店舗での体験価値向上

最後に3点目については、決算説明会では直接述べられていないものの、個人的に中長期で視野に入ってくる要素ではないかと思っています。
そもそも、マツキヨココカラ&カンパニーがこのようなデジタルとリアルを生かしたプラットフォーマー戦略を打ち出している背景には、調剤薬局にも参入してきたAmazonのような巨大ECプラットフォーマーの台頭があります。

決算説明会でも名指しこそしていないものの、リアル店舗を通した顧客接点を生かしてプラットフォーマーと競争していく、ということが述べられています。

特にドラッグストア業界にとって大きなニュースだったのは、Amazonの処方薬販売への参入検討です。販売革新2023年4月号でもリアル店舗を強みとするドラッグストアでは電子処方箋の対応が遅れているため、Amazonの参入は大きな打撃になる可能性が指摘されています。

一方、ドラッグストア成長の鍵として、日本チェーンドラッグストア協会が計画している相談機能を重視した「健康生活拠点」を挙げています。足を運び対面で顧客接点を持てるドラッグストアだからこそ、より丁寧なケアやアドバイスを提供できることが強みになりそうです。

このような定型的な購買はオンラインに移行しオフラインでは体験価値の向上が重要になるという動きはドラッグストアや小売に限らず、映画などのエンタメやスポーツ、ファッションなど様々な場所で今後10年のスタンダードになるのではないでしょうか。

かくいうAmazonも重要顧客との接点を作るリアル店舗「Amazon style」をサンフランシスコで始めており、オンラインの購買データを活用したレコメンデーション等を行っています。

こうした動きに沿うようにマツキヨココカラ&カンパニーでも、マツキヨグループでは2015年から健康やスキンケアなどのアドバイスを行う体験型店舗「matsukiyo LAB」、ココカラグループではファッションやライフスタイルをあわせて提案する新宿三丁目の旗艦店を展開しており、これらのオフライン接点にどれくらいオンラインでの購買データや行動履歴を組み込んでいくことができるのかが焦点になりそうです。例えば、オンラインでの行動履歴や日頃の相談・モニタリングのデータからパーソナライズした商品を提案し、実店舗で体験しながらカウンセリングを受けられる、なども考えられそうです。

まとめ

以上、簡単にマツキヨココカラ&カンパニーのDX戦略を見てきましたが、途中に書いたように「定型的なものはオンラインに移行しオフラインでは体験価値の向上が重要になる」というトレンドは様々な領域でスタンダードになると感じています。

そのため小売やエンタメ業界など従来デジタル化が進んでいなかった業界で、どのようにオフラインのアセットを活かしつつデジタル・オンラインとのシナジーを生んでいくことができるのか、引き続きデータサイエンティストの視点から考えて発信していきたいと思っています。

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