国名(地名)Tシャツの話

海外の方が日本語の書かれたTシャツを着ている姿を、時々見かける。

もちろん、日本人が日本語Tシャツを着ていることもある。それは単に着ているTシャツに書かれている文言が好きなのかもしれないし、もしかするとウケ狙いなのかもしれない。私も「旅に出ます 探さないでください」と書かれたTシャツを買った人物を知っている。

とにもかくにも、日本語に慣れ親しんだ私たちからすれば、それは時に滑稽な姿に見えることがある。中には大きな文字で「日本」と書かれたTシャツもあったりするからだ。だが私は、そんな日本語Tシャツを着る人々の気持ちがとてもよくわかるのである。



私は三年ほど前に世界一周の船旅をした。立ち寄った国の数は20を超えるが、その国々のことは今でもよく覚えている。そして実は私も、その旅の時に何枚か国名(地名)Tシャツを買った。以下がそれである。


写真に載せたものは一部で、これ以外にもNorwayと書かれたロンT、Cubaと書かれたTシャツ、そしてシンガポールの観光名所である「Gardens by the Bay」と書かれたTシャツを持っている。どれもそれぞれの国で買った品物である。

なぜ私はこんなにたくさんのTシャツを買ったのだろうか。別に旅の間に着る服に困っていた訳ではないのだが。それは「その国へ行ったという思い出が欲しかった」という一言に尽きる。

たくさんの国々を旅する中で、形に残る思い出というものは実はそんなに多くないことに気づいた。食べ物は検疫の関係で持ち込めないものがある。小物類は数が多くなるとかさばるし、帰ってきてから使わない物を買ってもしょうがない。ワイン等の飲み物だって、飲んでしまえばそれまでだ。

だが、洋服だとどうだろう。確かに何度も洗濯しているうちにヨレてくるし、汚したり破けることだってあるかもしれない。だがなによりも、「私はこの国に行った」ということがわかりやすい。私は友人にも「これ○○で買ったんだ!」とその服を着ていって自慢したことがある。

またTシャツの値段も様々だったと、それもいい思い出なのだ。例えばメキシコで買ったTシャツは日本円で300円ほどで、キューバで買ったTシャツは1000円ほど、シンガポールで買ったTシャツは2000円ほどだったと、そんなふうに。

海外で買ったTシャツを買ったその国で着ていたら、現地の人からはどう見えるのだろうか。国名Tシャツを着て現地の人々と話したことがないので私にはわからない。だが思いのほか、好意的に見られるかもしれない。

私の国名(地名)Tシャツコレクションはこれ以上増える予定はないが、もしまた海外に行ける時が来たら、その時はまたその国で買ったTシャツを着ていってみたいと思う。

そしてその時がそう遠くないうちに来ることを、私は祈っている。

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