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オンラインだけで企業のマーケティングは完結できるのか?

資生堂が広告費の90%以上をデジタル広告に充てることを発表したニュースは記憶に新しいですが、長引くコロナの影響で広告の予算配分をデジタルに寄せる動きは様々な業界で起きており、それに伴い自社ECの強化や、LTVの最大化に向けてデジタルでブランドをどう強化していくかが話題に上がるようになりました。

参考:Media Innovation『資生堂、2023年に広告媒体費の90%以上をデジタルにシフト…「今のスピードでは駄目だ」』
https://media-innovation.jp/2020/08/19/shiseido-digital-shift/

今回は、オンラインだけで企業のマーケティングが完結できるのかというテーマについて、OOHを中心にオフライン×オンラインでの施策を行うことが多い立場からここ一年の動きの中で分かったことをまとめました。

●結論
最初に、結論を言ってしまうと、ほとんどの業種でオンラインだけでもマーケティングを完結させることは可能ですが、ブランディングや認知獲得なども含めての投資対効果を考えたときにオフラインを組み合わせた方がコスパがよくなるケースが多いです。

●コロナの影響
NRIをはじめとしたいくつかの調査でも示唆が出ておりますが、コロナでネットの利用率、利用時間は飛躍的に伸びました。また、クリックやコンバージョン獲得のための運用型が主流だったデジタル広告にもブランディングを目的に活用できるメディアや広告商品が増えてきております。デジタル広告だけでブランディング含めて十分な数のお客様とコミュニケーションを取ることができるようになったと言えるかと思います。

相対的に外出時間の減少や、通勤・通学頻度の減少、緊急事態宣言等による中止リスク、炎上リスクなどでOOHは効果が薄く、リスクの大きいものとなり、2020年度の広告費は対前年比で25%減少しました。

●オンラインの弱点
コロナの影響で多くのリアルプロモーションがオンライン開催に切り替えられて、オンラインならではの新しい試みもたくさん生まれました。
au 5Gのバーチャル渋谷とかがわかりやすい事例かもしれません。
オンラインは物理的な制約(どこからでも参加できる、会場のキャパシティ)から解放されるという意味では利があるような気もしますが、一方でオンラインでリアルで実現できていた体験価値、ブランドのストーリーを提供しようとするとかなり手の込んだコンテンツやコミュニケーション設計が求められ、それなりの規模で実施しないとコスパが合わないというケースも出てきました。まだ十分なデータが集まっているわけではありませんが、同規模の延べブランド接触時間が達成できていたとしてもリアルでの体験がある場合と100%オンラインでは、その後の態度変容の数値に差が生じています。

●オフラインの利点
オフライン、特にリアルの顧客接点をつくるOOHの利点は、特定の顧客層にしっかりとブランドを伝えられる点です。OOHは、オペレーションコストがかかるため、テレビやデジタル広告と比べるとCPMが割高ではありますが、特定の顧客層にブランドを伝えるという観点で見ると、特定の顧客層に対するブランド接触時間のコスト効率は、ブランディングに用いられるデジタル広告と比較しても大差ない数値になることも多いです。また、SNSでの拡散やPRなどでメディアに取り上げられるなどの副次的な効果も期待できます。
OOHはメディアごとのオーディエンス数がそこまで大きくはないので、ある程度のボリュームが必要になってくる場合はテレビやデジタル広告を先に検討する必要がありますが、狙いたい顧客層が一定数含まれるエリアがある場合はOOHはプランニングに加えておくと、投資対効果の改善が期待できます。

●まとめ
ブランディングや認知獲得の強化にある程度予算をかける際にすべてをオンラインに投下するよりも一部オフラインを混ぜることには、副次的な効果も加味すると利があるケースが多いです。ただ、OOHなどのオフライン広告にもブランディングに向いている媒体とそうではないものがありますので、メディアプランニングやSNS等での副次的な効果を得るためのクリエイティブ、企画の設計はポイントになってきます。

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