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ひねくれてからの再挑戦|知念杏珠さん

海外、観光。

これは、沖縄に住む私たちにとって身近な存在のもの。

そして、この1年半で少し遠のいたものでもあります。

今回インタビューさせていただいた知念さんにとっても、大学生で挑戦してきたものであり、大きな壁にぶつかったものでした。

知念さんがその壁をどう捉え、乗り越えようとしているのかを感じながら読んでいただけると嬉しいです。

↓知念さんFacebook


【経歴】
知念 杏珠(ちねん あんじゅ)
琉球大学 観光産業科学部観光科学科 4年
Hult Prize at Ryudai 代表
Startup Lab Lagoon インターン
過去にはTOMODACHIプログラムや海外職場体験、トビタテ!留学JAPANなどで海外にも挑戦


観光と海外に挑戦した大学生前半

ーーー本日は取材させていただき、ありがとうございます。大学生になってから、様々な活動をされてきたと思いますが、最初のきっかけはなんだったんですか?

元々は観光の学部に進学したこともあって、観光系のプログラムで地域と携わっていたところがスタートでしたね。

北谷町での音楽と食をテーマにしたイベントや宮古島での町おこしで、企画とSNS周りの集客のお手伝いをさせていただきました。

それから大学生になる前から海外に興味があったので、海外でインターンシップができる「海外職場体験」にチャレンジしたのも一つのきっかけですね。

その時はベトナムに行ったんですが、道にバイクが溢れていたり、食べ物や言葉が全然違って。日本との差にすごくワクワクしました。

その経験で海外に対してさらに興味が湧いたのと、観光に対して疑問を持つようになっていったので、それを考えるためにトビタテ!留学JAPANに参加しようと考えるようになりました。


ーーー観光に疑問というのは、具体的にどういうことですか?

コンベンションビューロの方へのインタビューで知ったのですが、観光事業が補助金で成り立っていて、予算面で持続的ではないそうなんですよね。

自治体の観光業に携わったときも、成果に対する評価が曖昧で、イベントが次に続かなかったり改善が見られなかったりと、一時的なもので終わってしまっているなと感じました。

それから、宮古島で島民の方とお話ししているときに「ホテルは建つけど、島にお金が入ってきている感じがしない」と聞いたんですよね。

それで、本当に観光産業で県民の暮らしは豊かになっているのかな?と疑問に思うようになりました。


観光はたくさんの産業をまたいだものだと感じています。例えば農業体験や農産物を活かしたお土産もあれば、テーマパークが観光地になることもあるので。

観光は「その地域を見る」ものなので、行政と地域住民との調整が必要不可欠で、その部分にも課題があるのかな、と感じていました。

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ーーーなるほど。その課題感がトビタテの参加につながっていったんですね?

そうです。

トビタテは国から留学の費用が出る代わりに、留学の目的や計画を明確にする必要があるプログラムなんです。

私はそれを使って、サンフランシスコに行きました。観光協会のでき方が沖縄と違っていておもしろいんですよね。

サンフランシスコはシリコンバレーもある場所で、元々いろんな学会が開かれていました。同時に、その学会に参加する人のためのホテルもたくさん建っていったそうです。

そしてそのホテルの関係者がさらに利用者を増やすために、サンフランシスコを観光地として盛り上げられないかと考えた。これが、観光協会が立ち上がった経緯らしいです。

そのため、サンフランシスコの観光協会はホテルから運営資金をもらっています。

どこからもらって、どう使うお金かが明確なので、お金に対する説明責任も出てきますよね。

その構造がうまくいっていると聞いたので、サンフランシスコに興味を持って、留学することにしました。

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ーーーなるほど、おもしろいですね。海外に挑戦するって、すごくハードルが高くないですか?

高かったですね。笑

でも友達に誘ってもらったり、友達に背中を押してもらったりして身近になっていきましたね。


ーーーなるほど!今ハードルの高い挑戦をしようか悩んでいる人がいたら、なんてアドバイスしますか?

私の場合は周りにすごく活発な子が多かったので…、もしできるなら、挑戦的な人が多い環境に身を置くことはおすすめですね。

それから、やりたいことはとにかく口に出して応援してもらうことが大切だとも思っています。

周りに言いまくっていると「こないだ言ってたアレ、どうなったの?」って聞かれるので、やらざるを得なくなってくるんですよね。

いい意味で周りからプレッシャーをかけてもらえます。

それにいろんな人を巻き込んで挑戦すると、すごく応援してくれる人もいるんですよね。

実はトビタテに参加するとき、「現地でインターンします!」って宣言して受かったのに、肝心のインターン先が全然見つからなくて。結局3ヶ月出発を遅らせて、3ヶ月間電話をかけまくったんですよ。

その時に、琉球大学の教育支援課の方にもめちゃくちゃ相談していて。やっとの思いでインターン先を見つけた時に、教育支援課の方が泣いてくださって。

助けていただいてすごくありがたかったし、泣くほど親身になってくれたのも嬉しかったです。

そもそもトビタテに挑戦するときも、いろんな人に背中を押してもらって参加を申し込んでいたりして。

「やりたいことに飛び込めば助けてくれる人はいる」ってその時感じたし、今でもそうやって自分に言い聞かせていろんなことに挑戦していますね。

やってみないとわからないことはたくさんあるから、まずはやってみることが大切だと思います。

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コロナと新しい挑戦

ーーー留学に行ってみてどうでしたか?

留学に行く前にもコンベンションビューロで事前インターンをさせていただきました。

事前のインターンも留学中も、観光のことを学び、考えることができてすごく楽しかったです。

ただその中で感じたのは、「『観光でその地域をよくする』のはすごく難しい」ってことですね。

地場産業がしっかりしていて、あくまで観光はプラスアルファなんじゃないかなと思いました。


ーーーなるほど。

そんな中、コロナが蔓延してしまって。

本当は半年の予定だった留学が、3ヶ月に縮まってしまったんですよ。

ドイツにも行く予定だったんですけど、到着して2週間で帰国することになって。

海外に行くどころじゃない、観光どころじゃない事態ですから。

すごくひねくれて帰ってきました。笑

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ーーーひねくれたんですね。笑 今のHult Prizeの活動にはどのように繋がっていったんですか?

当時いろいろ相談していた先輩に、ひねくれていた想いを打ち明けたら「一緒にHult Prize at Ryudaiの立ち上げをしよう!」って誘われたんです。

そのお誘いは、私にとっても魅力的なものでした。

実はサンフランシスコにいった時に、同世代の日本人たちと一緒にビジネスコンテストに参加したんです。

でも、彼らの話している日本語が全然わからなくて。笑

私より年下の子でも自分で会社持っていたり、事業を成長させて他の会社に事業を売っていたりするすごい人たちばっかりで、ついていけなかったんですよね。

その時は、その子たちに必死についていきながらいろいろ学んでいたんですが、やっぱり県外と沖縄の刺激の差みたいなものを感じてしまって。

Hult Prizeって全国にあるビジネスコンテストを開催する団体なんです。

だから、Hult Prizeに関わっていればあの人たちと同じようなことができるかも、県外との刺激の差をなくしていけるかも、って思いました。

それで去年は副代表として、立ち上げから携わっていました。


ーーーなるほど。現在は代表も務められていますね。

そうですね。でも元々代表するつもりはなかったんですよ。

私自身、引っ張っていくよりついていく方が得意だと思っていたので。だから前の代表が卒業する直前の3月までずっと断っていたんです。

でも「Taker(受け取る人)からGiver(与える人)にならないと」って言われたんですよね。

私はそれまで団体に所属して活動することだけで満足していました。

でも確かに、人に与えるって難しいし、その分やりがいや見える景色が違うんじゃないかって思うとワクワクして。

それに、Hult Prizeを失くしたくなかったのもあって、代表になりました。


ーーー実際、代表になって変わったことはありますか?

それまではイベント参加者をどう楽しませるかって外部のことだけに集中していたんですが、今は内部にも目を向けるようになりましたね。

去年のメンバーから2名残って、新しく増えたメンバーもいて、その中でチームとして固まっていくことにすごく楽しさを感じています。

これは代表にならないと感じられなかったんじゃないかなと思いますね。

あとは、ミーティングのたびに「団体としてもっと良くなるために今日は何を話そう」って考えるようになりましたね。

これも副代表の時は全然考えていませんでした。

団体に入っている以上、みんなリーダーくらいの責任感は持ってやってくれていると思うし、私もそう思いながらやっていました。

でも、本当にならないとわからないこともあるんだって学びましたね。

まさか前代表が、ミーティング前にこんなことを考えていたなんて思わなかったですもん。


ーーーその気持ち、よくわかります笑 先ほど「引っ張っていくのは苦手なタイプ」とおっしゃっていましたが、これまで苦手なことはどう考えて乗り越えてきましたか?

私、みんなのいいところを見ていると「自分もいいところ出さなきゃ!」って思うんですよね。だから頑張れるっていうか。

ちょっと不思議な例えなんですけど、私のいいところってケチャップみたいな感じだと思っていて。

周りが頑張っていいところを出している、その姿がプレッシャーになって、私も頑張らなきゃって押し出されて出ちゃう、みたいな笑

私は、自分に自信がない方なんだと思います。

だからこそ、ダメなところをなくしたくて挑戦するし、挑戦することで変われて自信が持てるって信じるから頑張れている気がします。

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土地に縛られない世の中を

ーーー知念さんにとって沖縄の好きなところってどんなところですか?

一つは、みんなで仲良くなりやすいところですね。

以前TOMODACHIプログラムに参加したことがあるんです。TOMODACHIプログラムはリーダーシップ研修で、地元で何度か研修して、選ばれた人はアメリカにも行けるものになっているんです。

他地域の学生は研修が終わったらすぐに解散することも多かったらしいんですが、沖縄のチームは地元での研修が終わった後も一緒にスタバに行ったり仲良くしていて。

だから、アメリカに行った時でもよく一緒にいたので、周りの人たちに「沖縄の子たちは仲がいいね」って言われました。

集まり好き?元から仲良くしようと思っている?なんて表現すればいいのかわからないですけど、そうやってすぐ仲良くなれるのはいいことだなって思いますね。

それから、県外に比べて社会課題に対して敏感みたいなんですよね。

東京では、ビジネスの流行で言うと「スキマ時間の活用」とか「短時間でできる」みたいなのが人気らしいんです。

でも沖縄は、環境とか貧困とか社会課題を解決するようなビジネスに興味を持って起業する人がたくさんいて。

社会課題が身近にあるってことなのかもしれないですけど、それを自分ごと化して解決していこうとしているのは素敵だと思います。


ーーー最後に、知念さんが今後どうしていきたいかについて教えてください。

土地に縛られたくないなって思っていますね。

サンフランシスコで県外の同世代にあって、刺激の差を感じました。

でもこれって「沖縄」とか「県外」とか、その土地に縛られて考えているからだとも思うんですよね。

県内とか県外とかで刺激やチャンスに差があるのがすごく嫌で、だから土地に縛られたくないし、縛られない世の中にしていきたいと思います。

今のインターン先の代表が「やりたいことの100分の1から始めるといい」と言っていたんですよ。

Hult Prizeは沖縄と県外の差をなくすための一歩目だと思っていますし、就職予定の会社も、地方に雇用を生み出すことや消費者の行動変容によって世の中を良くすることを大事にしているところなんです。

なので、少しずつ自分のやりたいことが叶えられているような気もします。

ーーーやりたいことの100分の1から。素敵な考え方ですね。本日はありがとうございました。

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↓知念さんのFacebook


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知念さんのInstagramはコチラ

おわりに

ここまで読んで下さり、ありがとうございました。

コロナやその他の理由で、やりたいこと・やってみたかったことに手が届かなくなってしまった人もいるんじゃないかと思います。

そんな中でも、知念さんは周りに思いを打ち明け、視点を変え、これまでに感じたモヤモヤを解消する方向へと進むことに決めました。

やりたいことに挑戦できなくなってしまったことを、文句を言って手放してしまうことは簡単です。

でも、本当に自分がしたかったこと、挑戦の中で気づいたこと、なぜそれにこだわっていたのか、そうやって視点を変えていけば、できることはまだあるはずです。

がんばっていれば、応援してくれる人も増えるし、成長できる。いつかそれが、諦めたことへの道を作ってくれるかもしれません。

諦めそうなことがあるなら、視点を変えて、一歩踏み出してみてください。

with OKINAWAは、沖縄のために活動されている方や沖縄で活躍されている方へのインタビューを通して、沖縄の学生たちがもっと沖縄を好きになってもらえるよう活動しています。

ライター:さむ


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