見出し画像

浅野文直氏のYoutube収益に関する3つの疑問

先日、川崎市議選で7回目の当選を果たした浅野文直氏のYoutubeライブのアーカイブ動画を視聴していたら、Youtube収益の取り扱いに関して、非常に気になる発言をしていました。

浅野氏はどうやら、議員活動としてではなく、個人事業としてYoutubeチャンネルの運営をしているようです。

以下は2022年12月21日と、2023年4月9日に浅野氏のYoutubeチャンネルに公開されたYoutubeライブでの発言の書き起こしになります。

2022年12月21のYoutubeライブでの発言

鈴木達郎氏の発言
それからですね、「Super Chatで得た収益は報告書に記載して下さい。」ということなんで。これはしっかり。

※ Super ChatとはYoutubeの投げ銭機能のことです。

浅野文直氏の発言
はい、これちょっと私も初めて、本当に今日初めてなので、選挙管理委員会とも相談して、本当にどういう風に、きちんと対応したらよいのか、間違いないように行なっていきたいと思いますし、スタッフや逆に今までそういうことをやっている先輩の実例とかをですね、調べて、どういう風に報告したりしてるのか、よく研究もさせて頂いて、皆さまに間違いないように対応させて頂きたいと思います。

「調査報告第5弾!Colabo vs 暇空茜 ついに川崎市議会へ」の00:38:33〜の発言

2023年4月9日のYoutubeライブでの発言

浅野文直氏の発言
どこかでこういう収益の件もお話しする機会があればしようと思ってますけど、以前のライブで最初の頃のライブですかね、分からないのでよく選管と相談してということで、私の政治団体に運営を切り替えてですね、政治団体の方の収益にしようかという話をしていたんですけども、選管とよくよく話して、総務省と話をして頂いたら、やはりそれは中々難しいということで、それはもう個人事業主として、このYoutubeはやった方が良いという結論で今はやらせて頂いています。

で、これは当然、自身の収益として来年の申告には出させて頂きますし、だからといって、すごい金額が入って私が潤うという訳ではなくて、編集をしている方々にですね、お支払いさせて頂いたりという点で凄く有難いということでですね、これからもこういう発信をしていく、本当に助けとして感謝しているところです。

「浅野のだらだら配信ライブ」01:50:00~の発言

上記の通り、浅野氏によると、浅野氏のYoutubeチャンネルで発生する収益は自身が関連する政治団体で受け取るのではなく、浅野氏個人が受け取るということのようです。

また、浅野氏はYoutubeチャンネルの運営を個人事業として行っているとのことです。

これはつまり、浅野氏は自身のYoutubeチャンネルは、あくまで個人事業として運営しているものであり、議員活動の一環として運営しているものではないことを公言しているものだと捉えても差し支えないと思います。

3つの疑問

ここで大きく分けて3つの疑問が生じてきます。

  1. 不正な個人献金にならないのか? - 浅野氏のYoutubeチャンネルでは、「Super Chat」や「Super Thanks」などの、視聴者が任意の金額をチャンネル運営者にプレゼント出来る機能による収益が発生しているが、こういった収益の受け取りは、政治資金規正法で原則として禁止されている個人献金の受け取りに該当しないのか?

  2. 不正な資金流用にならないのか? - 浅野氏が自身の政治活動の一環として運営しているYoutubeチャンネルで発生する諸経費に、もし仮に政務活動費等の公金や政治団体の政治資金が用いられていた場合、それは不正な資金流用にならないのか?

  3. 不当な議員報酬の受給にならないのか? - もし仮に個人事業として行っている浅野氏のYoutube活動を川崎市が議員活動であると誤認し、議員報酬を浅野氏に支給していたとしたならば、それは浅野氏の不当な議員報酬の受給にならないのか?

一応、浅野氏の先のYoutubeライブ上での発言を確認する限り、浅野氏は選挙管理委員会と話をしたり、人を介して総務省と話をして貰ったりした結果、政治団体としてYoutube収益を受け取ることは難しいという認識に浅野氏が至ったということは読み取れます。

しかしながら、浅野氏がYoutube収益を個人事業の収益として受け取ることであったり、浅野氏が自身の政治活動の一環として利用しているYoutubeチャンネルを個人事業として運営することに問題がないとする見解を、選挙管理委員会や総務省から伝えられたのかどうかまでは、先の浅野氏の発言からは読み取ることは出来ません。

そこで私は、まず、浅野氏のYoutubeチャンネルから確認出来る事実関係の調査と本件に関する法令を確認してみました。

そして、それらを終えた上で、私と知人で協力をし「幾つかの選挙管理委員会事務局」と「総務省の政治資金課」に電話問い合わせを行ない、問い合わせを行なった選挙管理委員会事務局と総務省の見解を伺ってみました。

本記事の流れを先にここで説明しておくと、以下の通りになります。

  • 事実関係1:Youtubeチャンネルでのキャッシュポイント

  • 事実関係2:Youtubeチャンネルの内容

  • 疑問1:不正な個人献金にならないのか?

  • 疑問2:不正な資金流用にならないのか?

  • 疑問3:不当な議員報酬の受給にならないのか?

Youtubeチャンネルでのキャッシュポイント

まず初めに、浅野氏のYoutubeでのキャッシュポイントを確認していきます。

浅野氏のYoutubeチャンネルに投稿されている動画とYoutubeライブのアーカイブ動画を確認すると、浅野氏のYoutubeチャンネルでは以下の3つがYoutube上のキャッシュポイントとして存在していることが分かります。

  1. Super Chatによる収益

  2. Super Thanksによる収益

  3. Youtube広告による収益

1. Super Chatによる収益

「浅野のだらだら配信ライブ」

まず、1つ目の「Super Chat」ですが、これは浅野氏がYoutubeライブを行っている最中に、そのライブ配信の視聴者が任意の金額を、チャンネル運営者である浅野氏に投げ銭出来るというYoutubeの機能になります。

上のキャプチャー画像の最下部を見ると確認できる通り、浅野氏がYoutubeライブ配信にて、複数の方からスパチャと呼ばれる投げ銭を受け取っていることが分かります。

浅野氏は2023年5月16日時点において、過去に3回、ライブ配信をしており、それら全てで「Super Chat」による収益が発生していることが確認出来ております。

2. Super Thanksによる収益

「浅野のだらだら配信ライブ」

次に、2つ目の「Super Thanks」ですが、これは浅野氏のYoutubeチャンネルに投稿された動画に対して、その動画の視聴者が任意の金額を、チャンネル運営者である浅野氏に投げ銭出来るというYoutubeの機能になります。

上のキャプチャー画像の右下に「Thanks」ボタンがありますが、このボタンをYoutubeにログイン中に押すと任意の金額を選択して、投げ銭をすることが出来ます。

浅野氏は2023年5月16日時点において、先のYoutubeライブ配信のアーカイブ動画3本を含め、計54本の動画をYoutubeに投稿しており、それら全てで「Super Thanks」による収益受け取りの設定が有効化されていることが確認出来ます。

※ 実際に「Super Thanks」機能を通して、どのくらいの収益が発生しているかは、「Super Chat」と異なり、投げ銭された金額が可視化されていない為、不明です。

3. Youtube広告による収益

「浅野のだらだら配信ライブ」

そして、最後の3つ目の「Youtube広告」ですが、これはYoutube側が動画の視聴者が興味を持ちそうな広告を自動で選び、Youtubeに投稿されている動画に表示するものなので、先の「Super Chat」や「Super Thanks」とは異なり、動画やライブ配信の視聴者がYoutubeチャンネル運営者に任意の金銭を提供するものではありません。

ちなみに、「Youtube広告による収益」に関しては、2021年6月1日にYoutubeの利用規約が変更になったことにより、チャンネル管理者が広告による収益設定を有効化していない場合であっても、Youtubeに投稿された動画上に広告が自動で表示される仕様になりました。そのため、浅野氏のYoutubeチャンネルに投稿されている動画上に広告が表示されるからといって、直ちに浅野氏がYoutube広告による収益化を実際にしているかどうかは分かりません。

Youtubeチャンネルの内容

次に浅野氏がYoutubeに投稿している動画の内容や、浅野氏が過去に配信したYoutubeライブの内容を確認していきます。

結論から言うと、浅野氏は政治活動の一環としてYoutubeチャンネルの運営を行っていることは明らかです。

動画の内容

浅野文直ちゃんねるの動画一覧画面

これらの動画一覧画面で確認出来る動画のサムネイルは、浅野文直氏の市政報告書上にも掲載されていることが確認出来ます。

Twitter上で@osadannaにより投稿された画像(2023年4月25日)
浅野文直ちゃんねるに投稿された動画 「市議の日常:day5 選挙演説!」の一コマ

また、浅野氏は選挙演説の様子を映像に収めた動画もYoutubeに投稿しております。

ライブ配信の内容

浅野文直ちゃんねるのライブ配信アーカイブ一覧画面

Youtubeのライブ配信では、「Colabo 調査報告」シリーズとして、浅野氏が市議会で行った一般質問に関する報告をライブで行ったり、視聴者からの質問に答えるなどを行ったり、また、川崎市議会議員選挙の開票結果をライブで視聴者と見届けるなどの配信を行っておりました。

浅野文直ちゃんねるで公開された「浅野のだらだら配信ライブ」の一コマ

小括

このように、浅野氏はYoutubeを政治活動の一環として活用していることが分かります。議員としてYoutubeを活用し、自身の政治活動に関することを発信すること自体には全く問題はありません。

ただし、これが議員活動ではなく、個人事業として行われているものだとすると、冒頭で述べたような3つの疑問が生じて来ます。

1つ目の疑問: 「個人献金に該当しないのか?」

1つ目の疑問は、浅野氏のYoutubeチャンネルで発生する一部の収益は、個人献金に該当しないのかというものです。

個人献金とは?

まず、政治資金規正法で原則として禁止されている個人献金とは何であるかを、前提となる情報の共有とともに説明していきます。

政治資金規正法の第四条では「寄附」の定義が記されています。

第四条 
(中略)
 この法律において「寄附」とは、金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付で、党費又は会費その他債務の履行としてされるもの以外のものをいう。
 この法律において「政治活動に関する寄附」とは、政治団体に対してされる寄附又は公職の候補者の政治活動(選挙運動を含む。)に関してされる寄附をいう。

政治資金規正法 | e-Gov法令検索

この定義に基づけば、先に説明したYoutubeの「Super Chat」と「Super Thanks」は、視聴者がYoutubeチャンネル運営者に対して、任意の額の金銭を供与出来る機能ですので、この機能によって発生した収益は政治資金規正法上の「寄附」に該当すると言えるはずです。

次に個人献金の説明ですが、これは一言でいうならば、政治家個人への寄附のことであり、現在の日本では、個人献金は原則として禁止されていますが、それが認められる例外は存在します。これに関連する政治資金規正法の条文は以下の通りです。

(公職の候補者の政治活動に関する寄附の禁止)
第二十一条の二

 何人も、公職の候補者の政治活動(選挙運動を除く。)に関して寄附(金銭等によるものに限るものとし、政治団体に対するものを除く。)をしてはならない。
 前項の規定は、政党がする寄附については、適用しない。

政治資金規正法 | e-Gov法令検索

つまり、公職の候補者の選挙運動を除く政治活動に関して、金銭等による寄附をしてはならないといった内容です。

ここでいう「公職の候補者」とは、以下の政治資金規正法の条文の通り、候補者として届出があったものや候補者となろうとする者だけではなく、公職選挙法第三条で定義されている「公職」にある者も含みます。

(定義等)
第三条
(中略)
4 
この法律において「公職の候補者」とは、公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)第八十六条の規定により候補者として届出があつた者、同法第八十六条の二若しくは第八十六条の三の規定による届出により候補者となつた者又は同法第八十六条の四の規定により候補者として届出があつた者(当該候補者となろうとする者及び同法第三条に規定する公職にある者を含む。)をいう。

政治資金規正法 | e-Gov法令検索

(公職の定義)
第三条
 この法律において「公職」とは、衆議院議員、参議院議員並びに地方公共団体の議会の議員及び長の職をいう。

公職選挙法

つまり、浅野氏は上記で定義されている「公職の候補者」に該当する者になります。

また、個人献金が例外的に認められる「選挙活動」に関しての寄附ですが、私はてっきり、選挙活動期間中に行われる個人献金は選挙活動に関する寄附に当たり、選挙活動期間外に行われる個人献金は選挙活動に関する寄附に当たらないのだと思っていました。というのも、Web上で調べ物をしていた際に、そういった解説が複数のサイトでされていたからです。

しかし、選挙管理委員会に問い合わせした時に担当者から返って来た回答によれば、それは選挙期間中か選挙期間外かによって決まるのではなく、寄附の目的が選挙に関するものか否かによって決まるとのことでした。

そして、例えば、これは浅野氏のケースに限らず一般論としてですが、選挙期間後に当選祝いを当選した議員に寄附した人がいたとしても、それが選挙期間後の寄附であるからといって、直ちに違法な個人献金とは判断されず、あくまで、最終的に寄附をした側、寄附をされた側の実態調査により、選挙活動に関するものであるかどうかが判断されるということでした。

※ ちなみに同様の回答を複数の選挙管理委員会から頂きました。

浅野氏がYoutubeチャンネルを個人事業にした理由

ところで浅野氏は2023年4月9日のライブ配信において、以下の通り、元々はYoutubeチャンネルの運営を政治団体に切り替えることを検討していたが、それが出来ず、個人事業として運営することになったと説明していました。

どこかでこういう収益の件もお話しする機会があればしようと思ってますけど、以前のライブで最初の頃のライブですかね、分からないのでよく選管と相談してということで、私の政治団体に運営を切り替えてですね、政治団体の方の収益にしようかという話をしていたんですけども、選管とよくよく話して、総務省と話をして頂いたら、やはりそれは中々難しいということで、それはもう個人事業主として、このYoutubeはやった方が良いという結論で今はやらせて頂いています。

「浅野のだらだら配信ライブ」01:50:00~の発言

なぜ、浅野氏は政治団体に運営を切り替えることを検討していたのでしょうか?

また、なぜ、結果的に政治団体に運営を切り替えることが出来なかったのでしょうか?

あくまでこれは私の推測になりますが、浅野氏がYoutubeチャンネルの運営を自身の政治団体に切り替えることを検討した理由は、前述の通り、浅野氏が「公職の候補者」として、「Super Chat」や「Super Thanks」による寄附を受け取ってしまうと、選挙活動に関する寄附だけしか受け取ることが出来なくなってしまうからでしょう。

その為、選挙活動に関する寄附だけに限定されず、政治活動に関する寄附全般を、政治資金規正法に違反することなく受け取れるようにするために、浅野氏は自身の政治団体としてYoutubeチャンネルの収益を受け取れるようにしたかったのだと思われます。

そして、浅野氏が政治団体としてYoutubeチャンネルを運営することを断念した理由は、おそらく、「Super Chat」や「Super Thanks」の機能は、視聴者が匿名でYoutubeチャンネル運営者に対して、任意の金銭を提供出来る機能であるため、そういった匿名による寄附を浅野氏の政治団体が受け取ってしまうと、政治資金規正法に違反してしまうからでしょう。

これに関連する政治資金法の条文は以下の通りです。

第二十二条の六
1 何人も、本人の名義以外の名義又は匿名で、政治活動に関する寄附をしてはならない。
 前項及び第四項の規定(匿名寄附の禁止に係る部分に限る。)は、街頭又は一般に公開される演説会若しくは集会の会場において政党又は政治資金団体に対してする寄附でその金額が千円以下のものについては、適用しない。
3 何人も、第一項の規定に違反してされる寄附を受けてはならない。
 第一項の寄附に係る金銭又は物品の提供があつたときは、当該金銭又は物品の所有権は、国庫に帰属するものとし、その保管者は、政令で定めるところにより、速やかにこれを国庫に納付する手続をとらなければならない。
 前項に規定する国庫への納付に関する事務は、政令で定めるところにより、都道府県知事が行うこととする。

政治資金規正法 | e-Gov法令検索

また、上記に違反した場合の罰則規定は以下の通りです。(※ 以下の「次の各号の一に該当する」とは、「次の各号のいずれかに該当する」という意味です)

第二十六条の二
次の各号の一に該当する者は、三年以下の禁錮こ又は五十万円以下の罰金に処する。
 第二十二条の三第一項又は第二項(これらの規定を同条第四項において準用する場合を含む。)の規定に違反して寄附をした会社その他の法人の役職員として当該違反行為をした者
 第二十二条の三第五項の規定に違反して寄附をすることを勧誘し、又は要求した者(団体にあつては、その役職員又は構成員として当該違反行為をした者)
三 第二十二条の三第六項、第二十二条の五第一項又は第二十二条の六第三項の規定に違反して寄附を受けた者(団体にあつては、その役職員又は構成員として当該違反行為をした者)

政治資金規正法 | e-Gov法令検索

他にも政治資金規制法では、外国人からの献金を受け取ることを禁止することが定められていたり、規定の条件に該当する法人からの献金を禁止すること等が定められていたりします。

また、政治資金規制法では反社会勢力による献金受付を禁止する規定はないものの、一般常識として、反社会勢力からの献金を受け取ることは好ましくありません。

しかし、Youtubeの「Super Chat」や「Super Thanks」では、視聴者が匿名で任意の金額をYoutubeチャンネル運営者に提供出来るということと、Youtubeを間に挟むということにより、収益を受け取る側はYoutubeからまとめて支払いを受け取ることになることから、先に挙げたような政治資金規正法の禁止事項に抵触してしまうことになります。

その為、こういった理由から、浅野氏は自身の政治団体としてYoutubeチャンネルを運営することは断念せざるを得ず、あくまで個人事業として運営するようになったのだと思われます。

個人事業として納税しさえすれば問題ないのか?

ここまでの話を踏まえると、Youtubeの「Super Chat」や「Super Thanks」の機能によって発生した収益を、浅野氏の政治団体、もしくは、「公職」にある浅野氏が「寄附」として受け取らず、あくまで個人事業の収益として受け取り、それを確定申告し適切に納税していれば問題がないように思われます。

とはいえ、選挙管理委員会に問い合わせてみないと分からないので、私と私の協力者で幾つかの選挙管理委員会に電話問い合わせを行ってみました。

まず、1つ目の選挙管理委員会は、浅野氏の行為は政治資金規正法の第二十二条に抵触し、罪に問われる可能性が高いという大胆な見解を、担当者の方からお答え頂きました。

これは問い合わせ時に直ぐに回答頂いた見解ではなく、一旦、私が伝えた情報をもとに、先方で確認を行ってから折り返しの電話を頂けるということで、一時間ほど折り返しの電話を待った上で頂いた回答となります。

ただし、担当者の方が言うには、この見解は私が問い合わせを行なった選挙管理委員会事務局内部の見解であって、他の選挙管理委員会事務局に問い合わせると、違う見解が返ってくる可能性はあるかもしれないということでした。また、最終的には管轄の警察が実態を調査して判断することになるとのことでした。

2つ目の選挙管理委員会の回答では、個人献金と判断される可能性はあるとは述べていたものの、その可能性がどの程度なのかについて言及することはなく、やはり、最終的には警察が実態を調査して判断することになるとのことでした。

3つ目の選挙管理委員会の回答は、総務省の政治資金課に問い合わせることを勧められたので、総務省の政治資金課に問い合わせをしたところ、総務省は個別のケースに関して見解を述べる立場ではないというゼロ回答を頂きました。

いずれにせよ、共通して言えることは、最終的には警察が実態を調査してみないと分からないということでした。

もちろん、浅野氏自身は選挙管理委員会と話をしたり、人を介して総務省と話をして貰ったりしたりはしていたようなので、それらの人から浅野氏は、自身のYoutubeチャンネルの収益を個人事業の収益として受け取っても全く問題がないという、私が聴いたものとは異なる見解を伝えられていた可能性は考えられます。

ちなみに個人的な見解としては、「Super Chat」や「Super Thanks」などの機能で用いて、浅野氏に金銭の提供をする人が、個人献金による寄付控除を求めることはないと思いますし、浅野氏側も個人事業として確定申告を行い適切に納税しさえすれば、国が損害を受けることにはならなそうなので、特に問題にはならないのではないかと思ってはいます。

とはいえ、もし万が一にも、浅野氏が個人事業として運営しているYoutubeに係る諸経費が、政務活動費等の公金から一部でも賄われていたと仮定するならば、その場合は個人事業として受け取っている「Super Chat」や「Super Thanks」でのYoutube収益が、個人献金として見做される可能性も高まるような気は致します。

2つ目の疑問: 不正な資金流用にならないのか?

2つ目の疑問は、浅野氏が自身の政治活動の一環として運営しているYoutubeチャンネルにおいて発生する諸経費に、もし仮に、政務活動費や政治団体の政治資金が用いられていた場合、公金や政治資金の流用問題にならないのかというものです。

これはあくまで仮定の話なので、全て浅野氏個人の自費で賄われているのであれば、全く問題無いことを、注意書きとして、先にここで記しておきたいと思います。

公金や政治資金の流用問題にならないのか?

Youtubeチャンネルの運営で発生するであろう諸経費を考えてみると、以下のようなものが挙げられそうです。

  1. 動画制作、動画編集に係る人件費

  2. 動画制作に必要な映像編集ソフトや撮影機材などの購入に係る費用

  3. 撮影を行なう場所の賃料・使用料、光熱費

  4. 取材や調査に係る人件費やその他の付随する費用

万が一、上で挙げたような、個人事業として行っているYoutubeチャンネルで発生するであろう諸経費が、政務活動費や政治団体の政治資金から一部でも賄われていると仮定するならば、そういった公金や政治資金の流用問題があるように思われます。

仮にそれらの諸経費が政務活動費から一部でも賄われていたとした場合は、その不正、もしくは不当に支出された政務活動費を川崎市に返還する必要が生じます。

また、例えば、撮影場所が政務活動費で借りている事務所で、その賃料が按分されることなく、全額、政務活動費から賄われていた場合も同様のことが言えるでしょう。

ここまではYoutubeチャンネルの運営に係る諸経費が、政務活動費から賄われていた場合の仮の話でしたが、そういった諸経費が浅野氏の政治団体の政治資金から仮に賄われていた場合を検討してみます。

浅野氏は自身のYoutubeチャンネルの運営を政治団体によるものに切り替えようとしたけど断念したとのことだったので、これを素直に疑うこともなくそのまま受け取るならば、浅野氏が個人事業として運営しているYoutubeチャンネルで発生する諸経費が、浅野氏の政治団体や後援団体の政治資金によって賄われているといったことはなさそうです。

ちなみに、これは一般論ですが、仮にそのようなことをしてしまうと、以下の「公職選挙法」の禁止規定に抵触することになってしまいます。

(後援団体に関する寄附等の禁止)
第百九十九条の五

 政党その他の団体又はその支部で、特定の公職の候補者若しくは公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。)の政治上の主義若しくは施策を支持し、又は特定の公職の候補者若しくは公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。)を推薦し、若しくは支持することがその政治活動のうち主たるものであるもの(以下「後援団体」という。)は、当該選挙区(選挙区がないときは、選挙の行われる区域)内にある者に対し、いかなる名義をもつてするを問わず、寄附をしてはならない。
(中略)

(後援団体に関する寄附等の制限違反)
第二百四十九条の五 後援団体が第百九十九条の五第一項の規定に違反して寄附をしたときは、その後援団体の役職員又は構成員として当該違反行為をした者は、五十万円以下の罰金に処する。

公職選挙法

もちろん、ここまでの話は前述の通り、仮定の話ですので、全て浅野氏個人の自費で賄われているのであれば、全く問題無いということを改めて、強調しておきたいと思います。

公金や政治資金を利用した個人事業の宣伝

浅野氏が先の川崎市議会議員選挙で再当選を果たした川崎市では、選挙運動用自動車、選挙運動用ビラ、また、選挙運動用ポスターの係る費用が一部、公費負担されます。

Twitter上で@osadannaにより投稿された画像(2023年4月25日)

例えば、その公費負担される選挙ポスターに、浅野氏は個人事業として収益化しているYoutubeチャンネルのQRコードを貼り付けて、Youtubeチャンネルの宣伝をしていたようです。

一応、「公職選挙法」では、どんな情報を選挙用ポスターに掲載すべきかの規定はありますが、何を掲載してはいけないかの規定はありませんので、個人事業として収益化しているYoutubeチャンネルを選挙ポスターで宣伝していても、そのポスターが選挙用のものと判断される限り、問題にはならなそうです。

しかし、公費負担されている選挙用ポスターであったり、選挙用ビラなどで、個人事業として収益化しているYoutubeチャンネルが宣伝されているのを見ると、人によっては公私混同の問題が生じていると感じることでしょう。

Twitter上で@osadannaにより投稿された画像(2023年4月25日)

また、浅野氏は市政報告書でも自身の個人事業であるYoutubeチャンネルを取り上げて、大体的に宣伝しています。

令和4年度 政務活動費収支報告書(浅野文直氏分)

上の画像は、川崎市のホームページ上で公開されている浅野氏の政務活動費収支報告書(令和4年度)です。

これを見ると、市政報告掲載費なるものが「広報・公聴費」の項目の備考欄に記されております。

この「市政報告掲載費」が先ほど画像を載せていた市政報告書の製作費や印刷費、また、配送費などを指しているものなのか、そうでないかは現状、私は把握していないため断定することは出来ません。

しかし、もし万が一にも、個人事業として行っているYoutubeチャンネルを大々的に取り上げて宣伝しているような市政報告書に係る費用が、政務活動費から賄われているとした場合、ここでも公私混同の問題が生じているように感じてしまう人が現れてもおかしくはありません。

もちろん、これもあくまで仮の話なので、浅野氏が個人事業として収益化しているYoutubeチャンネルを、市政報告書で宣伝していなければ問題ありませんし、そもそも、その市政報告書に係る費用が政務活動費から賄われていなければ、前述の問題は存在しないということを強調しておきたいと思います。

川崎市の関連条例

3つ目の疑問: 不当な議員報酬の受給にならないか?

3つ目の疑問は、もし仮に個人事業として行っている浅野氏のYoutube活動を川崎市が議員活動であると誤認し、議員報酬を浅野氏に支給していたとしたならば、それは浅野氏の不当な議員報酬の受給にならないのかというものです。

まず、「川崎市議会議員の議員報酬、期末手当及び費用弁償額並びにその支給条例」によると、川崎市議会議員には以下のように定められた議員報酬と期末手当(ボーナス)が支払われるようです。

これによれば、川崎市議会議員である浅野氏は川崎市から、ゆうに年間一千万以上の収入を得ていることが分かります。

(議員報酬)
第2条
議会議員の議員報酬の額は、次のとおりとする。
(1) 議会議長 月額 1,030,000円
(2) 議会副議長 月額 920,000円
(3) 議会議員 月額 830,000円

(期末手当)
第6条 議会議員で6月1日及び12月1日(以下これらの日を「基準日」という。)に在職するものに対しては、期末手当を支給する。これらの基準日前1箇月以内に、任期が満了し、辞職し、失職し、除名され、死亡し、又は議会の解散により任期が終了した議会議員(当該これらの基準日においてこの項前段の規定の適用を受ける者を除く。)についても、同様とする。
2 期末手当の額は、それぞれ前項の基準日現在(同項後段に規定する者にあっては、任期満了、辞職、失職、除名、死亡又は議会の解散による任期終了の日現在)において同項に規定する者が受けるべき議員報酬の月額及びその議員報酬の月額に100分の45を乗じて得た額の合計額に、100分の167.5を乗じて得た額に、基準日以前6箇月以内の期間におけるその者の議会議員としての在職期間の次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める割合を乗じて得た額とする。
(1) 6箇月 100分の100
(2) 5箇月以上6箇月未満 100分の80
(3) 3箇月以上5箇月未満 100分の60
(4) 3箇月未満 100分の30

川崎市議会議員の議員報酬、期末手当及び費用弁償額並びにその支給条例

地方議員は非常勤の特別職公務員とされており、地方議員には最低限出席しないといけない議会があるものの、それを除けば、特に勤務時間、勤務日数は定められておらず、自由に活動をすることが出来ます。

また、地方自治法の第二百三条を見ると、地方議員以外の非常勤の者には「その勤務日数に応じてこれを支給する。」といった記載があるものの、地方議員に対しては、そういった勤務日数に応じて報酬が支給されるといった記載はありません。

第八章 給与その他の給付
第二百三条
 普通地方公共団体は、その議会の議員に対し、議員報酬を支給しなければならない。
2 普通地方公共団体の議会の議員は、職務を行うため要する費用の弁償を受けることができる。
3 普通地方公共団体は、条例で、その議会の議員に対し、期末手当を支給することができる。
4 議員報酬、費用弁償及び期末手当の額並びにその支給方法は、条例でこれを定めなければならない。

第二百三条の二
1 普通地方公共団体は、その委員会の非常勤の委員、非常勤の監査委員、自治紛争処理委員、審査会、審議会及び調査会等の委員その他の構成員、専門委員、監査専門委員、投票管理者、開票管理者、選挙長、投票立会人、開票立会人及び選挙立会人その他普通地方公共団体の非常勤の職員(短時間勤務職員及び地方公務員法第二十二条の二第一項第二号に掲げる職員を除く。)に対し、報酬を支給しなければならない。
2 前項の者に対する報酬は、その勤務日数に応じてこれを支給する。ただし、条例で特別の定めをした場合は、この限りでない。
3 第一項の者は、職務を行うため要する費用の弁償を受けることができる。
4 普通地方公共団体は、条例で、第一項の者のうち地方公務員法第二十二条の二第一項第一号に掲げる職員に対し、期末手当を支給することができる。
5 報酬、費用弁償及び期末手当の額並びにその支給方法は、条例でこれを定めなければならない。

地方自治法

このことから、もし仮に、浅野氏が本来であれば、川崎市民から議員活動を期待されているような議会中を除くその他の時間に、浅野氏の個人事業にあたるYoutube活動を行なっていたとしても、浅野氏が出席義務のある議会に出席している限り、川崎市から議員報酬や期末手当が支払われることに関しては問題がないといえます。

とはいえ、議員報酬というものは、議員に対する一定の役務に対する対価として与えられる反対給付のことですから、もし万が一にも、浅野氏が個人事業として行っているYoutube活動によって、本来浅野氏が行うべき議員活動の時間が看過されない程度に圧迫されている場合は、そのことに不服を抱く川崎市民も現れることでしょう。

特に浅野氏のColabo追及に関する言動には、私がこれまで以下に挙げる記事で指摘してきたような多くの問題点がありますので、尚更のことです。

Twitterで@fujisueにより投稿された画像(2023年4月8日)

今年の川崎市議会選挙で浅野氏は、全面に選挙戦略として「Colaboの追及」を押し出していました。

こうなってくると、浅野氏のColaboの追及は川崎市にとって、浅野氏の議員活動という位置付けになると思われますが、浅野氏は既に個人事業として運営している自身のYoutubeチャンネルに、Colaboに関する動画を20本以上も投稿しておりますし、今後も投稿していく意思を表明しております。

一体、浅野氏はどのようにして議員活動としてのColabo追及と、個人事業として運営しているYoutubeチャンネルでのColabo追及を線引きして、自身の活動及び会計を、市民から理解を得られるかたちで行なっていくのでしょうか。

不正に目をつぶるのか、不正と闘うのか!?

『不正に目をつぶるのか、不正と闘うのか!?浅野文直です』

この言葉は上の6秒程度のショート動画での、浅野氏の発言です。

本記事ではいくつか注意書きを添えつつも、仮定の話として、不正、もしくは不当になり得るケースについて言及致しましたが、あくまでそれらは仮定の話であるということにご留意ください。

とはいえ、この記事を読まれる方の中には、浅野氏の会計に問題がないのかを追及したいと考える人もいるかもしれません。

そういった場合は、川崎市で今後、公表される最新の政務活動費収支報告書や政治資金収支報告書、選挙運動費用収支報告書を調査してみたり、また、それらに関連する領収書を全て開示請求するなりして、浅野氏が個人事業として運営しているYoutubeチャンネルの諸経費に対する支出がないかを徹底的に調べてみると宜しいかと思います。

それこそ、神奈川県民、川崎市民の方におかれましては、住民監査請求を行なってみるのも宜しいかと思います。

最後にお願い

  1. もし良かったら、この記事をSNSなどで是非、シェアしたり、反論時にリンクを貼るなどして利用なさって下さい。

  2. Colaboを活動資金の寄付、訴訟費用の寄付、物品寄付によって、一緒に応援しましょう。→ 「ご支援のお願い - 一般社団法人Colabo」

  3. 私が記事を投稿しているこちらのnoteというプラットフォームでは、記事の執筆者に投げ銭が可能のようです。少額でもサポート頂けると大変嬉しいです。→ 「ヘルプ:記事をサポートする」


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?