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加藤登紀子 - Dāvāja Māriņa・Миллион роз / 百万本のバラ - 1987

加藤登紀子さんというと、アダルトな低音ボイスが魅力的なシンガーさん。寂しげで孤独な憂いを含みつつ、何処か世情を諦観したような、むき出しの感情とは無縁の・・・それでいて色んな人の人生の傷を見据えて、包み込むような温かみのあるウィットある歌声が素敵なんですよね。

「誰も誰も知らない」1966

こちらデビュー曲です。なかにし礼さんが作詞されてます。

「ひとり寝の子守歌」1969

この歌もすごく好きです、心に染みます。

「知床旅情」1971 

作詞作曲は俳優の森繫久彌さん。永遠のスタンダード、昭和の名曲です。

森繁久弥さん バージョン

「襟裳岬」と共に北海道を代表する曲かなあ…
同時期には「函館の女」なんかもあったし、ご当地ソングとも違うけど、この曲がヒットして、レコード大賞やら紅白にも出演されましたね。

けど、森繫さんも加藤さんも、北海道の出身ではなくて、共に関西出身だったりするw

「リリー・マルレーン」1975

1938年にリリ・アンデルセンが歌った曲。私はマレーネ・ディートリッヒのバージョンから。うんと~この曲はそのうち単独で取り上げてみよう。

「時代おくれの酒場」1977

これは映画「居酒屋兆治」の主題歌でした。加藤さん自身も、高倉健さんの奥さん役で出演されましたね。

映画予告「居酒屋兆治」1977

「この空を飛べたら」1978

この曲は中島みゆきさん提供の曲。当人もセルフカバーしています。加藤登紀子さんにピッタリの曲だと思うです。
なんかねー シャンソンぽいメロディがね、加藤さんの声に合ってるのよね。

「時には昔の話を」1987

後にジブリの「紅の豚」のエンディングに使われましたね。
とはいうものの、この映画見てないのでした、私。

映画予告「紅の豚」1992

そして、
カラオケ行ったとき「声が合うと思うから歌って!!」と…この歌をリクされることが多かったんですが、映画見てないし、歌えないよって、はいっっ汗

で、その主題歌の方はこちら。

「さくらんぼの実る頃」1992

「紅の豚」のために作られた曲というわけではなくて、フランスのシャンソンの代表曲です。

1866年にジャン・バティスト・クレマンにより詩が作られて、2年後にテノール歌手のアントワーヌ・ルナールによって、曲がつけられ歌われることになりました。

ジャン・バティスト・クレマン

Antoine AIme Renard「Le Temps Des Cerises」

1871年にパリで労働者革命が起き、その際の戦闘で亡くなった看護師のルイーズに捧げられた、彼女の死を悼む歌です。
そのうちに「血の一週間」にて、虐殺された市民を悼む歌として歌われるようになり、新たな歌詞が加えられて、単なる恋の歌から犠牲者たちへの追悼の歌へと変わったのでした。

そんな感じでフランスで歌い継がれており、革命による犠牲者に対しての追悼の歌としては、「レ・ミゼラブル」の「民衆の歌」のような位置づけになるかな。

Les Misérables「Do You Hear the People Sing?」

日本でも、加藤さん以前から歌われているのでした。

でもって、フランス人としては自分たちのそんな歌を、イタリア映画に使用されてしまったことに複雑なのだとかっっ
(イタリアはファシストに屈した国だしぃ)

して、たくさんの持ち歌やカバー曲など歌われている加藤さんですが、今回は流れ的にこれかな。

「百万本のバラ」1987

元々は1981年にラトビアの歌謡コンテストにて、アイヤ・ククレとリーガ・クレイツベルガによって歌われた「マーラは与えた」という、ラトビア語の歌謡曲を原曲とするロシアの歌謡曲。

ちなみにラトビア語のバージョンは…
大国に運命を翻弄されてきた、ラトビアという小国の苦難を歌ったもので、恋愛の歌ではなかったりしますっっ

「Dāvāja Māriņa / マーラは与えた」1981

そして加藤さんの歌った歌詞は、ロシアの歌手アーラ・プガチョワのバージョンの日本語版になります。ロシア語の作詞はアンドレイ・ヴォズネセンスキー。

曲の詳細は面倒くさいので、wiki先生から引用してペーストw


歌詞の内容はグルジア(現:ジョージア)の画家ニコ・ピロスマニがマルガリータという名の女優に恋したという逸話に基づいている。
ラトビアの作曲家が書いた曲に、ロシアの詩人がグルジアの画家のロマンスを元に詞をつけ、モスクワ生まれの美人歌手が歌うという、多様な民族の芸術家が絡んでいる点で、ソ連ならではの歌とも言える。

このロマンスの真実性については諸説ある。ピロスマニはマルガリータをモデルとしたといわれる作品を何枚か残しており、グルジア(ジョージア)の首都トビリシの国立美術館で『女優マルガリータ』を観ることができる[6]。

1969年にパリでピロスマニの個展が開催された際にはマルガリータ本人と目される女性が現れたと伝えられる。
一方、1975年にピロスマニについての研究書を著したエラスト・クズネツォフはこの著作の中でマルガリータの実在性に強い疑問を呈していた[3]。

山之内重美は2002年の著作において、ピロスマニにマルガリータという名の恋人がいたことは確からしいとしつつ、彼女がバラの花を愛した、とか、画家が大量の真紅のバラを贈った、といったエピソードはヴォズネセンスキーの創作だとしている[7]。

2007年にはロシアの文化テレビ局が放送したピロスマニについてのドキュメンタリー番組でパリでの個展
の際の出来事が紹介された


「Миллион роз」1982

こちらがロシア語バージョンで、加藤さんの歌っている歌詞の原曲になります。国としての痛みを歌った歌が、失恋の痛みの歌にすり替わっているというのは…何とも、ではありますが、まあ曲自体はいい曲ですもんね。曲にも歌詞にも罪はないというのかな。

欧米の歌が日本でカバーされるときに、原曲を損なうようなとんでもアレンジが加えられていたり、まったく正反対の意味のとんでもない歌詞をつけられていたりとか、そういうのもよくありますしねっっ汗

何処までを許容範囲とするか難しいとこです。

うん、いずれにしても加藤さんでないと‥‥ここまで円熟味のある深い声でないと歌いこなせない歌かな…って、思います。「さくらんぼの実る頃」にしても「百万本のバラ」にしても、たくさんの人が…世界中の人がカバーしていますけどもね。

日本語で、日本語ならではの重みと含みをもたせて、声だけですべてを伝えて、意味を持たせてしまう人。人生や歴史を語り継げることの出来るって、なかなかいないから。それが出来る歌い手さんって本当に貴重です。

その意味でも、言語や文化、国境を越えたところで語られるべき、素晴らしい歌い手さんの一人だと思います。


F2blogに書いてあるものを、訂正・加筆・リンク修正の上、こちらに再度マガジンとしてまとめてUPしています。

「My Favorites〜音楽のある風景」
 2021/01/29 掲載記事より転載


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