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Case Study - 番外編「妄執〜愛執染着」

「カニザリオから結婚のもうしこみがあったのよ。
 父の友人のイタリアの大詩人よ」
「結婚すればいいじゃないか」
「わたしを愛していないの」
「愛していたよ、アデル」
「でも今は愛していない、これからも愛してくれないの? 
 お願い、あなたを愛し続けてもいい?」
「…」
「いいわ、上官にあなたの手紙を見せます。
 そしたら軍隊にいられなくなるわ、
 あなたの手紙をあなたの女たちに読ませてもいいわ」
「心変わりして何が悪い」
「わたしと結婚してもあなたは自由よ」
「時々君がわからなくなるよ。
 僕を愛しているならすぐ、父上の元に帰ってくれ」

「もはや嫉妬はない、自尊心も捨てた、
 愛はわたしには微笑まず、顰め面を見せるだけ。
 売春宿で苦しむ女たち、結婚に悩む女たち、
 女たちに自由と尊厳を与えること。愛はわたしの宗教だ」

by「アデルの恋の物語」アデルとピンソンのやりとり

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ある男性がいた。見た目よく(ようするにイケメン)。スタイルもいいし、
清潔感あって、物腰もスマートで、女性にモテるタイプ。

けれど、どの女性とも長続きしない。

出会いはたくさんあるし、女性の方からも告白されることが多いのだが、付き合い始めると、最初はいいのだが、いつの間にか距離を置かれ初めて、彼女側の方から別れを言い出され、結局、振られてしまうのだそう。

その人の親友曰く、同性から見ても魅力的な人で、男女分け隔てなく付き合う人だし 友人も多いし、他人に対して気も使えるし、約束も守るし嘘もつかない。空気が読めない人でもないし、礼儀も常識もあるし、付き合っている時は彼女一筋で、浮気癖などもとくにない。酒乱でもない、暴力をふるうこともない。性格に難があるとも思えないし…

周囲からしても、なんで彼が振られてしまうのか理解できないとのことだった。

ある日、その親友さんが以前彼を振ったという元カノさんと、偶然仕事で一緒になり、思い切って、どうして彼と別れたのかと理由を聞いてみた。

すると、「彼といると、いつも居心地が悪いのよね」

という話を始めた。

彼の隣にいると、そこにいるなとばかりに、
誰かに体をぐいぐい押されるような気がするのだと言う。

そして誰かにいつも見られているような、睨まれているような感覚があり、一人で彼の部屋にいたならば、どこか寒々しい気配で、落ち着かないというか、戦慄するような恐怖さえ覚えて、それで何となく一緒にいるのが怖くなって…とのこと。

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その話に、ちょっと思うところのあった彼の親友は、

「お前、御祓に行った方がいいかも」と彼に話した。

最初、彼は一笑に付したものの、

そういえば似たような話を以前、別れ話の際に相手からされたことを思い出し、その筋の人の門戸を尋ねることにした。

果たして彼には、彼に横恋慕していた女性の妄執の塊のような生霊が憑いていて、悪鬼のような顔をした女性の生霊の嫌がらせ行為によって、彼の恋人たちは被害を受けていたのであった。

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