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総括、あるいは大きくて小さな世界について

 遠くで、でも目には見えて、耳をすませば音が聞こえるくらいの遠くで、チリンとベルが鳴っている。わたしは友人たちが店内へと入っていくのを、後ろのほうから見つめていた。  スウェーデンに来て、半年が経った。半年が経ったということは、ちょっとした浮世離れな生活が終わりを迎えるということだった。降り立ったときには、雪と氷が蓋をしていて見えなかった地面にも、いつしか草花が育ち、いまや憎たらしくも花粉を飛ばしている。一日のうち三分の一にも満たなかった日照時間は、丸一日へとのびてしまった

    • ストックホルムでさんぽ神①

      さんぽ神とは? さんぽをより楽しくするためのカードゲーム/アプリです。詳しくは次の記事を読むか動画を見ると良いでしょう。  ごく簡単に説明すると、アプリを起動するとさんぽを楽しくするための神のお告げが現れるので、そのお告げ通りにさんぽを行うといったものです。皆さんも入信しよう、さんぽ神! 1回目(5/6) 今回のお告げは「何らかの境界をまたいだ地点で 美しい写真を撮ろう」というものだった。「境界」ということばに、自然と淡さ儚さを感じて、そこにいけば確かに美しい写真が撮れそ

      • 日記 #1(1/7~1/8①)

        日記1/7  留学へ旅立つ日だ。規定重量をややオーバー気味のトランクふたつに、めいいっぱい電子機器を詰め込んだバックパックを持って、わたしは家を転がり出た。わたしの家にはエレベーターがないから、荷物を下に降ろすだけでも重労働。汗がとめどなく溢れていく。後悔先に立たずとはこのことで、玄関を開けて数m、すでにわたしは荷造りをした過去の自分を恨んでいた。さすがにこの量の荷物をかかえて、電車を乗り換え羽田まで行く気力はない。それを見越して直通バスを予約していたものの、運搬に必要な

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