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多様性を美化しないオフ・ブロードウェイ・ミュージカル「悪魔の毒毒モンスターREBORN」

1月16日。
今日は116の語呂合わせにちなんで「ヒーローの日」だそうです。

私にとってのヒーローは誰だろう?
子供の頃はウルトラマンやセーラームーンでしたが、2023年1月、34歳の私がすぐに思いついたのは「悪魔の毒毒モンスター」でした。

1月14日からEX THEATER ROPPONGIで開幕した舞台、「悪魔の毒毒モンスターREBORN」。ふぉ〜ゆ〜の福田悠太くん主演ということで昨日観に行ってきました。


この作品は2020年3月に同じ福田くん主演で日本初上演されて、今回はパワーアップしつつの再演。

当時も観劇させてもらいましたが、感染症が流行り始めたばかりの頃で…チケットが取れていても断念されていた方も多かったと聞いていたので、再演の話を聞いて嬉しかったです。またあのカンパニーに会えるなんて思わなかったですし!

原作は1984年に公開されたアメリカの映画。その後2009年にオフ・ブロードウェイで上演され、コメディミュージカルとしての形ができたそうです。

舞台はニュージャージー。冴えないオタクのいじめられっ子、メルビン・ファード三世(福田悠太)がひょんなことから放射性廃棄物のドラム缶に放り込まれて、緑色の「毒毒モンスター」になってしまう。

街の汚染の黒幕である市長(霧矢大夢)と戦いつつ、盲目の少女サラ(平野綾)との恋に奮闘しつつ、ニュージャージーを救うべく立ち上がる毒毒モンスター「トキシー」だったが…

と、ストーリーはざっくりとこんなかんじですが、詳細はこちらから!!


いやー、笑いました。あまりにもそうそうたるキャストのみなさんを無駄遣いしてて、最高に下品でくだらなくてふざけてて。(褒めてます)

演出の池田テツヒロさんがパンフレットでも「おふざけの最高峰とも言えるヘンタイミュージカル」とおっしゃっていて、それこそが理想である…とのことなので池テツさんの思惑どおりの感想を抱くことができて、嬉しいです。

実力があるキャストのみなさんだからこそ、
音楽が素晴らしい「毒毒バンド」による生演奏だからこそ、
ただのトンチキ舞台ではなく、ちゃんとエンターテイメントになってる。上質なコメディになってる。

この感想は初演と変わりませんでしたが、
霧矢さんは3役、林翔太くんは12役、宮原浩暢さんは16役も演じていてとにかく「少数精鋭」なカンパニーであること。
そのカンパニーのみなさんのぶっとび具合と
一体感がとんでもないことにあらためて感激しました。

今回再演を見て強く思ったのは、多様性の時代を描きつつもそれを美化させない潔さがいいなー!ということ。

元々オタクな醜いモンスターなのに街を救うヒーローになる!?
盲目の少女なのに性欲強めで官能的!?
市長なのに自分の得のためだけに女の武器を使う!?
教授なのに女に簡単に誘惑されちゃう!?
小さいおばあさんなのに実は悪者!?

などなど「なのに」がたくさんあって、
一般的なイメージとは異なる、普通じゃないキャラクターばかり。

でも「一般的」ってなに?
「普通」ってなに?
多様性が叫ばれるこの時代。
ちょっと立ち止まって考えると、
このクセの強いキャラクターたちはむしろ時代に合ってる気さえしてきます。

「多様性」って言葉が最近どこか美化されすぎてる気もしますが、このキャラクターたちは全然かっこつけてなくて。
不器用に本能のまま生きてるところが悪者も含めどこか愛おしく感じられるんですよね。

特に考えさせられたのは、
「盲目の少女なのに性欲強めで官能的」な、サラ。

日本で障害のある方を取り上げるときってどうしてもその方の真面目な一面とか、真摯で誠実な一面とかを切り取って感動的に演出しがちなのかな…と思っていて。

その考え方に基づくと、サラのことを見てこんなに爆笑するなんて、もしかして不謹慎!?なんて思いそうにもなるのですが。

でも障害があることと、官能的なことと、真っ直ぐすぎて笑えるところって関係ないというか。どの組み合わせでその人が持っててもおかしくないこと、なわけで。

こういうところは海外作品ならではだったりするのかなーなんて、勝手ながら思いました。

「海外作品」という点で言うと、ちゃんと私たち日本人が爆笑できる形で翻訳・演出されていた点もすごかったな…

原作がかなりドギツイジョークが多そうで、どう日本人にも伝わるように工夫するか?どこまでマイルドにするか?の判断がきっと難しかっただろうなと思うのですが…

「笑い」って何よりも言語の壁を超えるのが難しいと思うので、海外原作の日本版コメディって普通に笑えるだけですごいなあって感動しちゃいます。でもニュアンス掴みきれなくて見落としてる笑いもありそうなので、再度見に行くときには1つでも多くキャッチしたいところ…!(笑)

 
2020年には席の間隔を空けて座っていたのが、今年は普通に隣に人が座ってて。
あー、演劇が戻ってきたのだなあと素人の私でも感慨深いものがあった、今回の再演。

どうか一人でも多くの人に、このサイテーでサイコーな舞台が届きますように。

チケット情報はこちらからチェックです!!


福田くんはじめ、各キャストの感想は別途どこかに綴りたいなと思ってたり…します…!
  

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