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目の前の人の思いを言葉にしたいーー「クスっと笑い収集家」が「幸せに導くコピーライター」になるまで

ひそかにライターに憧れている私。実は最近ライティングの勉強をし始めたのですが……勉強の一環として企画講座の同期であり、友人であり、コピーライターの松下由希さんにインタビューさせていただきました…!
私にとって初めてのインタビュー記事です。

夢や憧れがありながらも、このままでいいのかな?とモヤモヤしている方。自分の夢ってなんだっけ?と少し立ち止まって考えてみたい方など。ライターに興味がなくても、ぜひ読んでいただきたい内容になりました。こんな方がいるのか!と少しでも前向きな気持ちになっていただけたら、うれしいです。


            ❇︎

コピーライターを夢見ながらも、一度は信用金庫で働いた経験を持つ松下由希さん。
まったく異なる業界での道を歩みながらも、あきらめることなく夢を叶え、今ではコピーライターとして活躍している由希さんが「ライティングをしたい理由」とは何なのでしょうか。

周囲の人との関わりを通して、「コピーライターになりたかった頃の自分」と「コピーライターになった今の自分」を比べると、書きたいと思う理由にも変化があったようです。


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  ネギと共にポーズをとるおちゃめな由希さん


あきらめきれなかったコピーライターになる夢



―ライティングに興味を持ったきっかけは何だったんですか?

中学2年生のときに「お~いお茶」のコピーライトが気になったのが、興味を持ったきっかけでした。

この商品名はなぜ、どのようにして「お~いお茶」と名付けられたのか、この言葉だからこそ長年愛されているのではないか、とものすごく気になりまして。「わたしもこんな言葉を考える人になりたい!」と思うようになりました。CMソングをよく歌ってるような子どもで、特に関西はおもしろCMが多かったので広告やCMは昔から好きでしたね。

コピーライターになりたいと思いつつも、(無理、なれるわけない)と長い間勝手に決めつけていました。言葉やアイデアで多くの人の心を動かす広告業界に憧れつつも、就職は無理だと決めつけていたので、広告業界に代わるものはなんだろうと考えていて。その時、金融業界なら融資を通してお客様の力になれるんじゃないかと思い、就職活動中は金融業界を志望していました。

その結果、信用金庫に入社しましたがそこからは迷走の日々でして……コピーライターになりたいけどどうしたらいいのかなぁなんてぼんやり考えながら
誰からも求められていない金融商品を扱う自分の存在意義も、仕事の社会的意義も分からなくなってしまってしまい鬱々とした日々を過ごしていました。

でも、何か後悔することがあるとしたら何かな?と考えたときに、「やりたいことリスト100」を書いていたのを思い出して。そこで「キャッチコピーを作りたい」って書いてたんです。(ああ、なんだ、全然諦めてないやん)と自分に呆れながらもハッとしました。(笑)

そこからコピーライター養成講座に通って、退職して、ライターの塾に通って。
奇跡的に先生の推薦をもらってライティングの仕事ができるようになりました。


―あらためて伺うとすごいストーリーですね!就活の頃はコピーライターに興味はありながらも、やはりハードルの高さを感じていたのでしょうか?

ハードルの高さはすごく感じていましたね。(どうせ無理でしょ)という思いが払拭できなくて就活が始まってもエントリーすらしていませんでした。就活中、周りに広告業界を受けている子もいたので、あきらめきれなくて後半がんばりましたが……説明会も1、2社しかやっていなくて。

その中でも求人広告系の会社を受けて、実は1社内定をいただけたんです。
転職を念頭に置きつつ内定式に参加したのですが…そこでは、有名なラッパーが作詞作曲した社歌が流れ、31階のオフィスから東京の夜景が一望できるというようななんともギラギラした感じで。(あ、私ここで生き残れないな)とすっかりビビッてしまいました。

―でも、業界への思いはずっとあったんですね。

中学の国語の先生が魅力的だったというのもあったんですが、言葉にかかわりたい思いがずっとあって。中高の教員免許を持ってたりもして、言葉にしがみついてる状態がずっと続いてました。


―根っこにある思いが強かったからこそ、いろいろなパターンを試されたんですね。
 紆余曲折を経て、今は満足感のある形でお仕事できているんですか?

もっと頑張らないとと思いつつ、ツテのない状態からよくこんなにお仕事もらえてるなあと思います。



―お仕事をもらえるようになるまでとても努力されて、その道のりは簡単ではなかったですよね。何か意識していたことや、認めてもらえた理由で思いつくことってありますか?


「誘われたら行く」というのを意識してました。コピーライター養成講座に通ってるときも「この集まりおもしろいよ」と言われたら顔を出してみたり、イベントがあれば積極的に参加したりしていました。

宣伝会議賞ファイナリストの常連さんたちとの飲み会に参加した際、それそれ書いたコピーを見せあう機会があって。錚々たるメンバーで皆さんめちゃくちゃ上手なコピーばかりだったんですが、わたしも恥ずかしがることなく自分のコピーを出してました。

その姿勢が、たまたまTwitterで仲良くしてくださってる方に声をかけていただいて、お仕事をいただけたということにも繋がりました。


―「誘われたら行く」という姿勢はお仕事のために頑張ったのか、元から自然に持っていたのかというと、どちらなんでしょうか?

楽しみながらも、「とりあえず前に進まないと」「行動しないと何も変わらない」という気持ちで動いているかんじです。自分に足りないものがあるから、それを埋めるためにいろんな人にかかわって学んで吸収したいなと。単純に面白い人にたくさん会ってみたいという気持ちもあります。(笑) 

コピーライター養成講座で「すべての経験がコピーに活かせる」と聞いて、確かにそうだなと思って。コピーライターになりたいと思ってから、コピーの技術を身につけるために積極的に経験していこう、と思うようになりました。
でも、「焦り」が大部分を占めてるかもしれないです。(笑)


周りを傷つけない「クスっと笑い収集家」


―日々のコミュニケーションからしても周りの人との関係構築をすごく大事にしている人だなと思っていますが、働く上で譲れない軸ってありますか?


お互いにいい気持ちでいられる関係が大事だなと思っています。

岩崎俊一さんの著書『幸福を見つめるコピー 完全版』を愛読しているのですが、この本から「すべての商品、サービス、ものごとは幸福に向かうためにある」と気付き、どのような関係性においてもより良い方向を目指したいと考えています。

信用金庫時代は金融商品を扱っていたんですが、これで本当にお客様は幸せなのかなとずっと疑問だったので、双方にとって良い関係を目指せることが理想です。


―今のお仕事は依頼主の方と良い関係性が続けば続くほど、次のお仕事に繋がっていきますよね。
 由希さんは仕事に対してまじめで誠実な印象もありつつ、実はとてもおもしろいですよね。クスっと笑える系のTweet大好きです(笑)。ちょっと笑えることが好きなのは昔からなんですか?


昔からですね。末っ子で、大阪の人間だからというのもあるかもしれないですが「笑わせてやろう」という精神があって。友達とかにもタイミングを見てボケたり突っ込んだりしてて。

コピーライターになりたいって恥ずかしくて言えなかった頃は「クスっと笑い収集家になる」って周りに言ってました。(笑)


―「クスっと笑い収集家」いいですね!(笑) 

自分が何か言ったことでクスっと笑いが取れたら、勝ったって思いますね(笑)。勝負も何もしてないんですけど、なんか「よっしゃ」と。

芸人さんが出てるテレビを見たり、大阪の地でお笑い英才教育を受けつつ(笑)、9歳、7歳、3歳差で兄弟と離れていて大人に囲まれて過ごしてたこともあり、周りといい空間を作ろうと思ってたのかもしれないです。

そういえば小学校では学級委員をやって中学では生徒会に入っていましたね。
コピーライター養成講座でも幹事会に入ったり、信用金庫時代も幹事やってましたし……ずっと周りの空気を気にして生きてきたのかもしれないです。


―みんなの関係を円滑にすることに貢献できたら、という気持ちがあるのかもしれないですね。
 前にご自身のことを自己肯定感が低い、ともおっしゃってましたが、周りに貢献することで自己肯定感が上がることもあるのでしょうか?


自己肯定感はどうでしょう……特別自分が周りに貢献出来ているという意識はないですが、私自身ギスギスした空間がものすごく苦手という面も大きいです。難しいんですけど、なるべくみんなが気持ちのいい空間を目指したくて……
あと人と話す上で自分の発言で相手を傷つけてないかな?というのは気にしています。
過去に人からの誉め言葉を素直に受け取れなかった自分もいたので。


―書く仕事をする上でも「傷つけていないかな」という意識はとても大事ですよね。

絶対人が傷つかない言葉を書こうと決めています。
ネガティブな表現を使ったコピーは書きたくないですし、光の当て方を変えてポジティブな言葉を使いたいですね。


―ひとりも傷つかないコピーって難しいですよね。

小柄な女性向けのファッションブランドのコピーを書いたことがあったのですが、
たとえば「小柄だけどかっこいい」と書いてしまうと「小柄がかっこ悪い」の裏返しになってしまうので、そこが難しいと思いました。

事実に言及するだけでなく、いかに付加価値をつけられるか……を意識しないとなと思っています。


―そういえば、これから挑戦したいこととして「100人インタビューをしたい」ともおっしゃっていましたよね。

インタビューの仕方を勉強したいなという気持ちと、「普通に働いてる人」にお話を聞いてみたいなという気持ちがあって。三浦しをんさんの『ふむふむ 教えてお仕事!』という本があるのですが、自分もそういうものをやってみたいんです。

私が長い期間、「このままでいいのかな?」と迷いながら働いていたように、他の人も同じように悩んでるかもしれないと思いまして。

そんなときに「こんな働き方もあるのか」と気づきを与えられたら嬉しいですし、悩んでいてどこから手をつけていいかわからない人向けに届けたいですね。


目の前の人の思いを言葉にしたい。自分の言葉で誰かの役に立ちたい。


―今後の大きな夢や野望ってありますか?

コーポレートスローガンを書いてみたいです。ミツカンの「やがて命に変わるもの」やサントリーの「水と生きる」のような、企業ロゴの上に入るようなショルダーコピーを考えられたら嬉しいなと。

一番はじめに「お~いお茶」のネーミングに興味を持ったので、商品コンセプトから入れたらもっと嬉しいですし……でも、「自分の言葉が残る」ことが何より嬉しいのかもしれないです。

信用金庫のときは自分のしたことが残らなかったのですが、コピーを書いて自分の言葉が誰かの役に立てたら、とても嬉しいです。お笑いもそうですが、言葉で人の心を動かしたいとずっと考えていたので、目の前の人の思いを言葉にしたいです。


―ライティングしたい理由って昔と今では変わりましたか?

前までは「かっこいい言葉を生み出す」ことに憧れて「自分が気持ちよくなりたい」と思っていたのですが……今は「目の前の人の思いをちゃんとみんなに届けたい」と考え「どうすれば相手が幸せな方向に向かっていけるか」を大事にするようになりました。

最近は、「人とモノ、幸福の間をつなぐコピーライター」という言葉を掲げていて、この目標に近づきたいなと考えています。


―目の前の人の思いを言葉にして、相手と一緒に幸せな方向に向かっていく。
人との関係性を大切にする由希さんらしい、すてきな考え方ですね。
由希さんのお話を聞いて勇気づけられた方、たくさんいらっしゃると思います。ありがとうございました!

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実はこのインタビュー中に、一つの嬉しい報告がありました。
インタビューの中でもお話を伺っていた、小柄な女性向けのファッションブランドのコピーが見事採用され、WEBサイトで公開されたと言うのです。

光の当て方を変えて、ポジティブに表現し、少しでも幸せな方向へ導いていく。
コピーとして綴られた言葉には、由希さんのそんな思いが込められています。


由希さんの思いとこだわりの詰まった言葉たちが、きっとみなさんにも響くと思います。
ぜひ一度見てみてください。

なぜ書きたいのか。どんな人になり、どんな夢を叶えたいのか。みなさんもあらためて考えてみてはいかがでしょうか?


松下由希さんのことをもっと知りたい方は、こちらより。




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