失った恋に笑ってじゃあね

お別れした彼について、ちょっとだけ書こうと思う。
残暑、線香花火が落ちる直前に付き合った彼はとても愛おしい人だった。
よかったとか、いい人だったとか、そういうエモさ全部ひっくるめて。
二つ年上の彼はたまにもっと年上に見えて、たまに私より年下に見えた。
私は彼の隣にいる時いつも大人になろうと背伸びして、
それを見抜かれ、
よく泣いた。
味わったことのない甘い悔しさだった。
大人になりたい。
彼に追いつきたい。
それだけでいっぱいになって彼にちょっと叱られた時もあった。
耳には入らなかったけど。
別にずんずん先に進んでしまうような人では無くて、
いつも私の歩調に合わせてくれる人だったのに何でだろうとか考えるけど、
あのふわふわした重い感覚は薄れて消えてしまったみたい。
多分、
彼を失いたくなかったんだと、思う。
それが怖かった。
言い方は悪いけど付き合った人にはキープか別れしか存在しなくて、
きっといつかいなくなるってわかってたはずなのに、
そのことを考えては眠れなくなる日が増えた。
きっと近い将来そんなことなかったとか言ってそうだけど。
強がりだから。
忘れるから。

別れようって言った時、
彼は言葉を飲み込んだ。
「〇〇ちゃんのこと、尊重する。」
その言葉の裏に見えた葛藤と涙とが一気に押し寄せて、刺さって、抜けなかった。
結局本音は聞けないまま。
言ってほしかったなんて言ったらまるで引き止めてほしかったメンヘラな女の子みたいで、
大人ぶってる私はそんなこと言えないけど、
ああこの積み重ねだったのかななんて
考えたりすることもあって。
先のことばかり考えて素直になれなくて
もうちょっとだけちゃんと
目の前の彼だけみてたらこんなことにならなかったのかなとか
未練練乳たらたらで、
でも
私のことをたくさん考えて尊重して愛してくれた彼は
ううん
彼も
きっと私に依存してたのだと思う。

わかったことは
お互い依存しあった関係は私には難しいと言うこと。
そして
酔った恋の方が救いようがあること。
今までお付き合いしたどの人を思い出しても
どれも恋という概念に酔ったに過ぎなかった幼い恋で、
この恋もいずれそのように数えられるのかはわからないけど、
こんなに傷が深い恋はしたことがなかった。
別れを告げたのは私の癖に
いまだにお風呂で鼻を啜ったりするから。
ずるいと思う。
ずるかったと思う。
それだけ
好きだったんだと思う
失ってから気づくって言葉があるけど
失うというより手放したというか
見失ったという方がきっと正しくて
どこで間違えたんだろうの間違い探しで
でも確かなのは
大好きだったってこと。
酔うのはもうやめよう。
泣くのもやめよう。
彼に連絡するのも。
さあ
いつも通り笑って。
笑って。

「じゃあね」

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