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輝かない一等星

人間の肉眼で確認できる限界の星、六等星。
かつて私は一等星になりたいと思っていたし、なれると思っていました。
実を言うとその希望はまだ捨てきれていなくて、
胸の奥の方に頑固にこびりついたまま見てみぬふりをされています
現実は世知辛いです。
頑張って一等星になれるのは、ひとつまみしかいない。
なぜって闇がないと一等星も一等星で居られないから。
もがいて、必死に足掻いて傷だらけになって光った星は、残念ながらすぐ他の星に阻まれてしまう
ないものになってしまう。
その程度、そのくらいの人が、今の私。
あの一等星の隣に並びたくて、もっと輝きたくて、頑張った気がするんだけれど。
うまく、思い出せないや。
私に残ったのは数字の羅列で出来た名前だけ。
でも、お隣の星にとって私は“数字の羅列”じゃなかった。
あのひとだけは、私をあだ名で呼んでくれて、大切にしてくれた。
今日お気に入りの消しゴムを無くしちゃったのってあまりにも小さすぎることを言えるひとができたことに私はとても浮かれて、もうこのひとを離すもんかと手帳の隅にそのひとの名前とハートを書いたりしました。
「君がいたらそれでいい」
あのひとは簡単にそんなことを言って私を泣かせるんです。
絶対あのひとの前では泣かないんだけれど。
私はもう一等星になろうとするのをやめました。
ならなくていいと思ったんです。
あのひとが、そばにいてくれたらいい。
あのひとの一等星でいられたらいい。
でも、揺らぐんです。
あのひとが私を離したらどうしようって。
あのひとが私をずっと一等星でいさせてくれる保証なんてないじゃない。
「そんなこと心配しなくていいよ」
ぽろりとこぼした私の言葉にそうやって笑うんです。
そのえくぼがまた愛おしくて私はまた泣き出しそうになります。
こんなことを考えてしまうから六等星なのかしら。
私はまたあのひとから軌道が離れる6時間できっと泣くんです。
いつの間にか一等星が近づいてきます。
眩しいのでそろそろあなたが見えなくなりますね。
ではまた。

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