_投影用_20181118東京都精神保健福祉士会研修資料

アセスメントの筋力としての仮説思考-経済的困難を抱える高齢女性の事例から-

本noteで、過去アセスメントに関する記事を記してきました。

「すべてはアセスメントからはじまる。-アセスメントの範囲を広げよ」
「アセスメントとはなにか?-初心者でもわかるアセスメント-」

上記記事をきっかけに、昨年以来さまざまな機会でアセスメントに関する研修をご一緒させていただきました。

専門書に数多くアセスメントのフレームワークは有れども、それらを適切に活用して、クライアントの課題解決に寄与するためには、フレームワークという武器をしっかり使いこなすことができる筋力がなければならないと思っています。

アセスメントにおける筋力とは、「仮説と検証」のサイクルを回すことができる=仮説思考を持つことができること、と言い換えることができます。

このエントリでは、相談支援業務初任者の方に向けて、「経済的困難を抱える高齢女性の事例」を通して、仮説思考について考えていきたいと思います。


あなたが担当しているクライアントの70代の女性から「お金に困っている」と表出がありました。

アセスメントは、クライアントに対する想像力を働かせ、「〜かもしれない(仮説)」を持つことからはじまります。
「お金に困っている」のは「なぜ何だろうか?」→「お金に困っている」のは、「〜かもしれない(仮説)」(上記図の真ん中)がたくさん思い浮かぶことが大切になります。

ですが、いくらたくさんの「〜かもしれない(仮説)」が思い浮かんでも、仮説に根拠がなければ、それは、妄想の域を出ることができません。

「〜かもしれない(仮説)」を妄想にしないために、「仮説の根拠となる情報(仮説を立てる、確かめるために得る情報)」が必要になります。

ソーシャルワーカーが、現場でクライアントに対して行う支援行動(介入)は、根拠となる情報に基づいた仮説から導き出される支援行動(介入)でなくてはならないはずです。

情報が乏しければ、介入の根拠となる仮説の数も少なくなるため、クライアントとともに困りごとを解決軽減するにあたっては、必要充分な情報を共有してもらう、取得する必要があります。

「お金に困っているんです」という表出に対する「〜かもしれない(仮説)」がたくさん浮かんだら、次に、仮説の数を絞っていく必要があります。「絞る」とは、よりクライアントの真実に近い、確度の高い「〜かもしれない(仮説)」に近づこうとするプロセスであるとも言えます。

「〜かもしれない(仮説)」を絞るには、根拠となる情報が必要です。思い浮かんだ「〜かもしれない(仮説)」を確かめるための情報を新たにクライアントやその環境から得ていきます。このケースでは、根拠となる情報を得ることによって、最初に思い浮かんだ「〜かもしれない(仮説)」の中の5つが、根拠に乏しいものだったことがわかります。

最初に思い浮かんだ「〜かもしれない(仮説)」の中から、根拠に乏しいもの捨てるために、根拠となる情報を得ることを通じて、クライアントにとって適切ではない介入をせずに済むことができます。

最初に立てた仮説の数から、だいぶ数が減りましたね。

仮説を立てる、根拠となる情報を得る、このサイクルにより仮説を検証し、クライアントの「お金に困っている」という表出の原因として、3つに絞ることができました。3つに絞ることができたら、各々について、クライアントと一緒に解決軽減に向けた介入を計画していくというアセスメントの次の段階であるプランニングに移行していきます。


さいごに

本エントリでは、模擬ケースを通して、アセスメントにおける筋力である仮説と検証について考えました。以下にまとめます。

補足になりますが、アセスメントシートは、あくまで、アセスメントを補助するための「補助輪」のようなものです。熟練者であれば不要なシートを初任者が使用する必要があるのは、仮説と検証を行うための「根拠となる情報」が何なのかが理解が不十分な場合に、それを補う必要があるからです。

以下に、プランニングの前段階であるアセスメントを整理する表を載せましたので、よろしければ活用してみてください。


初任者の方にとっては、アセスメントは難しい概念、枠組みだと言われますが、まず一番初めに大切なのは、「〜かもしれない」という仮説がたくさん頭に浮かぶことだと思っています。相手に敬意と関心を寄せ、想像力を働かせること。まずはそこからだと思っています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。おつかれさまでした!


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