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「塚本幹夫のメディア暴論」総務省公共放送ワーキンググループ第2次取りまとめ(案)に対する(株)ワイズ・メディア意見と”総務省”の考え方を”取りまとめ”てみました

2024年2月26日、総務省「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」の公共放送ワーキンググループ第2次取りまとめ(案)に対する意見募集の結果が公表されました。
例によってNHKに対しては個人の方から数多くの意見が寄せられるのですが、法人は放送局を除くとわずか3法人・団体のみ。民放連と新聞協会、それに株式会社ワイズ・メディアです。
今回は「主な意見」という区分けはなかったのですが、弊社意見にはひとつひとつ丁寧にお答えいただいております。一応返答は「ワーキンググループ(以下WG)の考え方」とありますが、(構成員の皆様は目を通しているとは思いますが)実質役所が作っているので表題には”総務省”としました。
ただ、都合の悪いところは首相の国会答弁みたいにはぐらかされているところもあり、納得いきません。特にNHKのインターネット業務の競争評価については結局新聞協会と民放連(1回だけJ-WAVE)のみのヒアリングでまとめており、到底幅広く意見を聞いたとは言えないですね。
以下、弊社意見と返答、それに若干の感想を列記しました。
(注:文中太字は筆者)

意見書
株式会社ワイズ・メディア

「公共放送ワーキンググループ第2次取りまとめ(案)」に対する意見

1、はじめに
【ワイズ・メディア意見】
第1次取りまとめ及びタスクフォース取りまとめを受けて継続検討を行った項目について、本来国民視聴者代表、メディアとしての出版社やインターネット事業者等、幅広く意見を聞くべきところ、5回の会合においては、結局関係者であるNHK、民放連、新聞協会以外にはJ-WAVEにヒアリングを行ったのみで第2次取りまとめ(案)としたことは、検討会の本来の趣旨から見てプロセスの妥当性を欠いていると考えます。 なお第1次取りまとめ(案)に対して当社が提出した同様の意見に対して検討会は「民間放送事業者、新聞社・通信社は、「関係者」の例として示したものです」との考え方を表明されております。
【WGの考え方】
今後の放送行政に対する御意見として承ります。 今後総務省において検討を進めていく上では、本案の意見募集に寄せられた意見を含む関係者の意見を十分に考慮すべきと考えています。
【塚本感想】
これと並行して行われている「日本放送協会のインターネット活用業務の競争評価に関する準備会合」は構成員が落合弁護士と名大の林教授、それに消費者代表?の長田さんだけで、あとはNHK、新聞協会、民放連(専務理事と各局メディア担当)の内輪会合。他の関係者はどこ行ったのでしょうか?

2、地上波テレビ放送以外の放送のインターネット活用業務の在り方
(1)地上波テレビ放送以外の放送のインターネット活用業務の在り方に係る基本認識
【ワイズ・メディア意見】
地上波以外も含めた放送番組のインターネット活用業務を必須業務化することに賛成します。 但し、その定義は放送番組をインターネットを通じて同時もしくは追っかけ、見逃しで提供する業務に限定すべきです。インターネットの技術は日進月歩であり、NHKがインターネットで共有すべき基本的情報の範囲は1年後にどうなっているか想像もつかないので、技術の進展に柔軟に対応できるよう任意業務に留めておくべきです。
【WGの考え方】
NHKの設置趣旨に鑑み、国民の知る権利への奉仕という公的な側面を勘案すれば、民間放送事業者や新聞社・通信社等のほか、NHKを含めた様々な主体から、視聴者が多元的に情報を受け取ることができる環境を整えることが望ましいと考えています。 この点を踏まえれば、NHKが必須業務として提供する情報は、放送番組の同時・見逃し配信のほか、放送と同一の情報内容を基本とした上で、インターネットの特性に合わせたテキスト情報等も提供することが適当と考えています。 なお、必須業務として配信するテキスト情報等の具体的な範囲や提供条件については、競争評価のプロセスを経て定める制度にすべきと考えています。
塚本感想
結局現段階の技術水準でしか答えようがないのですよね。例えばARで、映像でもテキストでもない情報が伝えられるとしたら、それは必須業務なのか?その時はまた競争評価のプロセスをいちいち経るべきなのか、それをNHKと民放連と新聞協会と一部の構成員が判断できるのか。その辺を柔軟に判断できる仕組みがないと、NHKはR&Dすらできなくなってしまいます。

2、(2)放送の種別ごとの考え方
・必須業務として配慮すべき情報の範囲及び放送の二元体制を含むメディアの多元性を維持する為の担保措置
【ワイズ・メディア意見】
地方向けラジオの配信、衛星の配信についてはNHKではなく総務省自らがロードマップを策定すべきです。 その際、民放地方放送局や衛星放送局等の意見も聞きながら、どういう制度設計なら日本の放送産業全体がインターネットを活用した放送番組の配信に取り組めるかを考えることが行政の責務だと考えます。 
【WGの考え方】
今後の放送行政に対する御意見として承ります。

・地上波ラジオ放送
必須業務として配信すべき情報の範囲及び放送の二元体制を含むメディアを維持するための担保措置
【ワイズ・メディア意見】
テキスト情報を放送番組と同一の内容を基本とし、緊急度の高い重要な情報や放送番組の補完に限定することに反対します。NHKには、例えばラジオ第2で培った学校教育や語学教育、障害者対応のコンテンツ、クラシック音楽など民間放送では提供のハードルが高いIPや制作ノウハウを所有しており、これらは放送されていないコンテンツだとしても、国民に積極的に提供すべきものであり、それこそが受信料制度に叶うNHKのサービスだと思います。
【WGの考え方】
必須業務として配信するテキスト情報等の具体的な範囲や提供条件については、競争評価のプロセスを経て定める制度にすべきと考えています。 この競争評価の仕組みは、まず、NHKが原案を策定し、その評価・検証をNHK以外の第三者機関が適時に、国民・視聴者、民間放送事業者、新聞社・通信社等の関係者の参加を得て実施し、エビデンスベースで、インターネット活用業務の具体的な範囲や提供条件を決定する仕組みとすべきであると考えています。
【塚本感想】
責任放棄に等しい。取りまとめでは制約課しておきながら、内容はNHKに原案作らせて、民放連と新聞協会だけが意見して、国民、視聴者と称する一部の人の意見を申し訳程度につければいいだろうということでしょうか。

・地上波ラジオ放送
財源と受信料制度
【ワイズ・メディア意見】
公平負担の観点からラジオ放送の配信に対して費用負担を求めないことには賛成します。但し、この際「協会の放送を受信することのできる受信設備」とは何かを根本的に議論すべきだと考えます。「放送」を「放送電波」と捉えるか、「放送番組」と捉えるかは、放送法や著作権法において民間放送も含めて大きな影響を及ぼすものであり、日本の文化安全保障の観点からも避けて通れない重大な課題であると認識しております。
【WGの考え方】
本案に対する御賛同の意見として承ります。 また、今後総務省において検討していく上での参考として承ります。

・国際放送
必須業務として配信すべき情報の範囲及び放送の二元体制を含むメディアの多元性を維持するための担保措置
【ワイズ・メディア意見】
「放送の二元体制を含むメディアの多様性を維持するための担保措置」を、地上波テレビ放送と同様とすることに反対します。 国際放送においては海外の放送や配信事業者との競争環境にあり、そもそも二元体制にはなく、多元性の確保は自らコントロールできる環境ではありません。「国際放送は民間放送事業者との競合領域ではなく協調領域」というならば、情報の範囲はメディアの多元性維持ではなく、日本メディアの情報発信力の向上を目的として決定されるべきです。
【WGの考え方】
国際放送は、我が国の情報の国際発信においてフラッグシップの役割を担い、我が国に対する正しい認識・理解・関心の醸成、国際交流・親善の増進、経済交流の発展、在外邦人への情報提供といった重要な役割を担っており、国際放送の視聴者へのリーチを高めるため、放送番組と同一のもの(映像及び音声)及び放送番組以外のコンテンツ(テキスト情報等)を必須業務化することが適当であると考えています。 その上で、必須業務として配信するテキスト情報等の具体的な範囲や提供条件については、競争評価のプロセスを経て定める制度にすべきと考えています。 この競争評価の仕組みは、まず、NHKが原案を策定し、その評価・検証をNHK以外の第三者機関が適時に、国民・視聴者、民間放送事業者、新聞社・通信社等の関係者の参加を得て実施し、エビデンスベースで、インターネット活用業務の具体的な範囲や提供条件を決定する仕組みとすべきであると考えています。 なお、その際、国際放送は、民間放送事業者等との競合領域ではなく、協調領域であることについて考慮する必要があると考えています。
【塚本感想】
なんで国際放送の配信まで競争評価の対象なんでしょう?どことの競争?他の回答のコピペでは?ネットにはネット向きのコンテンツがあるんだから、国際発信力向上のためにも縛りを解いた方がいいのではないでしょうか。

・国際放送の財源と受信料制度
【ワイズ・メディア意見】
諸外国の日本への理解増進等の観点から国際放送の配信に費用負担を求めないことに異議はありません。一方で国内の受信料によって運営されていることは公平負担の観点からみると問題があり、NHKのインターネット活用業務に括るのではなく、「4.国際放送の在り方」の中で包括的に検討すべきです。
【WGの考え方】
本案に対する御賛同の意見として承ります。 また、今後の放送行政に対する御意見として承ります。

2、(3)地方向け放送番組に係る地域メディアとの公正競争の確保
【ワイズ・メディア意見】
競争評価の仕組みにおいて、地域におけるメディアとの公正競争のみに言及していますが、地域における適切な情報の確保という観点も考慮すべきです。国内には人口減少や産業の衰退でそもそも地域メディアの経営維持が困難になっているケースが出てきており、それに応じてNHKの情報提供もシュリンクさせていくようであれば、地域の住民にとって必要最低限の情報すら得にくくなるという状況が起きないとも限りません。地域に適正な情報を提供する担保措置を競争評価の仕組みに盛り込むべきです。
【WGの考え方】
第2次取りまとめ案において言及している「地域メディアとの公正競争の確保」とは、地域におけるメディアの多元性の確保の重要性等を踏まえたものであり、御指摘の地域における適切な情報の確保という観点も包含されているものと考えています。
【塚本感想】
アメリカは日本と面積が違うので、単純な比較はできませんが、全米の半分の1558郡で地元ニュースを伝える報道機関が1つ以下。内208郡ではゼロ。2023年には130の新聞が無くなったそうです。そんな状況になっても新聞は公正競争を求めるのでしょうか。まずは地域住民のことを考えてください。
https://www.niemanlab.org/2024/02/wealther-urban-americans-have-access-to-more-local-news/?fbclid=IwAR1h9w7S91vwNyuywL8v2hGkWjDhsz8lrbJKrgnbIFBX145wSoErA8Bew8c


2、(4)インターネット活用業務に係る民間放送事業者等への知見の共有
【ワイズ・メディア意見】
賛成します。NHKから民間放送事業者だけでなく、民間放送事業者からNHKという双方向の知見の共有が、我が国の放送産業全体のD X化に大変重要だと考えます。
かつて在京キー局のインターネット担当者会議という非公式の情報交換会がありましたが、公式の会議体としてA-PABとは別にできないか、放送業界全体で検討することを願います。
【WGの考え方】
本案に対する御賛同の意見として承ります。
(ここだけ他のご意見と一緒くたでした)

全体を通した感想

なんと言いますか、今にも沈没しようとしている新聞が、船に穴が空いたのはNHKのせいだから、NHKの船にも穴を開けろといちゃもんつけ、NHKも総務省も新聞があんまりうるさいものだから、ある程度妥協して同時配信の必須業務化だけはなんとか確保しようという意図がありありです。確かに民放ではないので、やりたい放題ではまずいでしょうが、取材力や制作力、IPなどNHKの持つ有形無形の”資産”を視聴者(受信料支払者)にフルでお返しするのはNHKのお役目でもあるので、発表の場と形式は広いに越したことはありません。会社に例えれば、ステイクホルダーとしての株主は受信料支払者であり、同じプラットフォームにいる民放はまだしも、新聞がこんな公の場でメンバーとして毎回発言するのは政策決定のプロセスとして余りに歪んでいます。圧力かけたいんだったら受信料の半分を新聞協会で負担しろと言いたい気分です。

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