回顧録 #2

この前授業をさせていただいた都内の定時制高校の学年主任の先生にこんなことを言われた。

「君は自信がなさそうに見えるね」
「大勢の前で話すことそんなに得意じゃないでしょ?」

この言葉を聞いたとき、自分でも感じていたことを初対面の先生に言われたことでとても動揺したのを覚えている。
そしてその先生はその言葉の後に言った。

「この学校に通う生徒の多くは自分に自信がない子だったり自分を表現することが苦手な子が多い。そんな中で同じように自分に自信が持てなくて大勢の前で話すことが苦手だと伝わってくる人がそれでも頑張って前で話している姿を生徒たちはちゃんと見ているし、だからこそもっと楽しそうに話してほしい。今の状態はたくさん準備や練習をしてきたのは伝わるけど、それ以上に失敗してはいけないという気持ちにとらわれすぎて堅くなってしまっている。自己紹介の部分で自分のおすすめしたい漫画を話していたときもそうだったが、どこか聞き手に遠慮している感がある。「知らない人もいるから」「知らない状態で聞いていても楽しくないから」そんなことは考えずに、自分はこれが好きなんだって楽しそうに話してほしい。自分たちと年も近く苦手なことに挑戦しているからこそ楽しそうに話している姿は、生徒にとっても「自分も好きなものは好きって言っていいんだ」って思わせてくれる。」

この言葉で自分が人からどんな風にみられているかを知った。
そしてこの言葉をただ頷きながら聞いていた僕に先生は続けてこう言った。

「授業をしている姿からも感じるようにあんまり人前で話すことが得意じゃない中で、今回のように自分の苦手なことに挑戦する姿勢はすごいと思う。だけど、今一歩踏み出せていない感がある。その一歩を踏み出せるか出せないかでこれからの人生に大きく影響を与えてくると思うよ。」

僕はこの先生の言葉を忘れることはないと思う。それほどまでに僕の中では貴重で、これまでにない経験だった。
本当に泣きそうだった。
恥ずかしい限りではあるが、講師として行ったあの学校において、
あの日、あの瞬間だけは誰よりも生徒であった気がした。


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