初恋 第13話
その夜、甘美な夢を見た。僕はラメラに理科の問題を教えていた。僕が化学反応式をすらすら書いたら、彼女は僕を尊敬の眼差しで見た。そうか! 尊敬や憧れから一緒にいたい気持ちが生まれるのかもしれない。
運動神経が優れていたり、物腰や仕草がカッコ良かったり、いつも明るい雰囲気でみんなを楽しませるといった、穏やかな継続的な関係こそ人を結びつける重要な要素だと思った。
僕は、恋という言葉は知っていたが、まだ実物に触れていなかった。気の合う奴が友達という観点からしか人間を見ていなかった。なぜだか分からないが、夢の中では僕の手に毛が生えていた。ちょうど猫の足みたいだった。ラメラはその手を掴もうとしたが、彼女の手も猫の足みたいだったから二人は大声で笑った。
コンコン。おや、誰かがノックしている。夢の中で。コンコン。僕は目を開けた。コンコン。夢じゃなかった。僕のベッドは客室の入口に近かった。父と母は奥の部屋で寝ていた。僕が彼らを呼びに行こうとしたら、ドアの外から、
「ジェッド、起きてる?」
と囁くような女の人の声が聞こえた。僕は目をこすりながら、
「ああ、誰? メアリー? ちょっと待って」
僕は父を呼びに行こうとした。
「あなたに用があるの。プレゼントがあるのよ」
「本当?」
寝ぼけていた僕は、それが罠だと気づけなかった。僕は入口のドアを開けた。廊下にはがらんとして誰もいなかった。等間隔に並んだ天井のダウンライトが突き当たりまで廊下を照らしていた。突然目の前が真っ暗になった。麻袋のようなものをすっぽり被せられた僕は視界を失った。声を上げたが袋の生地はとても分厚くて声がこもってしまった。その上、お腹を思い切りパンチされて息ができなくなった。
恐怖が僕を覆い、何とか抜け出そうともがいたが、手も足も動きが空回りした、腹にもう一度衝撃を受けたのは、コーヒー豆の袋を運ぶように肩に乗せられたのだろう。相手は一人じゃないようだった。だが、誰も喋らないので、何も分からなかった。僕を捕らえた人間はそのまま歩き出す。
自分の置かれた状況をようやく理解した僕は、あらゆる可能性を想定し、気が狂いそうになった。新聞に時々載る事件——誘拐、人身売買、臓器売買——が今や、現実に僕の身に降りかかろうとしている。
「助けて! お父さん! お母さん!」
僕はあらん限りの声で叫んだ。金切り声で。それは自分でも信じられないくらい高音になった。突然、扉がバタンと開く音がして、父が叫ぶのを聞いた。
「お前ら、何をしている?」
床に投げ出された僕は思い切り尾骶骨を打ち、一瞬、息ができなくなった。その後、唸り声と、何かが折れるような鈍い音と、壁と床に何かを激しく叩きつけたような大きな音が何度か続き、悲鳴が混じり、最後は走り去る足音が聞こえた。僕は床の上で体を芋虫みたいに丸め、ぶるぶる震えていた。
「もう大丈夫だ」
開いた袋の口から覗いた父がそう言った時、僕の目に涙が溢れた。
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