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報われざる天秤

 先日、職場の個別面談があった。

 私の職場は上期(6-11月)と下期(12-5月)でそれぞれ面談があるのだけど、ここ最近、当期の評価面談と次期の目標設定面談が恐ろしいほどに遅延する。参考までに、先日行われたのは2019年度下期の評価面談・2020年度上期の目標面談だ。

 もう何も言うまい。

 そもそもが、私の職場は例のアレの影響をモロに受ける業種なので、夏のボーナスは一律5万円の同額支給だった。だから正直評価もへったくれもないし、このままいけば冬もどうせそれと同じか、最悪ビタ一文出ないので、面談なんてしてもしなくてもどうでもいいと思っていたのだけど、まあとりあえずやるから……と別室に呼ばれ、職場のボスとの面談と相成ったのである。


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 席に着くなり、こんなことを言われた。

 他の人とも面談をやった中でいろいろと話を聞いたけど、西野さんはあれだね。
 中立の立場でうまくやっているみたいだね。

 あらまあそうですか……なんて言いながら、私は頭をぽりぽりとやったりした。
 まあそうやって生きてきたし、これからもそうなんだろうからねえ……と。


 もちろんシチュエーションによっては、どちらかの天秤にすごい重い分銅をドカンと置いて、ヤーッ!と傾かせる必要はあるのだろう。
 だけど、とりわけ職場の人間関係に関しては、うまくバランスをとりながら過ごすに越したことはないと思っている。

 私もいろいろあって、いくつかの職場を転々としてきたけど、今のところ「ここ、人が合わなくてダメだわ続けられない」となった職場は一つしかない(上司に嵌められてミスを自分一人の責任にされたり、雇用区分に見合わない仕事と責任を負わされてイヤになった職場とかはあるんだけど)。

 今の職場は別に悪くはないと思っているが、そこはやはり、他人同士が一緒に働く場所だ。なんとなくこの人とこの人とはソリが合わない、この人とこの人は裏で繋がってて……とか、いろいろな人間模様が見えてくる。

 そしてなぜか、その情報が私のもとへ次々と集まってくるのである。


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 私は、自分がされたらイヤなので「誰にも言わないでくれ」と前置きされた話は絶対に他言しない。
 そもそも大抵の場合、私がそれを誰かに漏らしたところで、私に害はあれど益はないことばかりなので、内心で(ふうん。この人はあの人のこと好きじゃないんだ)とか(やっぱあの二人って付き合ってんだな)とか、一人でくつくつと含み笑いを浮かべながら楽しむわけで。

 そんなことをやっているもんだから、割と「西野さんだから言うんですけど……」みたいな話をよく持ってこられる。そして気が付いたら、私の頭の中で、人と人との間にありとあらゆる方向へ矢印が引かれまくっていて、昼ドラ顔負けの人物相関図ができあがっているのだ。

 これだから人間って面白……なんて、どこぞの漫画に登場する死神みたいなことを考えこそすれ、同時に(たぶん、自分も誰かの頭の中の相関図で線を引かれまくってんだろうなー)とも思ったりする。

 昔だったら、きっとものすごくそういうことを気にして生きていただろう。

 あ、今は?
 自分の耳に入ってこない限りは、裏で誰に何を言われていようと気にしないようになったので、正直あんまり考えていない。
 自分が思っているほど、他人は自分のことを気に留めてなどいないし。
 なにより、他に考えるべきこと、考えたいことはたくさんあるから。

 そんなふうに思えなきゃ、インターネット上に自分の頭の中で考えた創作の文章を垂れ流したりなんてできないよね。

 多少は成長したな。


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 ……なんてことを考えながら、どれだけマネーに結び付くのかわからない面談を終えたのであった。
 私は、モノに例えるなら職場の潤滑油になっている自信はあるので、せめて冬のボーナスは出してください。よろしくお願いします。

お読みいただきありがとうございます。いただいたサポートは、創作活動やnoteでの活動のために使わせていただきます。ちょっと残ったらコンビニでうまい棒とかココアシガレットとか買っちゃうかもしれないですけど……へへ………