“やりたいこと”と“やるべきこと”。どちらを取ればいいか、という相談
「興味があって、やってみたいなって思うことがあって。だけど、今関わっているプロジェクトもあって、それもやるべきことがあって。こういうとき、どうしたらいいですか?」
先日のイベントで学生からいただいた質問。大学生の頃から、同様の質問や相談をときどき受ける。この質問を受けたときは、ずっと変わらず同じ返答をしている。
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「なぜ、どのレベルでやってみたいのか、どこに心惹かれるのかを、まずは自分に問うてみてください。たくさん深めて、その解像度を上げてください」
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まず、その“やってみたいこと”は、どのぐらいやってみたいのかを考えること。
ただの興味程度でちょっと関心があるだとか、単発のイベント当日に参加するだけでもいいだとか、その程度なのか。プライベートの大半の時間を費やしてでも関わってみたいのか。これだけでもかなり違う。
ちょっと関心があるだけなら、現在の活動を少しマネジメントして空き時間を作り、顔をのぞかせれば十分なはずだ。自身でもそれで納得でき、それ以上葛藤する必要もない。
もし、しっかり腰を据えて関わりたい、今の活動を置いてでも、そちらに行きたいと心惹かれるなら、次のステップだ。
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「“やらないといけない”今携わっていることを、きっぱり辞めましょう」
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もちろん、活動量を調整して両立することもできる。けれど、“やりたい”の解像度をしっかり上げた後でも迷うということは、100%飛び込みたいほどの“やりたい”なのだと思う。
とは言え、辞めるという選択は簡単にできるものではない。たくさんの不安が駆け巡る。
私が辞めたら、残ってるタスクはどうするの? 今でも大変なのに、もっと大変にならない? みんなに迷惑をかけることになってしまわない?
私自身、どちらかというとそういった思考をしがちな人間だ。そう思うのが、普通だとも思う。
けれど、残る側にもなってきた人間として、こうも伝えたい。あなたが仲間やチームを想っているのと同じぐらいに、仲間はあなたのことを思ってくれているよ、と。
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「『本当はやってみたい事があるんだけど、でも、今は抜けられないから……こちらが大変だから、仕方ない』と手伝ってもらっていても、言い方はきついですが“迷惑”です。
気を遣われたら、相手も気を遣ってしまう。仲間の“やりたいこと”の重しに自分がなっているのかと思うと、申し訳なくて情けない。そうなると、話すべきことも腹を割って話すことができなくなってしまします」
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これだけ言うと、すごくきつい。きっと、相談してくれた人の中には「そうは言っても」「でも」の言葉がいっぱい出てくる。私もそういう人だったから、その気持ちもよく想像できる。
けれど。けれど、目をつむって一歩下がり、自分の胸の内をそっとのぞいてほしい。その「そうは言っても」や「でも」は、誰のために向けられたものなのか。
活動から抜けることで、仲間との関係性が希薄になることを恐れてはいないだろうか。自分の居場所がなくなることを恐れていないだろうか。
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「だってね、本当に“やりたいこと”のために飛び立っていくことで、途切れるような関係の仲間じゃ、ないでしょう? 一緒に活動して積み重ねてきた時間は、そんな薄っぺらなものじゃないでしょう?
だからこそ、そんな安い関係じゃないからこそ、あなたも悩むのだと思う。
でもきっと、そうやって悩める仲間には、しっかり向き合って真摯に伝えるあなたの“やりたい”は必ず届く。そして、利害も何も手放しで、全力で応援してくれる味方になる。
だから、本当に“やりたい”と思えることなら、心置きなく旅立って思いっきり暴れておいで」
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実際にこれまでにも、私から何人かに伝えてきた。
私自身が仲間に「今は自分のことに集中しろ。こっちは大丈夫だから」と言ってもらえたこともある。
彼らは、もし私が一歩踏み出す選択をするのであれば、空いた穴分もきっちり埋めるのみでなく、私のバックアップを全力でしてくれる気概だった。もし私が帰る選択をしたら、そのときもいつでも迎え入れられるように、居場所を守ってくれた。
そんな彼らだから、活動が終わった今でも定期的に集まっている。そんな彼らだから、何かあったら相談したいし頼りたいと思う。
向き合う。簡単なことではない。相手だけでなく、自分のことも同様に大切にしてあげないとできないから。けれど、どちらかの声を殺した時点で、それはもう同じ視座にいる仲間ではない。
大丈夫、あなたは強い。大丈夫、信ずればあなたの仲間もとっても強い。
大丈夫、あなたが想いを込めて結ってきたその時間と関係性は、本気で向き合っている限りそうそう簡単には壊れない。
だから、もっと素直になってわがままになって、きっと大丈夫。
そう、質問をくれた学生や会場の人だけでなく、今の職場に迷う同士や私自身に、届けたい。
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