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土曜のブランチ

 朝、目が覚めて驚いた。
 時計が10時を指していたのだ。翼は思わずスマートフォンの画面をつけて、時計が間違ったいないかを確認した。しかしスマートフォンの時間表示も、やはり10時。なんと10時間も眠り続けていたことになる。

 ここのところ慣れない新規案件にバタバタとしていた。昨夜はまだまだ手をつけたい作業があったにもかかわらず、眠気に負けて12時に強制シャットダウンするかの如く就寝。そのまま10時間ぶっ通しで眠っていたのだ。
 こんなにも身体に睡眠が足りていなかったのか……と反省しつつ、彼女は今日が土曜日であることにうれしくなった。

 もうちょっと、寝てもいい。

 しかし、おなかはすいてきた。胃が動いているのを感じる。
 そこで翼は、朝食を——といってもこの時間だからブランチだが——いつもよりちょっと豪華にすることにした。厚切りのトーストに、ちょっといいバターとシナモンシュガー。ベーコンエッグでタンパク質も摂って、眠気覚ましにコーヒーも淹れよう。

 電気ポットにお水を入れて、電源をオン。お湯が沸けるまでの間に、ベーコンをフライパンに並べ、そこに卵を割り入れて焼く。それからトースターに食パンを入れて、パンが焼けるのを待つ。
 トーストとベーコンエッグが仕上がったタイミングで、ちょうどお湯が沸いた。今日のコーヒーは少し軽めに淹れようか。香りと色を見ながら、お湯の筋の速度と太さを少しずつ調整する。ドリッパーから雫が落ちる音とともに、ふんわりと温かく柔らかなコーヒーの香りが漂ってきた。このコーヒーがコポコポと滴る音が、翼は心地よくて好きだ。

 すべてが準備できた。食卓に並べると、いつもよりちょっと豪華なブランチだ。
 翼はスマートフォンをベッドの下に隠して、ゆっくり食べることにした。
 だって今日は、土曜日だから。

 午後からは昨年通っていたライティング講座の交流会がある。3カ月ぶりに顔を合わせる仲間たち。「みんな、元気かな?」と考えて思わず微笑みながら、彼女は少し酸味のある軽やかなコーヒーを一口飲んだ。


5/14(土)に開かれた「batons writing college(バトンズの学校)」の懇親会。昨年7月から今年の1月末まで走り抜いた32名の仲間と3カ月ぶりに会いました。

古賀史健さんが懇親会に合わせて「せっかくなら」と用意くださった補講。このnoteはその補講時に書いたものを一部調整・加筆した、当日の朝食の様子です。

エッセイをベースに、主語を「私」から変えてちょっと神の目のような視点で自分の行動を書いているのですが、なんだか自分とは別の世界のお話を読んでいるみたい。文章って、まだまだいっぱい、遊べるなあ。

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